Track 3

3.人形

あ、おはよーございます。休日ですねぇ、うれしいですねぇ、ふふふ。 もうもう、朝っぱらから僕の顔見たいだなんて、ホラーマニアですか貴方はぁ。 ......にょあッ。も、も~!また可愛いって!可愛いってぇ! その一言もらうたび、僕がどれだけ血を吐きそうになってるか分かります? しんどいッ!ってなるんですよ、まったく。 じ~~......そんなに可愛い可愛い言っちゃうお口、まさかまさかまさかまさか、 周りのひとにもぉ~、気軽に言ってるんじゃないでしょうねぇ~......。 絶対モテますよね。モテ杉モテ男ですよね。 だってやさしいし、相談とかすごい乗ってくれるし、......かっこいいし、 モテ要素だらけじゃないですか。じと~~......。 知りませんよぅ?好きとか愛を数値で見ることはできませんけど、 僕は大体、貴方の「1可愛い」ごとに「100好き」ぐらいなんですからね。 もう多分、一億好きくらいになってるんで、 それがどういうことかお分かりですか。 貴方が例えば、クラスメイトの女の子と一緒に帰ったとします。 僕がそれを見たとします。もうヤバイです。 白目剥きながら奇声上げながら、身体中の穴という穴から血を噴きながら、 百獣の王の如くその子に駆け寄って......全力で土下座します。 僕のかれぴっぴ奪わないでください~~~~!!って......。 ......ちょッ、鼻で笑った!今鼻で笑ったでしょ! むきーっ!馬鹿にされたッ。馬鹿にされたぁッ。かれぴっぴ意地悪だぁ~! うがぁあああッ、ドォルはもう、腐りますッ。腐乱ドォル再誕ですッ再誕ッ!......へ?......ぁあ、由来ですか?言ってませんでしたっけ。 ......へ?......ぁあ、由来ですか?言ってませんでしたっけ。 ほらあの、人形です。人形のドール。 苗字が姫神......で、名前が縫子だから、姫、で、縫い、で、 お姫様......縫う......「あ、なんか人形っぽいイメージ!」、みたいな。 ......うぅわぁなんかめちゃくちゃキモくないですか僕。 なにがお姫様だよって感じだ......。すっごいナルシストみたいな名前じゃん。 いえあの、なんとなくでつけて、そればっかり名乗ってたから、 もう由来とかまったく気にしてませんでした。ひとつの概念と化してました。 ......ぉ、ア。 ハッ......。ちょっと待って。待ってください。 今すっごい恥ずかしいこと考えちゃいました。口に出したら黒歴史確定。 寝るとき思い出して脚バタバタしちゃうレベルのやつです。 ダメです言いません。言うわけにはいきません。人格が崩壊します。 貴方に裸を見られるレベルで恥ずかしいやつです。 いやいやいやいや何言ってんの僕。今の発言こそやべーやつだぁぁうぁぁ......。 こ、こらァ。ニヤニヤしちゃダメ。忘れて。あれは忘れてくださいね、はは。 分かりました言います。でも貴方の反応次第では、喉を切り裂く覚悟です。 すぅー......はぁー......。 つまりですね。こういうことです。 僕はッ。うぅッ。僕、僕はッ......、 僕は貴方の人形であり、貴方のお姫様でもあるんじゃないでしょうかッ! オヒョヒョヒョヒョヒョヒョウヴォーーーッ!! 今世紀最大のノンフィクションデッドオブファイヤぁああぁああッ! いやぁぁああぁッ、生まれたことを後悔ッ!生きッ恥じッドォル! うぁあああー、うーあー、言っちゃった言っちゃった言ってしまった。 あぁーどうしよ両目くり抜こうかなもう。無我の境地に達しそう。 ふぅぅ......ふぅう......落ち着け落ち着け、落ち着くんだ......。 まだ貴方の顔見てないですけど、でもでもでもでも、大体予想できます。 ニヤニヤしてますきっと。愛玩動物を見る目してますきっと。 うぎゅぅう、しかし一度言ってしまったことは取り消せないッ......、 取り消せない、今の言葉ッ......!僕は時代の敗北者なんだッ......。 ......ちらっ。ちらちらっ。......え? ぇ、あ、どうしました......?なんで真顔......、......あのぅ......? わっ、ぁ、だ、大丈夫です?なんかその、上の空っぽいというか。 僕があまりにアレすぎて、ドン引き......しちゃいました?......違うの? じゃあ、その......ぇ、え?あ、は、はいッ。すみません、分かりました。 それじゃ、夜にまた。......き、今日も一日、がんばりましょ♪