タイトルコールとこの音源の楽しみ方
;ナレーション(タイトルコール)
///;環境音 冬山深くの森の中
:5/後近(囁き、脅し)
;SE 火縄銃の火縄が燃える音
「動くでね」
「あんちゃ、誰(だ)?
こん山さ登ってきだのは、どっただ用でだ?」
「(呼吸音)」
「ああ……ものべののカミさの使いのもんか。
脅かして悪がっだな。
冬にわざわざヒノキノ山さ登っでくるよーなもんは、悪さするヤカラが多いでな」
;5/後近→3/右近
「へば、鉄砲(てっぽこ)の火縄、消さねばな。
<火縄の火を、先端ごと引きちぎる>
――ん? なしてたまげた顔しとるの?」
「あははっ、心配ありがどな。
んだども、火縄さ指先で引きちぎるくらい、なんでもないもの」
「ほ? 『指先で引きちぎったのにびっくりした』って。
こっただこど、鬼だったらできねーほうがおかしいべ」
「ありゃま。またたまげた顔して。
あ――ひょっとしてあんちゃ、
オラ……サキが山鬼(さんき)――山の鬼だってこどもしらされんで、オニの棲む山に登らされたな?」
「(呼吸音)――はぁ~、ものべののカミさんもずいぶんとイタズラなこどするもんだなぁ。
ゆーか、カミさんは、なんの用があってあんちゃのこどよこしただ?
こどづけさあるなら、サキ、聞いたげるべさ」
「ん? ああ。『タイトルコール』いうやつな。
確か、前に送られてきた手紙に――
ええと――<ガサゴソ>
ああ、こいだこいだ。
へば、読む――あああっと。
あんちゃの正面の、さっと離れたトコに立って読むよーにって」
;9/前遠
「へば――」
;流暢なNA口調で
「『あやかし郷愁譚(きょうしゅうたん) 山鬼・三吉鬼(さんき・さんきちおに) サキ』」
「『この音源は、あなたをリラックスさせ、ここちよい眠りに導くことを目的とした、安眠バイノーラルボイスコンテンツです』」
「『コンテンツをよりゆったりとお楽しみいただくため、
ヘッドホン、もしくはイヤホンのご利用をおすすめいたします』」
「「『あたたかで、居心地がよく、いつ寝入っても大丈夫な場所で――どうぞ、サキとの山での時間を、お楽しみいただけますと幸いです』」
;もとの口調
「んっ。こっただとこか――
んぁ? あんちゃ、そっただポカンとして……
サキがタイトルコオルさしてる間に、
なんかいぐねーもんでも食ったべか?」
「んん?
『あんまり綺麗に、見事な標準語で読むもんだからびっくりした』――って。
あははっ、サキ、標準語もつがえねよーに見えただな」
「いやいや、失礼でもなんでもね。
無理もねーこどだで。
こげな山奥に棲む、山鬼だもんなぁ」
「んだども、サキはな? サンキチサマって呼ばれて、
人間の神様として祀られたこどもあったくれえだからよ。
読み書き算盤くれのこだ、じょさねぇだ」
「ん? あぁ――
『じょさねぇ』は、『造作(ぞうさ)ねぇ』――
簡単なこど、っていう意味だ」
「ん……今のでもナマリ抑えでたつもりだども、通じねぇだか。
へば、もーさっと、標準語に寄せでみっか」
「ん? あー、そのくらいは楽勝。
いっときとはいえ、人間の神様してたんだもの。
だで、バイノーラルやらゆーもんの楽しみ方も、
さっきの手紙読んだだけで――
んふふ~」
;3/右、接近囁き
「み・ぎ・み・み」
;7/左 接近囁き
「(はぁ~~っ)、んふふっ、ひだりみみ♪」
;5
「な? これで正解だべな?
あんちゃ、えへへっ、いまこそばゆそーな顔したもんな」
「ん? ……
『なんで神様をしてたのに、今はこんた山ん中で一人で』
……だか?
「(呼吸音)……そこは……物語の中――
Track1から始まる物語の中で――
もしもあんちゃが聞きたいんなら、ゆるり、話すだ」
「……そんときのこど。あんちゃが聞きに来てくれるこど。
サキ、のんびりと待ってるがら」
「へば、またな。
今度は道に迷わんよーに、気ぃつけて」
:環境音F.O.