夏葉の、けっこー上手になった耳かき(左耳)
;SE 夕立、ぽつ、ぽつ、ぽつ→ざーっ
;環境音 雨降り
;7/左
「あ――雨ふってきた。
うふふっ、もっと涼しくなっちゃうね」
「けど……えみちゃんたちのお泊り保育、大丈夫かな?
お外で夕立にあってなければいいけど……」
「え? ……あー、そっか! すみちゃんついてるから大丈夫だね!
すみちゃん、幸いを呼んでくれるんだし、
きっと急な夕立だって、うまいこと雨宿りだとか傘だとか――」
;飛車角のことを思い出す。少しさみしい。話題にしていいのかわかない
「……………………、え、と」
「えと! 夏葉、耳かきするね?
もう最初から、木の耳かきで大丈夫だよね~」
「それじゃあ、いくねー」
;7/左 接近囁き
「(ふーーーーーーーーっ)」
;7/左
「ん……あー。こっちもけっこー綺麗だね~。
けど、ちょっとは汚れてるから、
まずはゆっくり、まわりか……んしょっ」
「ゆっくり、あわてず、丁寧に~(耳かき音)――
(呼吸音)――(耳かき音)――
っ……(呼吸音)――(耳かき音)――
(呼吸音)――(耳かき音)」
「ん……(耳かき音)――
(呼吸音)……(耳かき音)――
(呼吸音)――(耳かき音)――
(呼吸音)……あの――ね? おにいちゃん――」
「えと……(耳かき音)――
おにいちゃんは、さ――(耳かき音)――
急な、あめふりのときとか、さ――(耳かき音)――」
「あ――(呼吸音)――うん。だよね。
思い出さないわけがないよね――」
「夏葉も。おんなじ。……
ぁ! 手、とまっちゃってた。ごめんね?
ん……(耳かき音)――」
「夏葉もね? 思い出すの――(耳かき音)。
傘がほしいなって思う時……(耳かき音)――
飛車角ちゃんのこと――(耳かき音)――思い出すの」
「夏葉が、ずーっと眠ってたとき――(耳かき音)――
飛車角ちゃん――毎日みたいに――眠りの中に――(耳かき音)――
ひょこんて、遊びに来てくれてたから――(耳かき音)――」
「おにいちゃんのこと、すみちゃんのこと、ありすちゃんのこと――(耳かき音)――
とおこさんのこと、ちまちゃんのこと、めっかいちゃんのこと――(耳かき音)」
「ひめみやさまのことも、滝女郎さんのことも、尚武おじちゃんのことも、菜穂子おばちゃんのことも――(耳かき音)――」
「それからそれから、夏葉がまだあったことがなかった――(耳かき音)――えみちゃんのこととか、うたれちゃんのこととか――(耳かき音)――
たくさんたくさん――みんなのことを――(耳かき音)」
「飛車角ちゃん……いっつも聞かせてくれてたから――
『もうすぐの、必ず迎えがきてくれるけぇ』って、
夏葉に教えてくれていたから――――」
「だから、夏葉――(呼吸音)――
だから、ね? 夏葉――(呼吸音)――」
「考えられたの。たくさんたくさん……(耳かき音)――
おにいちゃんが、迎えにきてくれるまでの間に――(呼吸音)――たくさん、たくさん――(耳かき音)――」
「いろんなことを、たくさん、たくさん……(耳かき音)――
どうしたらいいのか、どうしたいのか――(耳かき音)
おにいちゃんと、どうなりたいのか――(耳かき音)
たくさんたくさん、考えられたの――(耳かき音)」
「それでね? 夏葉――(耳かき音)――
だからなんだって、今は思うの――(耳かき音)――
すごくたくさん、あらかじめ考えておけたから――」
「……(吐息)。
おにいちゃんが、夏葉のことを向かえに来てくれた、あのとき――(耳かき音)――
怖かったけど、ないちゃったけど。
起きたくないって思いもしたけど、それでも――だけど――」
「だけど――おにいちゃんの手を取れたのは……
全部のことを――
全部まるごと、なんにもかくさず――
飛車角ちゃんが、教えてくれてたおかげもあるって……」
「(呼吸音)――すぐには、わからなかったけど。
だんだんだんだん、新しいくらしに馴染んで……
そうしていくうち、ちょっとずつ――
夏葉、思うようになったんだ」
「ん……(呼吸音)――(耳かき音)――
(呼吸音)――(耳かき音)――
(呼吸音)――(耳かき音)……」
「……最初は、ね? 夏葉、飛車角ちゃんのこと――(耳かき音)――
『変な顔ー』って思っちゃったけど――(耳かき音)――
いまでもやっぱり思い出したら――うふふ、
変な顔ーって、思うけど!」
「傘のおばけで、ちょっとボケてて――(耳かき音)――
すみちゃんといっつも口喧嘩してて――(耳かき音)――
夏葉にも、『忘れ物はありませんかの』とか、
『今日はふりますけぇ』、とか、口うるさいなぁっても思ってたけど――(耳かき音)」
「それでも、夏葉――変な顔した飛車角ちゃんが大好きで。
大事な家族って思ってて。
すごく、すっごく感謝していて――」
「(呼吸音)(呼吸音)」
「……だけど。――だけど、ね? おにいちゃん。
最近だんだん、思い出さない日が増えてるの」
「にわか雨の日、いっつも絶対、飛車角ちゃんのこと思い出してたのに――
傘さして、おうちにかえって――
おうちの匂いをかいではじめて、『飛車角ちゃんのこと忘れちゃってた』って……そんな感じの日、だんだんだんだん増えてるの」
「だから、夏葉――(呼吸音)――」
「ん……(呼吸音)――(耳かき音)――
(呼吸音)――(耳かき音)――
(呼吸音)――(耳かき音)――
(呼吸音)――(耳かき音)――」
「だから、夏葉――(呼吸音)――
それがなんだか、怖いみたいで、悲しくて……
飛車角ちゃんを、だんだん忘れるみたいで、いやで――
え?」
「(呼吸音)――うん。――うん。――うん。……うん」
「忘れていいって……飛車角ちゃんが?
晴れてる日には、傘のことなんぞさっぱり忘れて、おもいっきりに遊べばいい――って?」
「けど……だけど夏葉、雨降りの日にも――……
うん……うん……」
「うん……(呼吸音)……(呼吸音)……(呼吸音)…………ああ――そっか。そなんだ」
;徐々に環境音雨、F.O.
「お天気じゃなくって、夏葉のこころのお話なんだ。
夏葉の心が晴れている日が、だんだん増えてきてるから――」
「泣いたりくよくよしたりしないで、元気に笑って過ごせてる日が――だんだん、どんどん、増えているから」
「だから、夏葉が"晴れ"だから。
傘のこと……飛車角ちゃんのこと……思い出さない日が増えてるのって……あたりまえ……(呼吸音)――」
「……………………」
「……さみしい……けど――
でも…………」
;ちょっと泣きそうなのを我慢して、前向きに整理する
「んっ――(耳かき音)――(呼吸音)――
(耳かき音)――(呼吸音)――
(耳かき音)――(呼吸音)……っ――うん!」
「そっか!
今の夏葉の毎日は、 傘がいらない毎日なんだ!
おにいちゃんが、飛車角ちゃんが! すみちゃんがありすちゃんが、みんなが!
夏葉のお空を、こんなに晴れさせてくれたんだ!!」
「昔は夏葉、確かにめそめそしてたもんねぇ。
いま考えると――えへへ――(耳かき音)――
自分でも、ちょっと恥ずかしくなっちゃうくらい――(耳かき音)――」
「だけど、うん。――(耳かき音)――
今の夏葉は、晴れてるんだね――(耳かき音)――
もう傘なんていらないくらいに――(耳かき音)――」
「傘がいらなくなるようにって……飛車角ちゃんも――
(呼吸音)
飛車角ちゃんも、願って、そうしてくれたんだよね――」
「うん! そしたら――そうしたらさ――(耳かき音)――
夏葉、これからもずっとずうっと――(耳かき音)――
おにいちゃんと一緒に、みんなと一緒に――(耳かき音)
――毎日毎日、楽しく暮らして――(耳かき音)」
「そうして、素敵なレディーになって――(耳かき音)
――かっこいいおばちゃんになって――(耳かき音)――
やさしいおばあちゃんにも……ん――(耳かき音)――
いつか、きっと、なってそうして」
「おばあちゃんになったら、そしたら――(耳かき音)――
いつかは絶対死んじゃうし――(耳かき音)
そのときはさすがに悲しくて――(耳かき音)
夏葉、雨降りになっちゃって――」
「そのときやっと飛車角ちゃんのこと思い出して。
夏葉、きっと――うふふっ!
『変な顔ー』って、やっぱり思って、ちょっと笑って!」
「だからきっと、夏葉に降ってくる最後の雨も。
きっと多分……飛車角ちゃんが――――(耳かき音)――
飛車角ちゃんの思い出が――弾き飛ばしてくれるよね?――(耳かき音)
ね? そうだよね? おにいちゃん」
「(耳かき音)――(耳かき音)……(耳かき音)――
うんっ!」
「なら、安心して忘れちゃお。
最後にはきっと、思い出すから――(すうっ)」
;7/左 接近 長く
「(ふうぅぅぅーーーーーーーーーーうっ!)」
;7/左
「どれどれ? ん~(呼吸音)うん!
綺麗にできた! 耳かきおしまい!! あ」
;SE 風鈴
;環境音縁側 F.I.
「……夕立、いつの間にかあがってたんだね……」
;SE 風鈴
「……いい風、すごく――(呼吸音)――
雨上がりの匂い、草の匂い、夏の終わりはじめの匂い。
……ん――ふっ……ぁ――
ふぁああ――ぁあ――あうっ!?」
「やだっ、おおあくび――ふぁ――
けど、夏葉。なんだか……なんだか、
少し、眠くなってきたかも――」
「ふぁ――あ……うん。だね」
「たくさん遊んで汗かいたし――
おしゃべりもたくさんで、安心したし……
これで眠たくならないほうが――ふぁ――ウソ、だよねぇ」
;7/左 接近囁き
「――。おにいちゃん、ね? ひざまくら、交代してもらってもいい?」
;7/左
「え? あ……そっか。そだよね。
おにいちゃんもねむたいんなら、お部屋で布団で、風邪引かないようおなかに夏掛けちゃあんとかけて、それでお昼寝したほうがいいよねぇ」
「うふふっ! じゃ、おにいちゃん!
立って! 立って! ほらっ!」
;1/前 *「わ」以降密着
「そしたらね? 夏葉のことだっこして!
――わっ!!! えっへへー、おひめさまだっこだぁ」
;3/右 接近囁き
「じゃ、おにいちゃん?
夏葉姫のこと、このままお布団までつれてって?」
;環境音 F.O.