プロローグ
「……あれー。せんせーだ。どしたのー? 保健室に何か用?」
「んー。リナ? リナは、ただ、保健室のベッド借りてるだけー」
「すっごく眠かったから、寝させてもらおーかなって」
「理事長の娘(むすめ)特権だよー。ま、お昼休みなら別にいーでしょー」
「せんせーはどーしたの? ……あ。分かった」
「おー、よし、よし」
「おつかれさまー。よーく頑張ったねー。よしよし」
「えらい、えらーい」
「……あれ? 違った? すっごく疲れた顔してたから、癒されにきたのかと思った」
「リナの体、ぎゅってすると、癒されると思うよー。柔らかいし。いい匂い、すると思うし」
「せんせー、毎日忙しそーだからねー。リナ、心配になるよー。職員の健康状態は、しっかり気にしないとねー」
「あー。怪我しちゃったんだー」
「どこ? 右足? 捻挫? 痛そー。大丈夫?」
「廊下で転んだの? ……やっぱりそれ、疲れてるせいじゃない?」
「あぁ。今、保健のせんせーはいないよー」
「別に、リナが追い出したわけじゃないってば。“呼ばれた”って言って、どっか行っちゃった。しばらく帰ってこなさそうだけど……」
「あ。ひょっとして、その捻挫、自分で手当てしよーって思ってる? せんせー」
「じゃーさ、リナがそれ、やってあげる」
「えー。だって、誰かにやってもらったほうがやりやすいでしょー」
「ここにはリナしかいないし、だったら、リナがやったほうがいーじゃん?」
「リナ、手当てするの、結構上手いよー。一応、保健委員だし」
「それに……せんせー、すっごく疲れてるみたいだし」
「リナがやるから、その間、目でも閉じて、ゆっくり休んでなよ」
「んー。まだ遠慮するのー? じゃあ、理事長の娘命令でーす。素直に、リナの施しを受けなさーい?」
「言うこと聞かないと、親に言って、せんせーのこと、強制的に休暇取らせちゃうよー? お給料もあげちゃうかも」
「ほら。せんせー、座って座って」
「リナが、せんせーのママみたいに優しく……手当てしてあげるからねー」