Track 3

『リナがマッサージしてあげる』

「あー。せんせーだ。こんにちはー」 「この前の捻挫はどーお? また手当てしにきたの?」 「……あぁ。もうすっかりよくなったんだ。よかったよかったー」 「今日は、仮眠しにきただけ? へー。じゃ、リナと一緒だねー」 「うん。リナも、この前と同じ。お昼寝しにきてる」 「……別に、リナ、いじめられてるわけじゃないよ? 授業にはちゃんと出るし。友達もそこそこいるし」 「けど、せんせーはそーいうの気にしちゃうんだね。心配してくれてありがとー」 「あ。保健のせんせーは今日もいないよー。忙しい人だよねー」 「あー。立ち話させちゃってごめんなさい。ささ、狭いところですが、こちらへどうぞ。まあ……別にリナの家ってわけじゃないけど」 「ほら。ごろーんっと。ごろーん」 「んー? ……なんかちょっと警戒してる?」 「あぁ。この前のえっちなこと? 別に、せんせーが嫌ならやらないって」 「見つかっちゃったら、せんせーが周りと気まずくなっちゃうのは、さすがに分かってるし」 「まあ……もしバレて、働きづらくなっちゃったら、せんせーの転職先はリナが何とかしてあげるねー。うちの親、学校経営以外にも色々やってるからさー」 「本当に……リナは、忙しそうなせんせーに、癒されて欲しいだけだよ。せんせーが大事だから」 「せんせーのママだって、無償の愛ってやつをくれたでしょ? それとおんなじだよー」 「だから、ほらほら。遠慮しないで、ごろーんっと。靴も脱いじゃってさー」 「うんうん。それでいーんだよ、せんせー」 「……あ。そーだ。せっかくだし、マッサージしてあげるよー。そっちのほうが気持ちよく仮眠できるでしょー」 「んー。リナのことは、気にしないでいーよ。リナたちの授業でせんせーが疲れちゃってるのに、リナがごろごろしてるわけにはいかないでしょー」 「それに……言ったでしょー。保健室の中だけは、リナは、せんせーのママなんだって」 「だから、気にしないで、いっぱいリナに甘えてね。せんせー」 「仰向けよりは、うつ伏せのほうがいーよね。ごろーんってしてね」 「うん。おっけー」 「せんせー、腰の上、乗るよー。よいしょ、っと……」 「……リナ、重くない? だいじょうぶ? そっか。よかった」 「じゃあ、いくよー」 「まずは、肩から……」 「……ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅー……」 「どーお? 気持ちいい?」 「よかったー。リナ、よく親とかにやってあげてたからねー。それなりに自信あるんだよねー」 「うーん……せんせー、なかなか凝ってますねー。心配になるくらいカッチカチだよー」 「せんせーって、やっぱりそんなに休めないの? ……うーん。そっか。大変だねー」 「一応、親に、お仕事を上手く減らせないかどうか、お願いしてみるねー。現場の意見、ってゆーのを、きちんと上にあげていかないとねー。うんうん」 「まあ……リナ、学校のお仕事について、そんなによく分かってるわけじゃないんだけど。でも、少しでもせんせーの役に立ちたいなー」 「リナママに任せなさーい」 「とんとんとーん。とんとん……」 「とんとん、とんとんとん……」 「次は、腰も揉んでみるねー」 「ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅーー……」 「大人の人は、よく腰が痛くなるっていうよねー。リナはまだ、全然わかんないんだけど……」 「リナのパパも、腰痛い腰痛いって言ってるからさー。せんせーもそうじゃないかって心配になるよー」 「せんせーはどう? 腰辛い?」 「そっかー。気を付けてねー」 「重いものを持つときは、上半身だけじゃなくて、体全体で持ち上げるようにするのがいいみたいだよー」 「次は、足もやってあげるねー」 「せんせーってさ。やっぱり、基本立ちっぱなしでしょ? ふくらはぎとか、ぱんぱんになるよねー」 「うわー。ほんとにぱんぱんだなぁ……」 「今度はこっちも……ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅ……」 「……ふー。こんな感じかなー」 「どーだった? せんせー。リナママのマッサージは。気持ちよかった?」 「……ありゃ。ひょっとして……また寝落ちしちゃった?」 「つまり……とっても気持ちよかったってことだよねー。よかったー」 「毎日毎日、お疲れ様。せんせー」 「ふふっ」