プロローグ
ん?どうしたの、ボクちゃん。
眠れないの?
もう「おねんね」の時間だよ?
そんなところに居ないで、先生のところへおいで?
《ボク 近くに来る》
さっきみんなにからかわれたこと、気にしてるの?
ボクちゃんは先生のことが、好きだってこと…。
《ボク ……》
そんなことは、気にしなくていいんだよ?
ね?
《ボク …うん》
ふふっ。
だけど本当にボクちゃんが、みんなの言うとおり…先生のことを「好きっていう気持ち」、持(も)っていてくれるなら…。とってもうれしいな?
だってボクちゃんはいつも先生と目が合うと、すぐにそらしちゃうから。
《ボク 顔を横に向ける》
ほら、そんなふうにね?
ふふっ。
《ボク ……》
先生の手、握ってみて?
《ボク 手を握る》
そう。
顔を見て、ちゃんと答えてね?
ボクちゃんは先生のこと、好き?
《ボク うん…》
本当に?
《ボク うん…》
誰よりも好きなの?
《ボク うん…》
独り占(じ)めにしたいくらい?
《ボク うん…》
もしかして先生のこと、お嫁さんにしたいくらい好き?
《ボク うん…》
そうなんだ、ふふっ。
先生もボクちゃんのこと、大好きだよ。
もしもボクちゃんが、もっともっと先生のことを、「好き」って言ってくれたら…。みんなには内緒でいいことしてあげる。
とっても気持ちいいことだよ?
男の子ならみんな我慢できなくなっちゃうくらい、すごく気持ちいいこと…。
して欲しい?
《ボク うん…》
じゃあ先生の後(あと)について、「好き」って言ってみて?
いぃい?いくよ?
好き…。
好き…。
好き…。
好き…。
ボクちゃんと先生は、大好き同士(どうし)…。
好き…。
好き…。
好き…。
これはおまじないの言葉…。
ボクちゃんの心の中に、ふか~く…沈み込でいくよ?
ポカポカとした温かい、火照(ほて)りだけを残して…。
体中(からだじゅう)の力(ちから)が、どんどん抜けてゆく…。
けれどそれがボクちゃんにとって、不思議と心地(ここち)いい…。
《ボク ……》
ほら、この音。
《パチン 指を鳴らす》
先生が5(いつ)つ数えて指を鳴らすと、もうボクちゃんは…今まで誰かに言われた「イヤなこと」を、ぜ~んぶ忘れてしまう。
そのかわりに先生の言葉だけは、どんなことでも…「受け入れられる」ようになるの。
《ボク ……》
先生のことが好きだから…。言われている通りにしていることは、気持ちいいこと。
ただそれだけ…。当たり前のことだよね?
《ボク うん…》
ふふっ。
そう、ボクちゃんはいい子。
5(いつ)つ数えるよ?
5(ごぉ)、4(よん)、3(さん)、2(にぃ)、1(いち)…。
《パチン 指を鳴らす》
今から先生がボクちゃんのことを、いっぱい愛してあげる。
ガラス細工で出来た無垢(むく)な心を、とっても大切に扱うように…可愛がってあげるね?