あなたが眠った後は……
「【主人公の寝顔を見つめ、髪を撫でながら】ふふふ……やっぱり、眠っちゃったんですね。
寝ちゃうと……お話しできなくて。
少し、残念ですけど。
さすがに、二回もぴゅっぴゅしたら、疲れちゃいますよね」
Se:立ち上がり、ド—ルハウスまで歩いていく足音
※ここから、すべてヤンデレ状態で
「【安堵したように。だが冷たい声で】それにしても。気づかれなくて、良かった。
【自己嫌悪するように、ひときわ冷たく】だって……
あなたが素敵だと言ってくれた、正しい世界には。こんな側面もあるんです」
Se:
『ぱたん』と箱を開ける音
紫、ド—ルハウスの奥にある箱を開ける。
その中には、『ボロボロに傷つけられ、ひどい姿になっている男と女、少女たち(父親·父親の愛人·自分を裏切った友人の象徴)』がある。
「正しい世界。私にとってそれは、悪人に等しく『死』を与える世界です。
【高圧的で冷たい声。これまで発したことのない類の】たとえば、子どもに黙って愛人を作った父親。
正妻を気取る、面の皮の厚い女。
被害者ぶる、嘘つきたち。
そんな人たちを……こんな風に」
Se:ぱきっ、という、何かが折れる音
「【無感情に淡々と】だって……人の道を外れたものが、人が作ったル—ルに守られたいって思うなんて、おかしいですよね。
だから私……
人間が他の動物にするみたいに……
悪いことをして、人間じゃなくなった人は。
こうやって。
処分してしまって、良いと思うんです」
Se:ぱきっ、という、何かが折れる音
「そう……私ならできる。いつでも。
『あの人たち』に、正しい処罰を下すことが。
誰にも悟られずに、きっと。
【急に悲しそうな、泣きそうな声で】ねえ……ご存知でした?
あなたの恋人は……本当は、いつもそんなことを考えているんですよ。
【自嘲して、高ぶった声で】まったく、何が『やましいことなんて何もない』でしょう?
【悲痛に】私の存在そのものが、本当は……
でも、あなたは気づかない。
気づかないというよりも……可能性自体、考えることが、ないんですよね。
【泣きそうな声で】私を……心から信じてくれているから。
私のことを……昔新聞で見たままの、真面目で誠実な、いい子だと思ってくれているから。
そんなあなたと居ると……私、本当にそうなってみたいって、思うことがあるんです。
『悪い人は、みんな罰を受けるべき』って、いろんなものに。
本当に、色んなものへ復讐の機会をうかがってることすら忘れて。
一点の曇りもない、完全に正しい、貴方に本当にふさわしい人間になりたいって。
【涙ぐみながら】本当に……そう思うんです……」
Se:ぱたん、と箱を閉じる音
「だから。今はまだ……このままでいいって、思うことにしました。
『あの人たち』には何もしない。
これで正しいのかは……自信がないけど。
ただ、あなたと幸せに生きる私でいたい。
今は『正しい世界』を作ることより、自分の幸せを大切にしたい。
だから、私が握っている『あの人たち』の人生を叩き壊せる、色んなもの。
あれはまだ……使いません。
ふふっ……やっぱりあなたって……すごいです。
見ず知らずの人のことまで……まったく気が付かないうちに、守って、救っちゃってるんですから」