Track 7

tsuioku4a

■「聖夜に君と」 ※※※ドラマパート※※※ (BGM 賛美歌115番) (生徒たちの声) カイ「おーい、待ってー!」(10Mぐらい離れたところから) (追いついて) カイ「ごめんごめん、礼拝堂へ楽譜を取りに行くんだよね?僕も行くから一緒に行こう」 (歩き出す2人) カイ「今夜のクリスマス礼拝楽しみだね」 カイ「僕らの学年でオルガン奏者に選ばれたのは僕と君と、あとユーリだったっけ?」 カイ「ずっと練習してきた曲とは言え、緊張しちゃうな~♪」 カイ「あ、そう言えば礼拝の後、何か予定ある?」 カイ「特に無いの?じゃあさ、僕の部屋でケイン達とクリスマスパーティーを開く予定なんだけど、君もトワと一緒に来ない?」 カイ「え?駄目かもって?どうして?」 カイ「………黙ってちゃわからないよ。」 カイ「はぁ…(ため息)…、もしかしてトワとうまくいってないの?」 カイ「フフ、当たり?そんなことじゃないかなって思ってた」 カイ「実はトワからも相談を受けてたんだ、君との付き合い方で悩んでるって…」 カイ「ああ、誤解しないで、悪い意味じゃないよ。」 (礼拝堂に入る2人) カイ「楽譜は確か…ああ、あった。はい、これ君の分。」 (楽譜のページをめくり) カイ「この曲…賛美歌115番。僕が弾く予定なんだけど…トワが大っ嫌いな曲なんだ」 カイ「あ…ごめん、聞かなかった事に…ってわけにはいかないか」 (楽譜をパタンと閉じため息をついて座る) カイ「はぁ…(ため息)3年前学院に居たフランツ先生って覚えてる?」 カイ「そう、オルガンが専門の眼鏡をかけた髪の長い…30過ぎだったかな」 カイ「この曲はフランツ先生が一番好きな曲でさ…」 カイ「…思い出した?…そのフランツ先生は………トワと…恋人同士だったんだ」 カイ「勿論他の生徒はそのことを知らないよ。当時ルームメイトだった僕にだけ打ち明けてくれて…」 カイ「……あの頃トワは、幸せそうだった。毎晩寝る前に彼から惚気話を聞かされて…(笑)本当に本当に幸せそうだった」 カイ「でも突然………フランツ先生は、トワに別れを告げず学院を去ってしまった」 カイ「信じられないだろ?居なくなるその日まで、トワも知らなかった」 カイ「その翌週だったかな。フランツ先生が隣町の教会で結婚式を挙げたってニュースが飛び込んだのは」 カイ「担任の先生が授業前にその話をした時、トワは呆然自失の状態だったよ」 カイ「相当ショックだったんだろうね…トワは授業を早退して、心配で僕も慌てて部屋に戻ったんだ」 カイ「彼は大量のアスピリンとブランデーを飲んで自殺しようとしていた…」 カイ「僕は慌ててトワの口に指を突っ込んで、薬と酒をなんとか吐かせて…泣きじゃくる彼を抱きしめて、介抱したよ」 カイ「その後もトワは何日も泣き続けて…僕もとても心が傷んだ…」 カイ「………あの時から彼の心は壊れたままなんだと思う」 カイ「誰かを好きになるのが怖い、そして誰かから好かれるのも怖いって…そう言ってたよ」 カイ「だから…ね、(温かい気持ちで)トワが君の事を好きだと自覚して戸惑っているようなんだ」 (カイ、立ち上がり歩き出す) カイ「長話しちゃったね、そろそろ戻ろうか」 カイ「え?だから本当の事だよ、トワは君のことが好きなんだ。だから君とどう付き合ったらいいかわからなくなって困ってる」 カイ「は?トワが僕の事を?ハハハ、まさか。僕は…昔トワに告白して振られたんだ、僕の事はどうしても友達としてしか見ることが出来ないって」 (ドアを開ける音、生徒たちの声が聞こえる) カイ「トワが落ち込んでいた時一度だけ、慰めてって言われてキスした事はあったよ。でもそれ以上の事は何もしてない」 カイ「僕には彼の心を動かせなかったけれど、きっと君なら…」 カイ「いやもうきっと君たちの間には特別な絆が出来ているんだろうね」 カイ「羨ましいよ…フフ」 カイ「じゃあ、クリスマスパーティーの事考えといて!僕は職員室に寄ってから部屋に戻るから!じゃあまたね!」 (クリスマス礼拝後) (部屋のドアを開ける音、歩く音) トワ「あー疲れた、クリスマス礼拝って長いんだよね~」 (トワは賛美歌と聖書を起き、クローゼットに上着をかけている) トワ「ああ、でも君のオルガンはすごく素敵だったよ。賛美歌94番、あの曲静かでいいよね…」 トワ「ん?……ああ、カイから何か聞いたの?」 トワ「はぁ…うん、そうだよ、本当の事さ」 トワ「僕は昔、フランツ先生と付き合ってたんだ」 (クローゼットを閉じてゆっくり歩き、窓辺へ行って窓を開ける) トワ「3年前、僕はオルガンの授業の成績が悪くて、いつも居残り授業を受けていた」 トワ「フランツ先生はね…僕の体に後ろからぴったり寄り添って、手をとって弾き方を教えてくれたんだ」 トワ「うまく弾けるととても褒めてくれてね…それが嬉しくて、僕はどんどんオルガンが上手になった」 トワ「そのうちフランツ先生が、こんな提案をしたのさ」 トワ「クリスマス礼拝で弾く賛美歌を順に練習していって、上手に弾けたら一曲ごとにご褒美のキスをあげようって」 トワ「それから僕とフランツ先生は、旧校舎の音楽室で毎日二人っきりで練習を重ねるようになったんだ」 トワ「……最初は頬にキス、それから唇、耳元や首元、胸元、だんだんキス以上のご褒美をくれるようになって、僕は簡単に先生に体を許した」 トワ「先生との淫らな行為はすごく気持ちよかったよ…普段あれだけ温厚な先生が、セックスする時はすごく乱暴で、汚い言葉で罵られて、縛らられたり目隠しされたりしたこともあった…」 トワ「でも終わったあと、必ず謝ってきて…すごく優しくキスをしてくれて…」 トワ「そんな事を繰り返しているうちに、僕はフランツ先生に溺れていったんだ」 トワ「……ふふ、軽蔑した?」 トワ「いいよ、気を遣わなくても。実際僕は身も心も汚れた人間なんだ」 トワ「はぁ…僕が君に惹かれた理由だって、君のオルガンの弾き方が…フランツ先生の弾き方とよく似ていたからなんだ」 トワ「フランツ先生とよく似た音色を奏でる君の手で愛撫されたら…気持いいかなって?そんな下品な理由で近づいたのさ」 トワ「………呆れただろ?」 トワ「でも今は…………僕は……君が……」(泣きそうな声で) トワ「君が…居なければ……駄目…なんだ」 トワ「……君が笑って僕に話しかけてくれるだけで、幸せで…君の横顔を中庭から見かけるだけで心が踊るんだ」 トワ「誰かを好きになるって気持ちを…ようやく思い出す事が出来たんだよ…」 トワ「だから……軽蔑されてもいい……君の…そばに…居させて欲しい」 トワ「……(嗚咽まじりに)ただ、そばに…君のそばにいたい…」 トワ「…好きだよ…君が…好きなんだ…」 トワ「キス…してもいい?」