4.未来
ガチガチガチガチ......、こ、こんばんは。どうも。どうもドォルです......。
いやぁ夜はほんと、冷えますねぇ......。僕の部屋、氷河期みたいになってます。
まあ僕の存在自体がね、クソ寒ギャグみたいなもんなので、
むしろ僕が冷凍機ですよ。恐竜の絶滅の原因はきっと前世のドォルです......。
ああ僕、厚着が苦手なんですよ。なるだけ肌を出していたい......ぁ、ぁ、
違いますよ変な意味じゃなくて、ほら汗っかきなんで。ええ。
どうでもいいですけど、寒い部屋で薄着で毛布くるまって寝るの、
めっちゃ最高じゃないですか?くるまった瞬間オヒュ~~~ってなって、
ムヒュルヘヘヘみたいな変な笑い声出ちゃいませんか?僕だけ?
......んぅ?どーしました?あれ、なんか顔色......悪くないですか?
僕みたいになってませんか......?え、ほんと大丈夫?風邪かなっ......?
......んん。どうしたの?今朝も......ちょっと、具合悪そうだったし。
なんか......元気......ないです。
ヤなことでもありました?あ、犬のうんち踏んじゃいました?
ってそれは僕でしょ~ッ!......、......あの、ほんと、悩みとかツラミとか、
あるんだったら言ってください。僕、力になります。
微妙すぎる微力ですけど、それでも、貴方の力になりたいから。
......いつも、いっつも......助けてもらってます。覚えがないとは言わせません。
貴方にどれだけ助けられて、どれだけ救われたか。
明日世界が終わったって、僕の中で貴方は終わらないんですよ。
それぐらい僕は......貴方を、......。
ん、はい。大丈夫です。人生相談でも進路相談でも、なんでも言ってください。
......ぇ、あ、ほんとにそういう相談ですか。はい。
......ええ、そうですね。僕たち、そろそろ高校卒業ですよね。
どういう道に進むべきか、迷ってるんですか?ふむふむ。
僕は一応、進学します。はい。
これを進学の理由って言ったら、周りで頑張ってるひとに失礼かもですけど、
やりたいことが見つかってないから......だったりして。
うん。なんかこう、僕だけかもしれないけど、いつも漠然と生きてて、
将来何になろうとか、どういう仕事につこうっていうの、ないんです。
実は、最近の僕はそれを探してます。
お習字したりジム通ったり、っていうのも、その目的があったりなかったり。
経験したことない経験は、また新しいものが見えたりしないかなって。
まあ、それもだいぶ漠然としてますけどね。
......僕ね、貴方と出会うまでは、無意識に何かを「待ってた」んだと思う。
ぜーんぶ受け身です。いじめも何も、僕はいつも受けてばかりで、
誰にも......与えようとか、まったくしてきませんでした。
棚から牡丹餅とか、果報は寝て待て、って言うじゃないですか。
貴方との日々を過ごしてるうちに、気づきました。
牡丹餅も果報も、努力や、一歩前に踏み出す......勇気、みたいなもの、
それを実践してるひとにしか来ないんだ、って。
貴方とネットで知り合って、......通話っていう、初めてを頑張ったのも、
いや、あれは僕の気まぐれなのかな......、でも、今までしたことないことを、
しよう、って踏み切ったとき、世界にね、一歩近づけた気がしました。
......大げさですかね。でも、僕の中では......とってもすごい事でした。
通話をしなかったら、貴方とも......きっと恋人になれなかったもん。
やろう、しよう、っていう勇気は......僕に、幸福をくれました。
それを初めて僕に教えてくれたのは、貴方ですよ?
貴方は僕より先に、それを持ってたんです。だからきっと大丈夫です。
しかもっ、ひとりじゃないですッ。僕がいますッ。
僕、ずぅうーーーーーっと貴方と一緒にいます。いますよ。
永遠にいますッ。フォーエバーですッ。
......はいっ♪よかった、笑ってくれた。えへへ。
もー、大丈夫ですって。迷惑なんて言ったら、
僕なんか貴方の一億倍は迷惑かけてますからね。お気になさらずっ。
ほら......貴方と僕は、今はきっと、すごく遠いところにいるけど。
でも、時計は一秒ずつ過ぎてますよ。同じ時間を生きてるってことです。
それだけは絶対に、絶対に間違えない事実ですから。僕たち、一緒なんです。
僕は生きてます。貴方も生きてます。
だからね、だから......、......あれ、あれれ?あは、あはは、なんだろ、
どうして涙が。ぁあ、ぁぁ、あれですかね、柄にもないこと言いすぎて、
脳ミソオーバーヒートしちゃいましたかね、冷凍機能発動しちゃいましたね。
うぅ、う、......いえあの、スミマセン、僕、僕、貴方はいつも、その、
強いひとだと思ってたから、貴方も、ええとその、弱いところもあるんだ、
って、うう、でもこれ、これは、嫌な涙じゃないです。ほんと、違います。
いじめられたときの涙とは全然ちが......ぅ、うッぅぅ、ぁあッ......グスッ、
ぁあッ......ぁぁぁあ......。ごめんなさい、ごめんなさい......。
はぁ......はぁ......はぁ......、......。
......僕、変わらなきゃって、貴方に追いつかなきゃって、躍起になってました。
でなきゃ、貴方がどんどん遠くにいって、
霧みたいに消えちゃうんじゃないかって、変なこと考えたんです。
心配性......です。でも、貴方も僕と同じ、苦悩や葛藤を抱えてるんだって、
そう思えたから、しかも貴方はその弱味を、僕に見せてくれたから、なんか......安心、しちゃった。
僕、貴方と一緒にいていいんですよね。彼女で、恋人で、パートナーで、いいんですよね......。うぅ、ぁぁぁ......。
......ありがとう。
そればっかりというか、それしか言えないけど、ありがとう。
好き。......大好きだよ。愛してるし、もっと愛したいし、愛してほしい。
僕のことも、もっとたくさん、たくさん......好きになって。
僕も貴方のこと、たくさんたくさん、好きになるよ。
だってまだまだ、貴方の知らないところ......数え切れないくらいあるもん。
僕は、ドォルっていうもうひとつの顔で、貴方と知り合いました。
今度は、......縫子、姫神縫子を、知っていってほしいです。
これからも、どうか......ふ、ふつつか者ですが、宜しくお願いいたしますッ!