Track 3

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 おかえりー、人間。  んー。今日はなんだか、すっきりしなさそうな顔してるなー。  どうかしたのかー?  ま、何はともあれ。  余のとこにおいでー。  うん、いいぞー♪  ぎゅーーーーーー。  で、どーしたんだー?  ふふ。なんだー? 言うのが恥ずかしいのかー?  別に、どんなことでも余は笑ったりしないから。話してみー?  ふんふん。へー。ふんふん。  そーなのかー。  そーいうもんなんだなー。  ふんふん。ふんふん。  つまり、頑張ったのに褒めてもらえなかった、ってことかー?  あぁ……。なるほどなぁ。そーいうの、あるよなー。うん。辛いよなー。  んー? 言ったろー? 笑ったりしないって。  余も昔なー。褒めるべきときに褒めなかったせいで、部下たちの士気が下がりまくったことがあってなー。  名誉は褒美と同じくらい重要、っていうのは、よく分かってるつもりだぞー。  めちゃくちゃ頑張ったら、そりゃ、誰だって褒められたいよなー? 頑張りを、認めて欲しいよなー?  よーし、分かった。今日は、余、人間のこと、いっぱい褒めてやるからなー!  余は、人間がいっぱい頑張ってること知ってるから、「頑張れ」なんて言わないけどさー。  もう頑張ったことに対して褒める分には、何も問題ないからなー♪  ほら、余の胸においで♪ いっぱい褒めてやるぞー♪  ぎゅーーー♪  よーく頑張ったなー。人間は、本当によく頑張った。  他の奴に認められなくても、余は、ちゃんと分かってるからなー。  人間は、すごいことをしたんだぞー。とっても大切で、やらなきゃいけないことをした。  それは、本当にすごいことなんだ。  だから……余が、他の人間どもに替わって、お礼を言うよー。  ありがとなー。  一生懸命やってくれて、ありがとう。  本当に、ありがとう♪  だから……今日は、ゆっくり休んでくれなー?  そーだ。なんなら、明日、このまま休んじゃうかー? ふふ。  余がお金を人間にあげる、っていうのは、少し違うけどさー。“休暇”、ってゆーのも、十分褒美に入るだろー?  余が代わりに、会社の人間どもに連絡をとってやろー。あの薄い板……スマホ、っていうんだったかー?  アレ越しでも、余の力、結構届くからさー。周りの人間どもの精神をすこーしいじって、何の気兼ねもなく休めるようにしてやろー♪  頑張った人間には、その頑張りに報いるべきだからなー。  ふふ。言っとくけど、これは、余の命令だぞー? 余の命令破ると、ひどいことされちゃうからなー?  だから、人間は明日、ゆっくり休まなきゃいけないんだ。いいなー?  ……うん♪ 素直でいい子だぞー♪ よしよし♪  人間は、ほんとにすごいんだぞー。  余、人間と一緒に過ごすようになって、結構びっくりしてる。  毎日朝早くに起きてさー。電車とかいう、ぎゅうぎゅう詰めの乗り物に乗って、会社に行くんだよなー?  それ、人間の世界では当たり前のことになってるんだろうけど……そんなことないからなー?  余的には、ありえないことなんだぞー、それって。  他人との距離を強制的に詰めさせられる、なんて、かなりキツいよなー、実際。  ……あ、もちろん、余と人間は違うぞー♪ 余は人間のこと、誰よりも信頼してるからなー♪  でも、人間は、余以外のやつと、それを毎日やってるだよなー。うーん。余だったら耐えられないなー。  ホントにすごいなー♪  あとは、朝から晩まで、ずーっと働き続ける、っていうのも、偉いよなー。  余、魔界の住人だったけど、かなり適当だったからなー。そりゃまあ、戦いが激しくなったときは、寝ずに一か月戦った……なんてことは、過去に魔界でもあったみたいだがー。  余の代になってからは、あんまりそーいうのもなくて、平和なときが多かったからなー。  お昼ぐらいには一日の仕事終わることもあったなー。  なー? 分かっただろー?  人間、ホントにすごいんだぞー。  すごくて、偉くて、カッコいいんだぞー♪  人間は、毎日毎日、ほんとに頑張ってるんだ。  誰にも言ってもらえないかもしれないけどな。この世界の中で、毎日生きてるってだけで、もう頑張ってるんだ。  自分で自分を褒められなくても、余は、人間が生きてるだけで、褒めてやる♪  ……うん。やっぱり、こう言うべきなんだろうな。  今まで頑張ってくれて、ありがとう、って。  生きててくれて、ありがとう♪  余は……それだけで、とっても嬉しいぞー♪  ……んー? ふふ。どーした?  泣きたくなったかー?  んーん。笑ったりしないよー。  涙って、人間の感情表現の一つなんだろー? なんで、それを笑ったりするんだ? ふふっ♪  余の胸の中で、好きなだけ泣けー♪  ずーっと、ぎゅーってしててやるからなー。  よーく、頑張った。  えらい、偉いぞー。  ありがとなー、人間♪  ありがとう。  ふふ♪