はじめまして、お隣君♪
どちら様ですか~?
あらあら、お隣に越してきたので、そのご挨拶ですか。
そういえば今日、引っ越し屋さんがきてましたねぇ。
はじめまして~。
はい、はい~。
まぁ丁寧なご挨拶、ありがとうございます。
あらら、お土産も頂けるなんて~。
若い方ですね~私より年下かなぁ~。
…大学に通うために一人暮らしですか。
私も大学生なんですよ。
大学は?
あら~学部は違うけど、私の後輩になるんですね、お隣君♪
これ、お菓子ですか?
あら~地元の銘菓…嬉しいわ~♪
あ、引っ越ししたばかりじゃお部屋片付いてないでしょ?
せっかくお菓子もらったし、一緒に食べましょ。
ささ、あがってあがって♪
え、いいのかって、いいよ~これからお隣になるお隣君だし、大学の後輩でもあるんだから。
はい、いらっしゃいませです。
間取りはお隣君の部屋と同じでしょう?
正面のガラス戸の奥にテーブルがあるから、そっちで座って待っててね~、すぐにお茶入れて、そっち行くから。
そうそう、お隣君は、どこから?
へぇ~山がいっぱいの田舎?
いいじゃない~。
私、田舎大好きだよ~。
それにここも、そんなに威張れるほど都会じゃないしね~。ああ、でも大学の帰りに大概のものはそろうよ~。
今度一緒に帰りながら色々おしえたげるね~♪
それに比べたら何もない?
う~ん、田舎は何もないからいいんじゃないかなぁ~。
何もないから見えるもの、楽しいものだってあるよ~。
例えば?
そうだねぇ~…お隣君は、夜に空を見あげた事なんかある?
ある?
そっか~じゃあ、星や月が見える事が当たり前、なんだよね?
う~ん、都会はね~夜空を見あげる人なんか、そんなにいないと思うよ~。
だって、星も月もそんなに見えないから~。
夜空を見あげても何も楽しい事ないの…み~んな、誰かの灰色した背中を見て、鏡に映った自分を追うみたいに歩いてるだけなんだよ~?
ピンクに青、人工の光まみれで、そんな人ばかりの夜と、何光年か先にある、お星様のぴかぴか照らす夜道と、どっちが好き?
山の黒い影に見え隠れする、くっきり丸くて、優しい光のお月様、いいと思わない?
ほら、自分の産まれた場所が、誇らしくなったでしょ~。
都会みたいな遊び場は、ないかもしれないけど、お隣君が育った、大切な場所でしょ?
うんうん~♪
そうそう、故郷(ふるさと)は大事だよ~自分がいつになっても、何歳になっても、帰れる場所だからね。
はい、お待たせ~。
お隣君がくれたお菓子も出してきたよ、一緒に食べよう~。
よいしょっと…え、何で隣に?
う~ん…何となく?
嫌かな?
そんな事ない?
うん~よかった。ほら、隣のほうがあったかいし、声もよく聞こえるでしょ。
いい匂い?
お茶の匂い好きなの?
普通の緑茶だよ~。
え、違う…私がいい匂い?
そうなんだ~自分じゃ自分の匂いってわからないもんねぇ~。
お隣君が言うんだから、そうなのかなぁ~何だかちょっと、嬉しい、(笑う)ふふ。
あ、こうしたら、もっと匂いするかな~。
すりすり~すりすりすり♪
す~り、す~りすりすり~♪
すりすり~すりすり~♪
どう~、いっぱいする?
お隣君、すりすり気に入っちゃった?
じゃあもう少ししてあげるね。
す~りすり、すりすり~♪
すりすりすりすり、すり~すりすり♪
お隣君、私の匂いでいっぱいになっちゃうねぇ~。
あむむぐ、むぐむぐ…んっこのお菓子おいしいねぇ~。
求肥(ぎゅうひ)の食触は優しいのに、しっかりと餡(あん)の味が心に残る…きっとお隣君もこんな感じなんだね。
故郷の味って、そこに住んでる人そのものなんだよ~。
今度、私の地元のお菓子も食べさせてあげるね~、お母さんに送ってもらわなきゃ~。
あ、そうだ~。
今日は晩ご飯どうするの?
まだ台所なんか片付いてないよね。
それにお隣君、自炊派?
…自炊はこれからするつもり、と…ふむふむ、まだ初心者なのね~私、こう見えてもお料理得意なの。
本当に自炊していきたいなら、私が少しずつ教えてあげるね~。
…あら、いいお返事♪
じゃあ、今日の晩ご飯は、ここで食べて行ってね~。
ほら、私がお料理得意だって嘘だと思われるのイヤだもの~。
ね、ね?
うん、またいいお返事、お隣君♪
じゃあ、用意はじめよっか。
早速手伝ってみる?