Track 7

あなたが眠った後は……

  「【主人公の寝顔を見つめ、髪を撫でながら】ふふふ……やっぱり、眠っちゃったんですね。   寝ちゃうと……お話しできなくて。   少し、残念ですけど。   さすがに、二回もぴゅっぴゅしたら、疲れちゃいますよね」   Se:立ち上がり、ド—ルハウスまで歩いていく足音   ※ここから、すべてヤンデレ状態で   「【安堵したように。だが冷たい声で】それにしても。気づかれなくて、良かった。   【自己嫌悪するように、ひときわ冷たく】だって……   あなたが素敵だと言ってくれた、正しい世界には。こんな側面もあるんです」   Se:   『ぱたん』と箱を開ける音   紫、ド—ルハウスの奥にある箱を開ける。   その中には、『ボロボロに傷つけられ、ひどい姿になっている男と女、少女たち(父親·父親の愛人·自分を裏切った友人の象徴)』がある。   「正しい世界。私にとってそれは、悪人に等しく『死』を与える世界です。   【高圧的で冷たい声。これまで発したことのない類の】たとえば、子どもに黙って愛人を作った父親。   正妻を気取る、面の皮の厚い女。   被害者ぶる、嘘つきたち。   そんな人たちを……こんな風に」   Se:ぱきっ、という、何かが折れる音   「【無感情に淡々と】だって……人の道を外れたものが、人が作ったル—ルに守られたいって思うなんて、おかしいですよね。   だから私……   人間が他の動物にするみたいに……   悪いことをして、人間じゃなくなった人は。   こうやって。   処分してしまって、良いと思うんです」   Se:ぱきっ、という、何かが折れる音   「そう……私ならできる。いつでも。   『あの人たち』に、正しい処罰を下すことが。   誰にも悟られずに、きっと。   【急に悲しそうな、泣きそうな声で】ねえ……ご存知でした?   あなたの恋人は……本当は、いつもそんなことを考えているんですよ。   【自嘲して、高ぶった声で】まったく、何が『やましいことなんて何もない』でしょう?   【悲痛に】私の存在そのものが、本当は……   でも、あなたは気づかない。   気づかないというよりも……可能性自体、考えることが、ないんですよね。   【泣きそうな声で】私を……心から信じてくれているから。   私のことを……昔新聞で見たままの、真面目で誠実な、いい子だと思ってくれているから。   そんなあなたと居ると……私、本当にそうなってみたいって、思うことがあるんです。   『悪い人は、みんな罰を受けるべき』って、いろんなものに。   本当に、色んなものへ復讐の機会をうかがってることすら忘れて。   一点の曇りもない、完全に正しい、貴方に本当にふさわしい人間になりたいって。   【涙ぐみながら】本当に……そう思うんです……」   Se:ぱたん、と箱を閉じる音   「だから。今はまだ……このままでいいって、思うことにしました。   『あの人たち』には何もしない。   これで正しいのかは……自信がないけど。   ただ、あなたと幸せに生きる私でいたい。   今は『正しい世界』を作ることより、自分の幸せを大切にしたい。   だから、私が握っている『あの人たち』の人生を叩き壊せる、色んなもの。   あれはまだ……使いません。   ふふっ……やっぱりあなたって……すごいです。   見ず知らずの人のことまで……まったく気が付かないうちに、守って、救っちゃってるんですから」