Track 1

『リナが優しく手当てしてあげる』

「せんせーはそこに座ってていいからねー。じっとしてて」 「えーっと。捻挫のときはどーするんだっけ。……あー、そーだ。まずは、捻った部分を動かないようにするんだったかな」 「んー……包帯、包帯、っと……」 「え? あぁ。リナ、保健のせんせーと、結構仲いーから。色々聞いてるんだー」 「普通の生徒よりも保健室に詳しいから、安心してていーよー」 「あ。あったあったー」 「せんせー。靴脱いで。それで、リナの太ももに、足、のっけて?」 「んー? 恥ずかしいの? 靴脱ぐのが?」 「ケガ人がそんなこと気にしちゃ、めっ、でしょー。ほら、さっさとやって?」 「うん。そーそー。それでいーの」 「巻いてくよー。動かないでねー」 「よいしょ、よいしょ……」 「ちょっとだけきつめに巻くけど、きつすぎたら言ってねー。圧迫しすぎるのもよくないし」 「…………」 「……んー? うん。けっこー、うまいもんでしょー。リナ、一応は優等生だからねー。こういうのは、ばっちり頭に入ってるの」 「ここを、こうやって……こうで……こう」 「ん。これでおっけー。足、下ろすねー」 「あとは、ええっと……そーだ。冷やすんだった」 「冷蔵庫、冷蔵庫……」 「んー……っと。氷はあったから、これを氷枕の中に入れればいーか」 「はい、せんせー。ちょっと冷たいよー」 「ほい。このまま、しばらく、冷やしててねー」 「捻挫のときは、捻ったところを冷やすのがいーんだって。痛みの感覚がなくなるまで、冷やしといてねー」 「応急処置的には、こんなもんかなー。痛みが続いちゃったら、ちゃんと病院行ってね、せんせー」 「んー? 思ったよりも手際よくて驚いちゃった?」 「どう? リナのギャップにやられちゃった? 惚れた? せんせーなら、いつでも惚れてくれても大丈夫だからねー」 「リナとお付き合いしとくと、色々お得だよー。いい感じの福利厚生がつくかもよー」 「…………」 「お昼休み終わるまで、まだもう少し時間あるねー」 「せんせー? 別に、せんせーもお昼休みはお休みでしょ?」 「このまま、少し、休んでいきなよー。捻挫したのも、多分、疲れてふらついてるせいとかじゃない?」 「うん。10分、目を閉じるだけでも違うっていうよ? ほらほら」 「おっけー。じゃ、体の力抜いて。頭、掴むよー」 「……よいしょ、っと」 「あ。こら。暴れないの。怪我、痛むよー? じっとしてなって」 「んー? “なに”って……膝枕だけど。お休みするんだったら、この体勢が一番でしょー?」 「リナの太もも、けっこームチムチしてて柔らかいと思うよー。ほら、肩の力、抜いて。リラックスリラックス」 「……あー。誰かに見られる心配してる? だいじょーぶだよー。この時間、いつも、ほとんど誰も来ないし」 「いつも保健室に来てるリナが言うんだから、間違いないってー」 「それに……他のせんせーに見られても、問題はないしねー。“理事長の娘さんのワガママに付き合わされてるな”、って同情されると思うよー」 「つまり……リナたちは、最強ってわけ。ふふ」 「ほらほら。目、閉じて。ゆっくりしよ? チャイム鳴ったら起こしてあげるから」 「うん。そうそう」 「……せんせーってさー。大変だよねー。ほんと。生徒から頼まれごとされたら、それに応えなきゃいけないし。なのに、自分のお仕事は別にあるんでしょ?」 「リナは、ただのJKでしかないけど……でも、大人の大変さは分かってるつもり。せんせーのこと、すっごく尊敬してるんだ」 「だから、疲れたら、リナにいつでも言ってねー。リナの太ももでよかったら、いつでも貸してあげるからさー」 「教室で居眠りするのは、せんせーの立場的にまずいと思うけど……保健室だったら、問題ないからねー」 「ここにいるときは、せんせーのママになったみたいに、リナが癒してあげる。ふふ」 「よーし、よーし。いーこ、いーこ」 「せんせーだって、辛いよねー。大変だよねー。ほんっと、すごいよー」 「せんせーは、いーこ。せんせーは、いーこ」 「いっつも頑張ってて、えらい、えらい」 「……あ。体の力、抜けてきたー。その調子だよー。少しだけ、眠っちゃお?」 「捻挫の治療も、安静にするのが一番だしね。体、とにかく休めないと」 「いーこいーこ。せんせーは、いーこ、いーこ」 「ゆっくり休んでね……。せんせー」