Track 5

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布団の中で体幹を

;環境音・無音 ;3/右 「ん……(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――」 「……雪、降ってきただかな? 音が吸われて、とても静かだ―― なんだかさ……耳が、真っ白になっだみでだな」 「ん? 『おかげさまで』――って。 あははっ、んだか。 あんちゃ、サキの耳掃除、そっただ気に入ったくれただなぁ」 「え? …………あ……(呼吸音・照れ)―― ん――サキもだ。 あんちゃの耳掃除してたらな? 牛鬼のとおこがどおして、とろけるよーな顔こしてたか、 ちょべっと、わかりかけたよーな気がしたで、なぁ」 ;3/右 顔寄せ 「次会うとぎにも、耳かきして、な?」 ;3/右。 「そんあとは――あははっ。 ふたりでさ。旨め酒、しこたま飲もうなぁ――っと」 「……それまでにあんちゃにおっ死なれてもこまっちまうがら。 さっき教えそびれてた、体幹の簡単な鍛え方、覚えてほしいだ」 「えへへ――なら、一緒にしよな? あっ! 平気だ、そのままで。布団にいるままで。 寝たままで、動かず出来ちまう、鍛え方だで」 「まずな? 布団の中で腰を少しだけ持ち上げて、自分のヘソを、自分の鼻に向けてやるように――あんちゃ、できっか?」 「あ――ん。上手だ。 そっただできたら、次はなぁ? 持ち上げたのをゆっぐりぺっだ下ろしでみてなぁ?」 「ん――ええ感じだな。 へば、背中から腰がぜっんぶぴったし、敷布団にくっついとるで――」 「このまま腹こさへっこめて、、 背中と腰をしいてる布団に押し付ける―― 布団の綿のそん中に、自分の体を沈めるように―― 力んで、ぎゅーっって、してみてなぁ」 「ん……ふっ……ん…… 背中と、腰が、沈んでってる感じ、するだか? なら、な? そのまま――そのままで十、数えるだ」 「ひぃの、ふぅの、みぃの、よぉの、いぃつ、むうぅ、なーな、やぁあ、こぉこ、とお」 「んふふっ、ご苦労だったなぁ。 へば、すっかりと緩んでええで―― 力こぬいて――だらーーーん――うふふっ」 「……けっこうぐったりつかれるべ? 寝る前にやるクセつけとくと、 腹と腰回りを鍛えられっし、 その先の眠りは深くなるしで、ええこどだらけだ」 「ん? 『何セットやればいい』だか? ま――将来的には10セットやれれば上等だども…… 今夜のところは、あんちゃもクタクタだろかしさ むりせんで、あと1セットだけにしとこ、な?」 「ん、はば、あと1セット。 腰を浮かして鼻に向けて――戻して。 腹こさへっこめて力をいれて―― 腰と背中でぎゅーーーーっと布団をおして沈めて」 「ひぃの、ふぅの、みぃの、よぉの、いぃつ、むうぅ、なーな、やぁあ、こぉこ、とおっ」 「へば、ゆるむ~ だらーーーん。 ぐたーーーー。 ふふふっ、本当にがんばっただな。 おつかれさまだ」 「ってか……(あくび)……サキもさっとは疲れただかな。 ……何百年ぶりだもんなぁ……人間のこど――ふふふっ――助けてやってさ――あ、いや、こったは、はじめてだなぁ」 「お礼のお酒もねでそれなのに…… サキさ、あんちゃを助けたもんなぁ」 「『どうして』……って――どーしてだろな? 最初はサキな? あんちゃのこどやりすごして、関わらんどこうと思とっただけど……」 「んだどもあんちゃが足滑らして、アブねて思ったら―― 体さ、勝手に動いとったでなぁ――」 「ああ……もしかして。 オラ、『さき』のこど、思い出したんかもなぁ」 「ん? ああ、『さき』は人間の娘っこよ。 オラとおんなじ名前の―― ってかよ? オラに、サキに、自分とおんなじ名前をくれた、娘っ子」 「大昔によ――さきも、山道で足を滑らせてな? オラが助けて、お礼いわれて、名前聞かれて、 『ただの山鬼(さんき)だ』ってこただえたらよ―― へへっ――『さきとおんなじおなまえだなや』って、 まぁ喜んで、懐いて、懐いて……」 ;3/右 通常位置でささやき 「……人間のわらしこは、めんこいもんなぁ。 あんためんこいもんだもの…… どっただしたって、嫌いにも恨みにも、おもえんもんなぁ――」 「……(呼吸音)――茂伸のカミさんの導きかもなぁ。 誘われたとき、このまま消えちまうんならさ、 どこで消えても変わらねかって、思うたけどなぁ……」 ;徐々に眠い 「……ここ来てさぁ、あんちゃと会えで。 あんちゃのおかげで――サキ、人間のこど好きなんだって―― やっぱり、思い出せたもんなぁ……」 「ん……(ふあっ)――なんだか――とってもぬくいなぁ―― えへへっ――ええあんばいだなぁ―― ぬくくて――しずかで――おだやかで……」 「……んふふっ――あんちゃも大あくびだな。 へば、寝んべなぁ。 このまま静かに目をつむってさ――ん?」 「寝る前に、ひとつだけ?」 「ああ、かまわねだ。 なんだなんだ? ナイショバナシか?」 ;1 密着 「……ふん……ふん……ふん――ああ、そうだなぁ、 そりゃいなぁ」 ;3/右 近い 「へば、次のときには、星の天幕、草の布団で、一緒に寝よなぁ。 上等の酒――ふふっ――ちゃあんとお礼に、もってくっだぞ?――ふあっ――」 「ああ、もう眠くで眠ぐてたまらんなぁ―― 目、とじるだで――おやすみな。 ん……(呼吸音)――ん――(呼吸音)――あ」 「ごめんな? あんな? ひとつだけ―― へへ、もうひとつだけ、さっと、試してもかまわねが?」 「……ありがど、あんちゃ。 へばな? あんちゃはそのままで…… 目さ、つむったままでかまわねからな」 ;3/右接近ささやき /ちゅはリップ音 「…………つむっったままで――(呼吸音)―― 目、あけんでな?――ん……(ちゅっ!)」 ;3/右 通常、 「えへへへっ――あのさ、とおこさがさ。 旦那さんにしてんの見だこどあっで―― あんまりしあわせそうなもんだでな」 「サキもいつかは…… 旦那にしたいと思えるようなあんちゃがもしもできたら、さ。 そんときは、一度でいいからやってみでえって思ってたんだ」 「え? あ……『一度じゃなくてもかまわない』って…… ふわ……わ――へば、な? ――へば」 「に、二回目とか……三回目とかは……その…… 草の布団の上でのときに…………はっ」 「な、なんでもねぇだ。 寝言だ、寝言。 サキはもう、すっかりぐっすりねちまってるだ」 「……うふふっ―― ねちまってるけど――おやすみ、あんちゃ。 くさいろの夢、星空のゆめ。 あんちゃといっしょに、みれたらいいなぁ――ふあぁ~」 「ん……(呼吸音)――おやすみ、な? ん……(寝息)……」 「(寝息)×4」 「(寝息)×4」 「(寝息)×4」 「(寝息)×4」 ;四度目の寝息×4をF.O. ;おしまい

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