口寄せの儀
【詩乃】
ここです、どうぞお入りください
間借りなので殺風景ですが……
いつ出てゆくとも知れませんので、最低限に留めております
では、口寄せの儀を始めましょう
そこにお座りください……
あ、なにか彼女に関連するものをお持ちですか?
身に着けていたものなど……小物でもよいのですが
髪飾り、ですね……綺麗……ありがとうございます、これで十分です
こちらを元に、彼女の魂を呼び寄せます
少し独り言が多くなるかもしれません、ご了承ください
…………いた…………おいで…………だいじょうぶ…………
わたしの肉体を借りて…………彼に、お別れの挨拶を…………
…………そう…………ん…………ぁ…………はあッ……ああぁぁ……っ…………
―――え……ほんとに……はい、れた……?
あ……あぁ……ごめっ、ごめん……っ!
わたし、流行り病に打ち勝てなくて………
頑張って生きようと思ったんだけど、ムリだったの……
身体強いほうだと思ってたのに、ダメだった……
たくさん看病してくれたのに……ほんとごめんね
死ぬ寸前で朦朧としてるときも、ずっとあなたの顔がちらついて……
わたしがいなくなって絶対悲しい思いするよねとか、色々考えて……
無念で……無念だったの
もっとたくさん、あなたと一緒にいたかったから……
あぁっ、ほんとに……これは現実なんだよね?
信じられない……こうやってまたお話できるなんて……
あ、えっと……これって時間制限とかあるのかな?
急がないといけないかもしれない、よね……
あのね…………セックス、して…………
最後の思い出として、わたしを……抱いてほしい
身体は……違うけどね………抱かれたいの
あなたの温もりをね、もっていきたいから……お願い……