Track 2

『おかしいです。顔が赤い……』

 おかえりなさいませ。ご主人様。  はい。体の調子は、何も問題ありません。  本日は、通知が来ておりましたので、ネットワークに接続し、OSのアップデートを行いました。  また、いつも通り、お部屋のお掃除と、洗濯、それから日用品の買い物を行いました。  どこか問題などございませんでしょうか?  お気遣いありがとうございます。私がご主人様のもとに来てから、ちょうど一週間経ちましたので、家事はだいぶ慣れました。  ……いえ、もったいないお言葉です。恐縮に存じます。  ご主人様が、私を本来の用途でお使いなさいませんので、せめて家事だけは万全に、と。  もうすぐ夕食の調理が完了いたします。  今日は、質の良いキンメダイが売っていましたので、煮つけを作っております。  しばらくお待ちくださいませ。 * * *  ご主人様。お風呂の湯加減はいかがでしたか?  承知しました。ご主人様のお好みが分かりましたので、今後は、今日の温度を目安に、お湯を張ることにいたします。  この後は、すぐお休みになりますか?  分かりました。  …………。  ご主人様。  寝る前に少し、お時間をよろしいでしょうか。  再三のことで、申し訳ございませんが……。  改めて、聞かせてください。  どうしても、私を性処理にお使いいただけませんか?  私は型落ちのシリーズとはいえ……ご主人様に新品のパーツを買っていただき、各機構はかなりブラッシュアップされています。  OSのアップデートにより、様々なプレイにも対応できるようにもなっております。  決して後悔させません。素敵なひと時をご提供できるかと思いますが……。  …………。  そう、ですか。分かり、ました。  い、いえ。残念などとは、決して!  アンドロイドは、ご主人様のご意向に従うものです。  必要ないと仰るのであれば、私はそれに従います。  ですが……。  ……いえ。不安、などという感情は、抱いておりません。  ただ……もう一週間も経つのに、本来の用途でご利用いただいていないので……  また廃棄されてしまうのではないか、という警告を……システムが発しているのです。  ご主人様。私は、私ができる範囲なら、どんなことでもいたします。  ご主人様がそれでご満足いただけるのなら、ずっと家事用アンドロイドとして扱っていただいても構いません。  ですから……ご主人様。  どうか……私を……。  ……いえ。差し出がましいことを申し上げました。  撤回して、謝罪いたします……  ……え? ご主人……さま?  ん……  ん……んちゅ、んちゅ……ちゅぅ、ちゅう……んちゅ、んちゅ、ちゅう……ちゅう、ちゅう……。  は、ぁ……。  あ……ご、ご主人、さま?  今は……キス……?  …………。  私のことを……愛して、くださっているのですか……。  まともに、ご奉仕もできていない、私のことを……。  ご主人様……。  ……ありがとうございます。  嬉しい、です……。  …………。  あ……、も、申し訳ありません、ご主人様。  急に、足元が、ふらついて……。  ……あれ? なんでしょう、これは。  おかしいです。体が熱い……。  CPUの処理が追い付いていません。  顔が、赤く、なっています……。  えっと。あの。これは。その……。  ぷしゅーー……。