Track 1

1-1.『テレビ局のプロデューサーから枕営業を要求された場合』

 ……は、はじめまして。  私、新人の……高鷲伊鈴(たかわしいすず)です。  先週から、マカレル・プロダクションに所属することになりました。  本日は、マネージャーの吉谷(よしたに)と、ご挨拶に伺いました。お忙しいところ、お会いいただき、ありがとうございます……。  よろしくお願い、します……。  ……はい。今は、歌とダンスのレッスンを、しています。  あとは、色々な方に、ご挨拶を……。  活動の方針……ですか?  そう……ですね。特に、何か、目標があるわけではありません……が。  自分の中ではできるだけ、NGを決めないようにして……色々と、経験してみようかと。  何か……私が、テレビ番組などで、お役に立てるようなことがあれば。嬉しいです……。  …………。  ……はい?  ……二人で……ですか?  べ、別に、大丈夫ですが……。隣にマネージャーがいたら困るお話……なのですか?  ……わ、分かりました。  じゃあ……その。すみませんが、吉谷さん。退出して、もらえますか?  はい。ありがとうございます。  …………。  それで……あの。  どういうお話、でしょうか?  あ、あの……?  は……はい。  そう、ですね……。仰る、通り、です。  私は……声も小さ目で。見た目も、地味なほうで……。暗い雰囲気だと、思います。  ……アイドルとして、やっていくのは……厳しい、ですか?  そう……なのでしょうか。  ……でも?  ほ、本当、ですか……?  はい。テレビに、出していただけるのなら……どんな、些細な役割でも、嬉しい、です。  顔を覚えてもらえるかもしれませんし……。  ……あ、あの。  きょ、距離が、近いような……。  ……わ、〝私次第で〟とは……  そ、それは、どういう……? 仰っている意味が、よく……。  あ、あの……手、体に、当たって、ます……。  ぁ……。  こ、今夜、ですか……?  ……その。予定は……あ、空いては、いますけど……。  ……ふ、二人で、食事に……?  あの……それは、さすがに……。ま、マネージャーさんに、付いて来ていただいても……?  …………。  ……た、確かに、テレビには、出たいですけど……  うぅぅ……。  わ、私……私は……。