『リナがマッサージしてあげる』
「あー。せんせーだ。こんにちはー」
「この前の捻挫はどーお? また手当てしにきたの?」
「……あぁ。もうすっかりよくなったんだ。よかったよかったー」
「今日は、仮眠しにきただけ? へー。じゃ、リナと一緒だねー」
「うん。リナも、この前と同じ。お昼寝しにきてる」
「……別に、リナ、いじめられてるわけじゃないよ? 授業にはちゃんと出るし。友達もそこそこいるし」
「けど、せんせーはそーいうの気にしちゃうんだね。心配してくれてありがとー」
「あ。保健のせんせーは今日もいないよー。忙しい人だよねー」
「あー。立ち話させちゃってごめんなさい。ささ、狭いところですが、こちらへどうぞ。まあ……別にリナの家ってわけじゃないけど」
「ほら。ごろーんっと。ごろーん」
「んー? ……なんかちょっと警戒してる?」
「あぁ。この前のえっちなこと? 別に、せんせーが嫌ならやらないって」
「見つかっちゃったら、せんせーが周りと気まずくなっちゃうのは、さすがに分かってるし」
「まあ……もしバレて、働きづらくなっちゃったら、せんせーの転職先はリナが何とかしてあげるねー。うちの親、学校経営以外にも色々やってるからさー」
「本当に……リナは、忙しそうなせんせーに、癒されて欲しいだけだよ。せんせーが大事だから」
「せんせーのママだって、無償の愛ってやつをくれたでしょ? それとおんなじだよー」
「だから、ほらほら。遠慮しないで、ごろーんっと。靴も脱いじゃってさー」
「うんうん。それでいーんだよ、せんせー」
「……あ。そーだ。せっかくだし、マッサージしてあげるよー。そっちのほうが気持ちよく仮眠できるでしょー」
「んー。リナのことは、気にしないでいーよ。リナたちの授業でせんせーが疲れちゃってるのに、リナがごろごろしてるわけにはいかないでしょー」
「それに……言ったでしょー。保健室の中だけは、リナは、せんせーのママなんだって」
「だから、気にしないで、いっぱいリナに甘えてね。せんせー」
「仰向けよりは、うつ伏せのほうがいーよね。ごろーんってしてね」
「うん。おっけー」
「せんせー、腰の上、乗るよー。よいしょ、っと……」
「……リナ、重くない? だいじょうぶ? そっか。よかった」
「じゃあ、いくよー」
「まずは、肩から……」
「……ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅー……」
「どーお? 気持ちいい?」
「よかったー。リナ、よく親とかにやってあげてたからねー。それなりに自信あるんだよねー」
「うーん……せんせー、なかなか凝ってますねー。心配になるくらいカッチカチだよー」
「せんせーって、やっぱりそんなに休めないの? ……うーん。そっか。大変だねー」
「一応、親に、お仕事を上手く減らせないかどうか、お願いしてみるねー。現場の意見、ってゆーのを、きちんと上にあげていかないとねー。うんうん」
「まあ……リナ、学校のお仕事について、そんなによく分かってるわけじゃないんだけど。でも、少しでもせんせーの役に立ちたいなー」
「リナママに任せなさーい」
「とんとんとーん。とんとん……」
「とんとん、とんとんとん……」
「次は、腰も揉んでみるねー」
「ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅーー……」
「大人の人は、よく腰が痛くなるっていうよねー。リナはまだ、全然わかんないんだけど……」
「リナのパパも、腰痛い腰痛いって言ってるからさー。せんせーもそうじゃないかって心配になるよー」
「せんせーはどう? 腰辛い?」
「そっかー。気を付けてねー」
「重いものを持つときは、上半身だけじゃなくて、体全体で持ち上げるようにするのがいいみたいだよー」
「次は、足もやってあげるねー」
「せんせーってさ。やっぱり、基本立ちっぱなしでしょ? ふくらはぎとか、ぱんぱんになるよねー」
「うわー。ほんとにぱんぱんだなぁ……」
「今度はこっちも……ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅ……」
「……ふー。こんな感じかなー」
「どーだった? せんせー。リナママのマッサージは。気持ちよかった?」
「……ありゃ。ひょっとして……また寝落ちしちゃった?」
「つまり……とっても気持ちよかったってことだよねー。よかったー」
「毎日毎日、お疲れ様。せんせー」
「ふふっ」