トラック01 『サボり魔な猫又学生の日常』
先生こんにちは。また保健室へサボりに……じゃなくて休みに来ましたー。
ベッドで休んでいる人は……いません、っと。
ふふっ、今日も先生お一人ですねー。
えっと……それじゃあ保健室の先生らしく、いつもの問診をお願いします。
……はいっ、2年A組25番・白猫 愛里(はくびょう あいり)です。
物の怪(もののけ)の猫又です。
体調はー……いつも通り、何ともないですねー。
猫又だから日中は眠たいくらいですかね? ふぁああぁ……。
いやあ。そもそもの話なのですが、昨日深夜までソシャゲをプレイしてしまいまして……。
あと単純に、お昼の時間帯が苦手というのもあります。
寝る子と書いて、寝子(ねこ)と呼ぶのが、猫の語源という説もあるくらいですから。
というわけでお昼休みは、保健室のベッドで寝させてもらえたらなーと。
そしてあわよくば、次の授業もサボってー……スヤスヤと寝させてもらえたら……ってにゃあっ!?
い、今、私の尻尾を握ろうとしましたね……?
猫又のしっぽは、おさわり厳禁ですよー。
まあ……本当に優しくしてくれるのなら、先生限定でおさわりオッケーですが。
とにもかくにも、私は疲弊した心身を保健室という楽園で休めたいのです。
あ、いえ、物の怪だからって、のけ者にされているとかそういう訳ではなく。
皆が真面目に授業を受けている間に、保健室のベッドで寝てソシャゲをプレイしたい……
……って、待ってください! 冗談です!
冗談ですから、また尻尾を触ろうとしないでください~。
でもソシャゲって良いですよー。
人も物の怪も関係ない、リアルマネーかリアルタイムを捧げた者同士が繋がる夢の空間なのです。
私はあまりお金を持っていないので、時間を捧げている訳ですが。
主に睡眠時間とか勉強時間とか……ってにゃあゃああー!?
ほ、本当に尻尾を触ろうとしましたね!
なんて恐ろしい先生……。
おっと、弁明ですか? ふむふむ……。へー、愛の鞭(ムチ)ですかあ。
良い言葉ですが、それなら鞭だけでなく、愛もくださいっ。
ほら、「飴と鞭(アメとムチ)」って言うじゃないですか。
先生には飴が足りないです。ほらほら、私に飴をくださいよー。
……おっと、今日も先生、自炊のお弁当を食べるんですか? 良いですねー。
私はと言えば、人混みが苦手なので食堂には行きたくなくてですね。
実は毎回、お昼ご飯は抜いちゃっているのです。
なんですか、先生? 自分のお弁当を私に差し出したりなんかして。
……ま、まさか、飴じゃなくてお弁当を渡すつもりですか?
にゃぁぅー……。正直お腹は減ってますけどぉ……。
まあ良いでしょう。
尻尾を何度も触ろうとした蛮行も、先生のお弁当で許してあげましょう。
でも先生の食べる分が無くなっちゃいませんか?
……ほう、学生がお昼を抜くなんて不健康なことは見逃せないと?
ふっふっふ、私は遠慮がないですからね。全部食べてしまいますよ。
もし良ければ明日以降も、お弁当を食べてあげても良いですよーなんて。
……えっ? 「どうぞどうぞ」……って本気ですか!?
私の分まで毎回お弁当を作るとか絶対大変ですよね?
んー……、一人分作るのも二人分作るのも大して手間は変わらない?
そんなものですかねー??
あっ! なんですかそのにやにやした顔は! さては……!
「こんなことも分からないなんて、ろくに料理したことないな」って馬鹿にしてますね~!
良いんです。私には料理が得意な、恋(れん)ちゃんっていう可愛い妹がいますから!
……こ、今度はかわいそうな子を見る顔してる!
「料理までサボっているのか……」って憐れんでますよね!?
まぁ先生がお弁当まで作ってくれるのなら、
多少は授業のサボり癖を改めても良いかもしれませんねー。
ふっふっふ、猫又だからって簡単に餌付けされると思ったら大間違いですけどねー。
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あっ。次の授業が始まっちゃいましたね。
今から行っても間に合わないですし、先生から貰ったお弁当を食べながらですねー。
ゴロゴロ寝てスマホでソシャゲをプレイしてー……。
ってふぎゃーっ!! 今度はホントに尻尾を握ってきましたね!?
わかりましたよっ。急いでお弁当を頂いてから授業に戻りますからっ!
尻尾は! 尻尾は許してくださいーっ!