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新たな卵袋

(産卵を終えたオスの犠牲者に話しかけている。冒険者(聞き手)はその様子を少し離れた岩陰から見ている状態) んっふふ、いいわぁ、綺麗に育った私の卵、しっかりと全部産んでくれたわね。 ふふ、ちゃんと大きく育ってるし、これならもうすぐにでも孵化するわ。 あなたも、長い間卵袋の役目を務めてくれて、ご苦労様。 産卵しながらの人生最後の射精、楽しんでくれた? まぁ、もう私の声も届いてないでしょうけどね。 ふふ。幸せな顔で息絶えちゃって。 嬉しかったでしょう?普通の人生じゃ絶対に味わえないような幸福感と絶頂感に包まれながら死ねたんだから。 私の卵を孕む為に生まれてきてくれて、ありがとう。 あなたにはまだ卵から孵った子供達に栄養として食べられる役目もあるわよ。 死んだ後まで私の役に立てるなんて、本当に、幸せよねぇ? さて、卵は大事にしまっておいて、と。 (岩陰に隠れている冒険者に気づきつつ独り言のように) それにしても、私もツいてるわねぇ。 だって、たった今産卵用の卵袋に使っていたオスが役目を終えて死んで、 次の獲物を誘い込まないといけないって思っていたその矢先に、こうして新しいオスが都合良く捕まりに来てくれたんだから。 (明確に冒険者に対して語りかける) ねぇ?そこのあなた? んっふふふふ。 気づいてないとでも思ってた? この洞穴は私の巣穴だもの、至る所に人間の目では捕らえられない極細の蜘蛛の糸が張り巡らされているの。 つまり、あなたがどこから入ってきて、どうやってここまで来たか、全部私に筒抜けってこと。 さっきからそこの岩陰でコソコソとこっちを窺っていたのもね。 大方、行方不明者が頻発しているこの洞穴の調査を依頼された冒険者、ってところかしら? いいわ、今そっちに行ってあげるから、大人しく待ってなさい。 (苦笑するように) あらあら、大人しくって言っているでしょう? 逃げようとしたって無駄よ。私の糸のセンサーに何度も触れながらここまでやって来たあなたは、それだけ糸に絡め取られてきたということ。 ほら、何重にも糸が重なっている今なら見えるはずよ。目を凝らしてよーく見てみなさい。自分の腕にも、脚にも、うっすらと糸が纏わりついているのが見えるでしょう? 私の糸にそれだけ絡められた以上、私がちょっとその気になって糸を引き締めれば身動きなんて取れなくなるのに、それでも逃げようともがくものだから余計に絡まって、動きがとれなくなっていって。そして哀れにも私に捕まってしまう。 ふふふ。捕まった獲物は皆そうして自分で自分の首を締めていくの。 あなたも、他のオス達と変わらないみたいね。 (冒険者の元へたどり着いて。若い男だと知り嬉しそうに) はい、お待たせ。へぇ、思ったより若いじゃない。 ここまで来るだけあって体力もありそうだし、これなら元気な子を仕込めそうだわ。 そしてその胸のマーク、やっぱり冒険者ね。 ミイラ取りがミイラに、って言葉があるけど、今のあなたはまさにその状態。 さっきあなたが見ていた光景、お尻から私の卵を産みながら絶命したあのオス。あなたもあれと同じようになるの。 (逃げようともがく冒険者を面白そうに眺めながら) ふふ、もがいても無駄だって言っているのに、そんなにジタバタして。 そんなに逃げ出したいのなら、いいわ。見ていてあげるから、もう少し頑張ってみなさい。 気の済むまでそうして暴れて、自分がもう絶対に逃げられない、無力な獲物になってしまったという事をよく自覚するといいわ。 ふふ、んっふふ、ふふふふ。 (諦めた様子を見て、楽しい出し物が終わってつまらなく感じるように) あら、もう諦めちゃうの?そう。 でも仕方ないわよねえ。もがけばもがくほど、糸にがんじがらめにされて、今のあなた、もう全然身動きできなくなっているものね。 それじゃあ、獲物が大人しくなったところで、巣の奥まで連れて行ってあげる。 ふふ。引きずったり何てしないから安心して。大事な大事な私の交尾相手。 そして子供達の母体になる体だもの。大切に抱えて持っていってあげるわ。 さぁ、こっちよ。 元気な子を産んでちょうだいね、あなた。んっふふふふ。

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