メメ子、買い物中
来るたびに思うが……このスーパーとかいう施設は、すごいな……。
世界中の食べ物が集まってるんじゃないか? ここは。
肉も魚も野菜もある……。一つの場所をぐるっと回れば、どんな料理の材料も手に入るなんて……。
愚かな人間どもも、生活を便利にする知恵には長けているのだな。
……で、貴様。
今日の飯はなんだ? マーボー豆腐? マーボーナス? なにマーボーだ?
……なんだ。違うのか。我は毎日マーボーでも構わんのに。
……秘密だと?
なんだ貴様、その焦らし方は?
ふふん。まあ、バイトで疲れ切った我を労おうということか。貴様にしてはなかなか殊勝だな。
楽しみにしてるぞ?
……あ。ねーねー、あのお菓子買っていーい?
えー? いいだろー! あれ、結構美味いし、値段もそんなに高くないんだよー!
……いいの? やったー!
ふふ。今日の貴様はいつもより聞き分けがいいな? 何かいいことあったか?
あ、じゃあ、あのお菓子もついでに買っていい!?
……一個まで? ケチ。
ちなみに、材料は何買うんだ?
まずは……ひき肉? ふんふん。結構多めに買うんだな。
なんだなんだ? ハンバーグか? アレもなかなか美味いから、悪くないメニューだな。
あとは? タマネギ?
ふふん。いよいよもってハンバーグだな? 隠すのがヘタだな、貴様は♪ ふふふ。
……んー? なんだ。
料理?
え、誰が?
我がしろって言いたいのか?
……えー。面倒だからヤだ。
我、食うのは好きだが作るのは嫌なんだ!
別に文句はないだろー!? 我、貴様に言われた通り、バイトの給料、家に入れてるんだぞ!
それに、貴様の作る料理は悪くない!
だから我が作るよりもいい! 当然の結論だ! まったく。
……え。洗い物? 代わりに? 我がするの?
えぇ……どうして?
……家事を分担するのか?
うぅ……。まあ、確かに、現状、家事は貴様が全てやっているわけだが……
そこは、ほら。生活費を払ってるわけだから、我は寝てるだけでも……。
……ダメ?
えええ……。
……わ、分かった。じゃあ、こうしよう。
アレだろう。自動で食器を洗ってくれる機械があるんだろう!? 食洗器、とかいうやつ。この前テレビで見た!
我、バイトの給料貯めて、アレ買うから! そうすれば、貴様も我も洗い物をしなくて済むだろう!?
それでどうだ!
……うむ。交渉成立だな。ふふふ。
……あれ? それだと我……余計にバイト増やさないとダメじゃない?
…………。
……や、やっぱり、洗い物……し、します。
うぅ……。なんか我、貴様にいいように扱われてる気がするぞ……?
くぅ……。我がとっても恐ろしいメドゥーサってこと、やっぱり忘れられてる気がする……!
まぁ、いい。
ここは、絶品のハンバーグで手を打つとしよう……!
……ん?
貴様。今、カゴに……ピーマンを入れなかったか?
待て。我の目は誤魔化せん。
あー! やっぱりピーマン入ってる!
その緑色の悪魔は絶対に入れるなと言っただろう!
今すぐ戻せ!
……はっ。
ま、まさか。貴様……ひょっとして、今日のメニューは、ハンバーグなどではないな!?
噂に聞いたことがある……
“ピーマンの肉詰め”などという、想像を絶する料理があると……!
ね、ねぇ……
嘘……だよね?
き、貴様! だからさっき、お菓子を買ってくれたのか!
やめろ! 戻せ! 今すぐ戻せ! 今なら間に合う!
あ、話聞いてよぉ! レジのほうに行くなー!
こ、こうなったら……!
わ、“我の”――
……あ、目が合わないようにしてる! くぅう……!
あ、待てってば! 待ってー!!
ねーえー!!
ピーマンはやーめーてーー!!!