味覚機能実装
リリフローラ:
これ、食べていいんですか?
エリス:
ああ、味覚機能を実装したからな。
これからはリリフローラも私達と同じように食事をとっていいぞ。
リリフローラ:
やったぁ!
エリス:
しかし、生まれて初めてとる食事がドクター・エリスの手料理とはな。リリフローラも果報者だな、ええ?
リリフローラ:
わぁーっ、すっごく不味そう!
エリス:
くっ……確かに見た目はよろしくないが、こういった状況では、率直な感想よりも、思い遣りというものをだな……。
リリフローラ:
いただきますっ。
あむっ、はむ、はむ。
はぁ~ん……めちゃめちゃ美味しいです、これ。
この旨味……そしてこの旨味……はぁ~ん。
これはどういった料理なんですか? あたしの中にあるデータを照合しても、一致する成分が見当たりません。
エリス:
門外不出だ。
あ~、スープを飛ばすな。
お前らはどうして揃いも揃って食い方が汚いんだ。
リリフローラ:
はぁ~ん、美味しかった……もっと食べたいです。おかわりくださいおかわりっ。
これ貰っていいですか貰いますねありがとう。
エリス:
ああっ、待てそれは私の皿だ。
リリフローラ:
あががががががが……。
エリス:
あ~、しまった……。
完全に動作を停止しているな。
おい、それを食べ終わったら、リリフローラをメンテナンスルームまで運ぶのを手伝ってくれ。
大丈夫だ、原因は分かっているからな、修理に大した手間は……ん、原因を知りたいのか?
あー……あのな、私達が食べているものとリリフローラが食べていたものは、全くの別物なんだ。
リリフローラの皿に入っていたものは、セクサロイドの燃料だ。
それを口から取り入れると旨味を感じるようにプログラムしてある。
味覚機能とは名ばかりのまやかしだよ。
セクサロイドには本来、食事をとる機能など備わっていないからな。
だから燃料以外の異物を体内に取り込んでしまうと、先程のように動作不良を引き起こす。
その辺は特にデリケートだからな、動作不良を引き起こすには、このスプーン一杯分もあれば充分だ。
……あー、その……今言った事はリリフローラには伝えないでくれ。
リリフローラの感情は、こういった微妙な問題を感じ取れるほどに発達してきているからな。
……いや、先程の様子からするとまだまだ未発達か? フッ……。
まぁ、リリフローラにはいずれ話すことになるだろうが、今は純粋に食事を楽しませてやれ。
さ、話は終わりだ。食うぞ。