Track 1

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お姉さんに甘々看取られ

あらあら、これは助からないかな……。 うーん、これはもう、駄目みたいね……。 こんにちは、聞こえる? 私の声が、聞こえますか? そっか、聞こえてるみたいね。 私の声が聞こえてるってことは、残念だけど、君はもう助からないんだ。 突然のことで、びっくりしちゃったかな? うん、うん、そうだよね。 君にはまだまだ、たくさんやりたかったこと、あるかもしれないよね。 わかるよ。よーく、わかるよ。 でも、君の人生は、ここで終わり。可哀想だけど、ごめんなさいね。 そのかわり、って言ったら、おかしいかもしれないけど、 私が責任を持って、次の世界に連れていってあげる。 そのために、私はいるの。 あっちと、こっちを繋ぐ「渡し人」。それが私。 君が迷わないように、しっかり手を引いていくから、安心してね。 次の世界に連れて行く前に、まずは体を治してあげようね。 私の手が触れたところから、痛みや辛さが引いていくよ。 私の手に意識を集中してね。 頭から順番にいくよ。 頭……首……肩……胸…… 少しずつ楽になって来たかな? 腰……足……最後につま先……。 これで、痛くなくなったかな? びっくりした? 身体が軽くなったでしょう? ふふふ、良かった良かった。 もう一度、私の手に集中してね。 頭に手を当てて……よーしよーし。 くすぐったかったかな? 私の手が触れると、痛さも、怖さも、何もかもうすーくなっていって、 どんどんゆったりとした気分になっていくね。 よーしよーし。 さて、どうかな? まだ、自分が死ぬんだってことを、受け入れられないかな? じゃあちょっと、落ち着くために深呼吸してみようか。 ゆーっくり吐いて、吸ってー。 もう一度ゆっくり吐いてー、吸ってー。 少し落ち着いてきたかな? 落ち着いて、リラックスして……。 怖くないよ。 怖くない、怖くない……。 安心していいよ、私がちゃんと、最後まで見届けてあげるからね。 あっちの世界って、凄くいいところなんだよ。 お日様がぽかぽかしてて、甘くていい匂いのする花がたくさん咲いてて、 風がひんやりしてて気持ちいい。吸い込む空気はとても綺麗で気持ちよくて、 どこからか、鳥のさえずる声が聞こえてくる。 冷たい水のせせらぎ。そよそよと凪ぐ草木。 いつまでも、寝転んでいたくなる。 そんな、素晴らしい世界。 どこまでも優しくて、温かい世界。 この世界にあるような、痛みや苦しみは、どこにもない。 誰にも邪魔されない、安らかな楽園。 次に、あなたの出番が来るまで、そこでゆーったりと過ごすんだ。 だから、不安に思うことなんて無いんだよ。 ……そっか、残していく人たちが不安なんだね。 わかった、それなら、君が、苦しみも悲しみもない、安らかな世界に行ったこと。 それを、残された人たちの夢に立って、伝えておきます。 それなら、君も思い残すことなく、向こうに行けるよね。 普段はこんなことはしないからね、君だけの特別サービスだよ。 残された人の事も考えるなんて、君は、優しい人だね。 ……よしよし。 これはお姉さんからの「頑張ったね」のご褒美だよ。 よしよーし。ふふふ。 よしよし、今までよく頑張ったね。 今まで、よーく頑張って生きてきたね。 楽しかったこと。嬉しかったこと。 悲しかったこと。苦しかったこと。 こうして、君の魂に触れてると、全部伝わってくる。 君が、しっかり生きてきたこと、 ちゃんと、こうして、私が認めてあげるからね。 よしよし。 大変だったね。辛かったね。すごく、頑張ったね。 色んなことに耐えて、歯を食いしばって生きてきたんだよね。 わかるよ、ぜーんぶわかるんだから。 でも、もう頑張らなくて良いんだよ。 何もかも、ぜーんぶ関係なくなって、楽になるからね。 辛さも苦しみもない、暖かくて幸せな世界が、君を待ってるよ。 ちょっと、怖くなってきたかな? 大丈夫、かな? ほら、手を出して。 安心できるように私が、ぎゅっと手を握っておいてあげるからね。 ほら、ぎゅーっ。 暖かいでしょ? 安心していいからね。 ゆっくり深呼吸をして……。リラックスして、私に身を委ねて。 そろそろ時間だね。ちょっとずつ、視界が暗くなってくるのがわかるかな……? 大丈夫だよ、大丈夫。一度、真っ暗になって、何も見えなくなるけど、 すぐに、明るくなるから。安心して。私が、この手でちゃんとあなたを連れて行くからね。 私の手、わかるかな? ほら、今、貴方の手をぎゅーって握ってるよ。 最初に言ったこと、覚えてるよね? 私が、責任を持って貴方を連れて行くからね。 暗い中でも、迷わないように、私が、ちゃんと連れて行くから。 だから、絶対に離さないでね。……約束だよ? 怖いよね、どうなるかわからなくて、びくびくしちゃうよね。 でも、安心して私に身も心も委ねてね。大丈夫、絶対に大丈夫だよ。 怖くないよ……。怖くない、怖くない。 大丈夫だよ……。安心してね……。 よーし、よーし。 だんだん、意識が、遠くなっていっちゃうね……。 私の、声だけに集中して、リラックスして……。 暗くなってきたね。何にも、見えなくなってきたね。 でも、大丈夫。 これが、終わりじゃないよ。ここからが、あなたの新しい始まり。 あなたは、またその足で新しい道を歩いていける。 ちょっとだけ、長く眠るだけ。それだけ。ただ、それだけ。 次に目が覚めたら、絶対、暖かくて、優しい世界が待ってるよ。 ……もう、お別れの時間だね。 ……おやすみなさい。

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