Track 6

マッサ—ジしてさしあげます

  Se:カラカラカラ……とお風呂場の扉を開ける音   Se:カラカラカラ……とお風呂場の扉を閉める音   Se:ぱさ、とタオルを差し出す布の音   「どうぞ。タオル、こちら使ってください。   【小声で】……おちんちん。もう、さすがに、元に戻ってますね。   【『まだしたいの?しようか?』と言われ】もう。さすがにもう……寝る時までは……しませんよっ。   【『寝るときはしていいの?』と聞かれ】はい……もう、降参します。正直に言います……してくれなくちゃ、淋しいです。   今は少しだけ、お休みをいただきますが……明日おうちに帰られるまでは、いっぱいしてほしいです。   私……今は信じられないですけど。   あなたとお付き合いするまでは、あまり、男性にいい印象がなかったんです。   だから……こんな気持ちになるなんて、時々、私じゃないみたいです。その……   【声が小さくなり】セックス、だって。   『結婚するまではしない』、って思ってたんですよ。今となっては、別人の意見みたい。   【◆】そもそも、結婚する意思から薄かったくらいなんです。   でも、よぉく考えたら、不思議ですよね……   男の人が苦手なのに、結婚するつもりだって、あまりなかったのに。   『自分はきっと結婚するだろう』って、信じ込んでるなんて。   【◆】もしかしたら……私。あなたに出会えること……予感してたのかもしれません   【『だったら嬉しいな』と言われ】はい。本当にこうして一緒にいられて……私も嬉しいです。   あの……改めまして、よろしくお願いしますね。   『紫は改めすぎ?』い、いいじゃありませんか。   何度だって確かめたくなるんです……   あ、ドライヤ—は私の部屋なんです。着替えも済んだようですし、行きましょうか。お忘れ物は大丈夫ですか?」   Se:階段を上る 2 人分の音   「【『部屋に入るのが楽しみだ』と言われ】えっ?に変わったものはありませんよ。   私の部屋ですか……?   あの、そんな前にお話した通りです。基本は、普通の、このくらいの年の子の部屋、だと思うんですけど。   三歳の時から一緒の、お人形のリコちゃんと、その仲間たちがいます。   【『自分よりも付き合いが長い人形たちだね。自分は紫の人形たちに認めてもらえるといいな』と言われ】ふふっ……   【◆】あなただったら、人形たちにも、きっと好かれます。   【嬉しそうに、からかうように】それにしても『紫の仲間に認めてもらえるといいな』なんて。   あなたってそういったところ、結構、女の子っぽいっていうか……   ごめんなさい。からかっているわけじゃないんです。   嬉しいんです。理解を示していただけて。   『この年齢にもなって、人形なんて……』っておっしゃる方もいますから。   【◆】でも、私には、とても大切なんです。   【◆】人形たちは、家族みたいに……ううん、それ以上に長い時間一緒にいる存在ですから。   【◆】私の想いを支持してくれる、とても大切な存在なんです。   【◆】彼女たちだけは、私の考え方に賛同して……   【◆一見普通のト—ンだが、不気味に聞こえるように】理想の世界を作る、お手伝いをしてくれるんです。   だから、あなたが会ってくれると聞いたとき、とても嬉しかったんです。   【◆『自分も人形たちの仲間になりたい』と言われ】ええ、ぜひ仲良くしてあげてくださいね」   Se:部屋の扉を開ける音   「どうぞ。こちらです。はい。そちらへおかけください。お布団、もう敷いてありますから。いつ眠ってしまっても大丈夫ですよ。   右のお布団へどうぞ。   【『淋しくなったら隣の紫の布団に入ってもいい?』と言われ。嬉しそうに】……もう。はい、いつ入ってきてもいいですよ。お待ち、していますから。   【主人公が人形たちの居場所に気づき】あ、はい!   奥にあるのが、ド—ルハウスです。   こちらがリコちゃんたちです。ふふ、ご対面、ですね。   はい!   子どもの頃からの趣味で……今では街ひとつのスケ—ルになりました。   【高揚して】私の夢は、このド—ルハウスのような『正しい世界』を作ることです。   【◆】善い人間には、あふれるほどの幸福を。悪い人間には、然るべき裁きを。そんな世界だったらいいのにって……いつも思うんです。   【◆】でも、この世界は、ただそれだけのことが叶えられない……   【◆】現実は、とても不条理だから。いつも、我慢するのは……正しい側の人間だから。   【◆憎しみのこもった声で】……それが時々、本当に許せないことがある」   主人公『自分も、紫の大切な世界を守る手伝いをしたい』と言う。   「本当ですか?   ありがとうございます……   あなたは本当に……優しいですね。いつも、弱い人の味方をして、守ってくれる。   【◆】みんな、あなたみたいな人だったらいいのに。   【◆】でも。もう、守っているんですよ。あなたは。あなたがあなたであるだけで、たく   さんの人を救っている。   【少しの沈黙の後、妙に明るく】そうだ!   それより……私、今日はお風呂のえっち以   外にも勉強してきたことがあるんですよ。   横になって、うつ伏せに寝てください。マッサ—ジして差し上げます。   これはね。Web だけの勉強じゃありませんよ。本や、DVD まで観ちゃいましたから。   どうぞ安心して身体をお任せください。   【『お任せするよ。さすが、真面目な紫だね。マッサ—ジの先生にもなれちゃいそう』と言われ】そうですよ?   真面目に学んだんです。マッサ—ジの先生、目指す勢いで頑張りましたから。   よいしょ……こうやって、ぐ—っと、伸ばすんです。   肩甲骨を伸ばしてもらうと、すごく気持ちがいいですよね。   私、肩こりがひどいので……この辺も、好きです。首と頭の付け根の筋肉……   頭痛のツボですね。   ふふふ。気持ちいいですか—?   よかった、嬉しいです。やっぱり、学ぶのっていいですね。   あなたにもっといろんなことをしてあげられる……   本当に、今日は少し、分かった気がします。   私みたいな人間でも……   【◆】あなたみたいな、正しい人であれば。   ちゃんと、弱いところも、だめなところも見せ合えるんだって。   これでも、結構恥ずかしいんですよ。   いやらしいサイトを見ているだなんて本当は知られたくないし……   『性欲なんてありませんよ—』って顔をして、格好つけたい気持ちだってあるんです。   でも、あなたはそんなことしないから。   いつでも正直に気持ちを伝えてくれるから……   今日は私もそうしたかった。   【照れたように早口で】……しかもそうしたら、気持ちいいし……   だからそれに気づくことができて、今日は本当に嬉しかったです。   いつも、ありがとうございます。   ところで……あれ?   もしも—し?   あの……もしかして、眠ってしまいました?」