1プロログ
(モノロ?グ風に)
暗い中に、ぼわっと光が見える。
父と母に挟まれて、両手をつながれ…そんなお祭りの帰り道、振り返った?社から漏れてる光みたいだ。
だけど、今、この?っ暗な通路から向かうのは、そんな楽しい場所じゃない。
地獄の底っていうのは、案外、こういうものなのかな…。
そんな風に思わせる…静かで聞こえてくるはずもないのに、どうしても耳から離れない、何かを見下して小さく笑う声。
それに引っ張られるみたいに、私??燃島えりな??は、足を踏み出した。
この名前は、父がつけたらしい。
けど、私は…ここではその名前で呼ばれない。
名付けた父と、その父にいいなりの母のせいで、消えた。
幼い頃は、ただ酒癖が悪い程度の父だったし、苦労ながらもまだ母にも笑顔があった。
だけど、数年前に起こった父の事故のせいで、全部がおかしくなったんだ。
父に過失はなかったけど、車でひっかけられた相手が悪かった。
半分、社会からはみ出してるような人が相手で、何の保証もしてくれない上に重めの障害だけが残って、父はあっさりと職から首を切られた。
そこから、父は酒にひたって、補償されるお金全部でギャンブルに入れ込むようになった。
パンコ、スロット…さらに高いレ?トのそれら…。
酒に溺れながら、母をなぐりながら、私を蹴りながら、父はごろごろと坂道を?がっていった。
最後には、反社会組織が経営する闇ギャンブルに手を出して、何の信用もない一般人が、絶対に返せない額の借金を背負っていた。
「そのカ?が私…」
普通は??プとかに沈むもんなんだろう。
けど、残念ながら、私を売り飛ばしたと同時に、夫婦ともども蒸発した人たちが背負わせたそれは、そんな悠長な事をやってたら、私の商品価値が消えても追いつかないものなわけだ。
保険金詐?なり何なり、やり方はあるんだろうけど、相手は私に何かを見いだしたみたいだ。
学校時代の体?部での記?でも調べたんだろうか…私は、?動?経だけはとても誇れるものを持っていた。
そこで、やれと飲まされたのが、金持ち相手の闘技場での見せ物…わかりやすく言えば、闇プロレスみたいなもの。
私のような女が、屈強な男相手に立ち回る姿を見て、笑う出し物。
殺す以外は何でもあり…?がり落ちた女と獣みたいな男とのそれって、絶対安全なとこから見下ろしてる人たちにとっては、どんなものなんだろう。
競走馬の繁殖…動物?の見学…自分たちが味わう必要はないけど、ヒトとしての??…生きるって事を思い出す行為…まぁ、何でもいいや。
さぁ…呼んでる…行かなきゃ。
私を私の名前じゃないもので呼ぶ場所に。