0.プロローグ『私、アイドルになりたいです』
……先輩。
将来について、何か考えていますか?
もうすぐ、先輩は就活の時期、ですよね。
したいお仕事のイメージって……持っていますか?
…………。
……なるほど。
先輩にぴったりです。
ふふ。想像したら、とても……素敵だなって。思いました。
……え?
…………。
先輩に隠し事はできないですね……。
実は、私……
この前、スカウトされたんです。
アイドルをやってみませんか、って。
芸能事務所の、プロデューサーさんから。
それで、名刺も……渡されました。
……はい。スマホで、調べてみたんですけど。
マカレル・プロダクションっていう……すごくちゃんとした事務所で。嘘では、なさそうでした。
ほら。最近流行ってる、双子のアイドル、いますよね。……ええ。すごくクールで、お人形さんみたいな。
その子たちが所属している事務所です。
…………。
私……
……やってみようかなって。思っています。
もちろん……私なんかが、アイドルなんて。笑われるかもしれません。
地味な見た目だし……喋り方も、こんなですし……。
……でも。
アイドルとして……人前に出るようになれば……
こんな私でも……変われるかなって。
先輩が……もっと、私のことを……
す、好きになってくれるように……
……綺麗に、なりたいです。
それに……。
アイドルに、なったら……
きっと……楽しい毎日が過ごせるかな、って。
……先輩に、とっても。
だから……。
……私、飛び込んでみようかなって。そう思うんです。
先輩は、どう思いますか……?
もし、先輩が、反対するようなら……。
……ぁ。
ありがとうございます。先輩。
背中、押していただきました。ふふ……♪
……はい。名刺の番号に、電話してみます。
思い立ったが吉日、です。
頑張ってみます。
……あ。
でも……
もし、よかったら……。
……この後、私の家に、来て、もらえませんか?
ちょっとだけ、怖いから……
電話する前に……
……先輩から……勇気、もらいたいです。
……ありがとうございます♪
先輩。
大好き、です……♪