エピローグ~リンver.~
(外/風SE ダストボックスに入っていないときはSEアリ)
【 中央・近く 】
……彼を人として、人間としての生を全うさせてあげた。
私は人間という種そのものを愛している。
【 中央・多少やや右側と左側に動きながら 】
戦争の真っただ中、私はほんの些細な油断で死に直面していた。
しくじった……意外と人間やるじゃん。
力もないくせに、無いなりに道具を発明してさ。
こんな人殺しの戦争玩具を大量生産しちゃってさ。
……あぁ、私、死ぬのかな……
【 左側・遠め 】
「早くこっちへ!」
【 中央・近く 】
人間の若い男が、私の手を引き、助けてくれた。
【 右側・遠め 】
「いたぞ、こっちだ!」
【 中央・近く 】
少年兵の彼は言った。
「世界には様々な人種・思想・価値観の違いで国同士が争いあってる。」
「でもそれでも僕は人間が好きなんだ。」
「人でない君、どうか人間を嫌わないで欲しい。」
この人間は何を言っているのか意味が分からなかった。
(ダストボックを開けるSE)
「君はここに隠れていて。何があってもここから出てはダメだよ?」
(ダストボックスを閉めるSE)
(銃声SE)
しばらく銃声が続いて、スッと静かになった。
(ダストボックスを開けるSE)
どれくらいの時間がたっただろうか……?
私は路地裏のダストボックスから抜け出すと、
そこには穴だらけになった私を助けた少年の死体がそこに残っていた。
━━━━━━!!
声にならない声を私は上げた。
ここまで感情がゆり動かされたのはどれくらいぶりだろうか?
それほどまでに私は悲しみを感じていた。
人間は酷く醜く、欲にまみれた奴らだと認識していた。
だが私を救ったこの少年兵を見て、その考え・価値観は大きく変わった。
この男は人間だった。
そしてこの男を殺した奴らも人間だ。
目の前の物言わぬ肉塊になり果てた少年は言った。
「世界には様々な人種・思想・価値観の違いで国同士が争いあってる。」
「でもそれでも僕は人間が好きなんだ。」
「人でない君、どうか人間を嫌わないで欲しい。」
意味はわからずとも、私はその言葉を守ろう。
私は人間という種そのものを愛している。
だからこそ、私は主を人間として死なせてあげるのだ。
さて、次の主を探そうか。
私は人種族ではなく、ただの悪魔でしかなのだから。
<終わり>