マッサ—ジしてさしあげます
Se:カラカラカラ……とお風呂場の扉を開ける音
Se:カラカラカラ……とお風呂場の扉を閉める音
Se:ぱさ、とタオルを差し出す布の音
「どうぞ。タオル、こちら使ってください。
【小声で】……おちんちん。もう、さすがに、元に戻ってますね。
【『まだしたいの?しようか?』と言われ】もう。さすがにもう……寝る時までは……しませんよっ。
【『寝るときはしていいの?』と聞かれ】はい……もう、降参します。正直に言います……してくれなくちゃ、淋しいです。
今は少しだけ、お休みをいただきますが……明日おうちに帰られるまでは、いっぱいしてほしいです。
私……今は信じられないですけど。
あなたとお付き合いするまでは、あまり、男性にいい印象がなかったんです。
だから……こんな気持ちになるなんて、時々、私じゃないみたいです。その……
【声が小さくなり】セックス、だって。
『結婚するまではしない』、って思ってたんですよ。今となっては、別人の意見みたい。
【◆】そもそも、結婚する意思から薄かったくらいなんです。
でも、よぉく考えたら、不思議ですよね……
男の人が苦手なのに、結婚するつもりだって、あまりなかったのに。
『自分はきっと結婚するだろう』って、信じ込んでるなんて。
【◆】もしかしたら……私。あなたに出会えること……予感してたのかもしれません
【『だったら嬉しいな』と言われ】はい。本当にこうして一緒にいられて……私も嬉しいです。
あの……改めまして、よろしくお願いしますね。
『紫は改めすぎ?』い、いいじゃありませんか。
何度だって確かめたくなるんです……
あ、ドライヤ—は私の部屋なんです。着替えも済んだようですし、行きましょうか。お忘れ物は大丈夫ですか?」
Se:階段を上る 2 人分の音
「【『部屋に入るのが楽しみだ』と言われ】えっ?に変わったものはありませんよ。
私の部屋ですか……?
あの、そんな前にお話した通りです。基本は、普通の、このくらいの年の子の部屋、だと思うんですけど。
三歳の時から一緒の、お人形のリコちゃんと、その仲間たちがいます。
【『自分よりも付き合いが長い人形たちだね。自分は紫の人形たちに認めてもらえるといいな』と言われ】ふふっ……
【◆】あなただったら、人形たちにも、きっと好かれます。
【嬉しそうに、からかうように】それにしても『紫の仲間に認めてもらえるといいな』なんて。
あなたってそういったところ、結構、女の子っぽいっていうか……
ごめんなさい。からかっているわけじゃないんです。
嬉しいんです。理解を示していただけて。
『この年齢にもなって、人形なんて……』っておっしゃる方もいますから。
【◆】でも、私には、とても大切なんです。
【◆】人形たちは、家族みたいに……ううん、それ以上に長い時間一緒にいる存在ですから。
【◆】私の想いを支持してくれる、とても大切な存在なんです。
【◆】彼女たちだけは、私の考え方に賛同して……
【◆一見普通のト—ンだが、不気味に聞こえるように】理想の世界を作る、お手伝いをしてくれるんです。
だから、あなたが会ってくれると聞いたとき、とても嬉しかったんです。
【◆『自分も人形たちの仲間になりたい』と言われ】ええ、ぜひ仲良くしてあげてくださいね」
Se:部屋の扉を開ける音
「どうぞ。こちらです。はい。そちらへおかけください。お布団、もう敷いてありますから。いつ眠ってしまっても大丈夫ですよ。
右のお布団へどうぞ。
【『淋しくなったら隣の紫の布団に入ってもいい?』と言われ。嬉しそうに】……もう。はい、いつ入ってきてもいいですよ。お待ち、していますから。
【主人公が人形たちの居場所に気づき】あ、はい!
奥にあるのが、ド—ルハウスです。
こちらがリコちゃんたちです。ふふ、ご対面、ですね。
はい!
子どもの頃からの趣味で……今では街ひとつのスケ—ルになりました。
【高揚して】私の夢は、このド—ルハウスのような『正しい世界』を作ることです。
【◆】善い人間には、あふれるほどの幸福を。悪い人間には、然るべき裁きを。そんな世界だったらいいのにって……いつも思うんです。
【◆】でも、この世界は、ただそれだけのことが叶えられない……
【◆】現実は、とても不条理だから。いつも、我慢するのは……正しい側の人間だから。
【◆憎しみのこもった声で】……それが時々、本当に許せないことがある」
主人公『自分も、紫の大切な世界を守る手伝いをしたい』と言う。
「本当ですか?
ありがとうございます……
あなたは本当に……優しいですね。いつも、弱い人の味方をして、守ってくれる。
【◆】みんな、あなたみたいな人だったらいいのに。
【◆】でも。もう、守っているんですよ。あなたは。あなたがあなたであるだけで、たく
さんの人を救っている。
【少しの沈黙の後、妙に明るく】そうだ!
それより……私、今日はお風呂のえっち以
外にも勉強してきたことがあるんですよ。
横になって、うつ伏せに寝てください。マッサ—ジして差し上げます。
これはね。Web だけの勉強じゃありませんよ。本や、DVD まで観ちゃいましたから。
どうぞ安心して身体をお任せください。
【『お任せするよ。さすが、真面目な紫だね。マッサ—ジの先生にもなれちゃいそう』と言われ】そうですよ?
真面目に学んだんです。マッサ—ジの先生、目指す勢いで頑張りましたから。
よいしょ……こうやって、ぐ—っと、伸ばすんです。
肩甲骨を伸ばしてもらうと、すごく気持ちがいいですよね。
私、肩こりがひどいので……この辺も、好きです。首と頭の付け根の筋肉……
頭痛のツボですね。
ふふふ。気持ちいいですか—?
よかった、嬉しいです。やっぱり、学ぶのっていいですね。
あなたにもっといろんなことをしてあげられる……
本当に、今日は少し、分かった気がします。
私みたいな人間でも……
【◆】あなたみたいな、正しい人であれば。
ちゃんと、弱いところも、だめなところも見せ合えるんだって。
これでも、結構恥ずかしいんですよ。
いやらしいサイトを見ているだなんて本当は知られたくないし……
『性欲なんてありませんよ—』って顔をして、格好つけたい気持ちだってあるんです。
でも、あなたはそんなことしないから。
いつでも正直に気持ちを伝えてくれるから……
今日は私もそうしたかった。
【照れたように早口で】……しかもそうしたら、気持ちいいし……
だからそれに気づくことができて、今日は本当に嬉しかったです。
いつも、ありがとうございます。
ところで……あれ?
もしも—し?
あの……もしかして、眠ってしまいました?」