「クマ川くだり」(川下り環境音ASMR)
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;Track4 クマ川くだり/(川下り環境音ASMR)
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:SE 手を流れる川の水につける
;3/右
【すずしろ】「ああ……(うっとりとした呼吸)」
;環境音 クマ川下り中、川下り船内
【すずしろ】「これ……気持ちいい――
船って、不安定そうで怖くって、いままでずーっと避けてきたけど……」
【すずしろ】「御一夜名物、クマ川くだり。
名物になるだけのことはあるなぁ。わかる!
ゆらゆらするの、列車ともちょっと似ていて落ち着くし……」
【すずしろ】「天気もいいし――
季節も、もしかしたら今が最高なんじゃないかって気がする――
落ち葉がひらひら……舞台でもらう紙吹雪より、もっと、ずうっと――」
【すずしろ】「(ゆったりとした呼吸で、一分ほど川の流れの音を楽しむ)」
【すずしろ】「……落ち葉も川も、鳥たちも船も、まるで歌っているみたい……
すごく綺麗。綺麗でゆたかで――ああ、本当に気持ちいいなぁ……」
【すずしろ】「…………(呼吸音)――こうしていると、思い出しちゃう。
あのときは、落ち葉でも紙吹雪でもなく、粉雪で――」
【すずしろ】「すずしろ役をしてくれてた女優さんが、急に倒れて、すごい熱で。
……病院から連絡があって、撮影に復帰するのが無理だって――なって」
【すずしろ】「……(深い息)。
すずしろ、お芝居のお手伝いをするだけのはずだったのに……
レイルロオドのお仕事のこととか、動きとか、そういうのを女優さんに教えてあげるだけの約束だったのに」
【すずしろ】「……代役だとか突然言われて……(呼吸音)――
うん。あのときは、、完全にパニックになっちゃったよね。
監督が『できる』っていってくれても、そんなの信じられるわけがないし」
【すずしろ】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)……きゅっ、って」
【すずしろ】「すずしろ、怖くなって逃げたくなって――だけど、マスターがきゅって、すずしろの手を掴んでくれて。
――“できなくってあたりまえ、むしろ、できないって証明した方が早く次を探してもらえる”って」
【すずしろ】「言ってもらえて、支えてもらえて。それもそうって、なんだかすっごく気楽になって。
“さっさと試して失敗しよう”って――やってみたら、できちゃって――演じるの、すごく楽しくて!」
【すずしろ】「どこにでもいる平凡なレイルロオドのすずしろが、
ドラマの中では、演じることで! 全然違うすずしろになれる」
【すずしろ】「もうひとりのすずしろになるだけじゃなく。
女王様にだって、奴隷にだって、殺人鬼にだって、刑事にだって――
初めての恋に戸惑う、平凡な女の子にだってなれる」
【すずしろ】「役をいただく、役を演じる。その楽しさを、喜びを――
マスターがマネージャーになって与えてくれた。
たくさんの役をとってきてくれて、たくさんのすずしろを教えてくれた」
;SE すずしろ身じろぎ
;3/右(少し身を寄せる)
【すずしろ】「あの、ね。だけどね。マスター」
;3/右 (耳打ち)
【すずしろ】「本当はすずしろ、なんにも、少しも変わってないの」
;3/右
【すずしろ】「マスターといるときだけは、ただのレイルロオドに戻れる。
C12 67の罐水清浄機(かんすいせいじょうき)――どうにか安定しないかなぁって、
何年も何年もおんなじことに悩まされて。
これだ! って思って修理して。やった! なおった! って喜んで」
【すずしろ】「なのに、二週間もすると――(呼吸音)――
ねー、あはは――また別のこと故障しちゃって」
【すずしろ】「油と水にまみれてもくもくと整備して。
マスターに声をかけてもらえるまで、終業時刻になってることにも気づかない……
そんなどこにでもいるごく平凡なレイルロオドに……マスターといると、戻れるの」
【すずしろ】「それが……ものすごく安心するんだぁ。
役を演じて、役を演じて、役を演じて、役を演じて……
役を離れたときだって、他の人が誰かいるだけでやっぱり――
『女優のすずしろ』を演じなくっちゃいけなくなるから」
【すずしろ】「マスターが、マネージャーまでしていつでも側にいてくれるから……きっと、素顔のすずしろを、見失わないで済んでるの。
どんなに役に入り込んでても、『おつかれ』っていってもらえるそれだけで――すずしろは、すずしろに戻れるの」
【すずしろ】「だから……ええっと……(言葉を探す呼吸。数秒)」
【すずしろ】「……ありがとう。マスター。マネージャー。
って……ううっ――素顔でいうの、恥ずかしい、これ――」
;$=SE水棹がそっと水に潜る音。ちゃぷん
【すずしろ】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――
$
!!? あ、そう。そうだった。うん。
音探し、『いい音』で終わっちゃ、紹介にならないもんね。
ちゃんと――もっとじっくり聞かないと」
;SE すずしろ身じろぎ
;3/右 (少しマスターと離れる)
【すずしろ】「(一分ほど、傾聴しているので抑えめの呼吸)」
【すずしろ】「……川のせせらぎ。鳥たちの声。落ち葉を散らす風の音。
どれもとっても素敵だけど――うん。クマ川くだりじゃなくても聞けるよね。
だから、ここでのイチオシとして、きっと紹介するべきなのは――」
;SE 水棹が水を割り、トン、と岩を突く
【すずしろ】「今の音! えと、水棹(みざお)であってるっけ?
お船の舳先の船頭さんが川の水を割って、船を流れへ乗せる音……
それと――」
;SE 櫓の音強調
【すずしろ】「櫓(ろ)の音……船の後ろのともはりさんが、川面をかき分け、船を先へ先へと進めてくれる音」
;環境音、櫓と水棹の音を強調
;3/右 →自然と寄り添っていく
【すずしろ】「(静かに聞き入る呼吸。90秒ほど)」
;3/右(寄り添い)
【すずしろ】「(満足の吐息)」
【すずしろ】「これも、プロの音だよね。
人間の技術の粋の音が、自然の音と溶け合って……
ほんと、ものすごくここちいい――」
【すずしろ】「もしかして、だけど――
御一夜鉄道のハチロクさんとかって、
こんな素敵な音に囲まれて毎日を過ごしてるから、
気品……身についたのかなぁ」
【すずしろ】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)……
あ――うん。確かに。
すずしろたちのまわりにも、万岡鐡道沿線にも、この音にだって負けないような素敵な音があって。
けど、すずしろたちには日常の音すぎるから、聞き逃しちゃってるだけなのかも」
【すずしろ】「『音を探す』って意識してるから、クマ川くだりの音の素敵さにだって気づけたんだろうし……
例えば――例えばそう! すずしろたちには、『鳥たちの鳴き声』にしか聞こえないこれだって」
;環境音、鳥の鳴き声強調
【すずしろ】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)……うふふっ」
【すずしろ】「マスターにもすずしろにも、C12(しーじゅうに)とD51(デゴイチ)の汽笛の音を聞き分けることは簡単なのとおんなじように、
鳥が大好きな人には、鳴き声のひとつひとつが、鳥の名前とつながってで聞こえてくるんだろうねー、きっと」
【すずしろ】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――っていうかさ、マスター。
名前って、綺麗なものには綺麗な名前がついてるのが多い気がしない?」
【すずしろ】「『水棹の音』。『櫓の音』。
名前だけでも、かなり気持ちいい響きだなってすずしろは思うの。
他には例えば、『虹』『五月雨』『ホウセンカ』『お星さま』『すりガラス』
……うん。やっぱり、きれいなものは名前も綺麗」
【すずしろ】「え……(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――あ、えへへ。
『すずしろ』も綺麗な名前だったら、うれしい。
でも、すずしろって大根のことだから――女優としてはどうなのって気も――
――あ。はい、なんですか、ともはりさん」
【すずしろ】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――えっ!?
ともはり体験……って、すずしろが!?
わ! おもしろそう! ともはり役! いままで一度も演じたことない――
(呼吸音)――はい――(呼吸音)――うん。(だんだんと集中していく呼吸音)。
はい! やらせてもらいます。よろこんで」
;SE すずしろ立ち上がる
【すずしろ】「聞いてて、マネジャー。
すずしろが奏でる櫓の音が、ちゃんと、『ともやり役』を、ものにできるのかどうか」
;SE 木の船の上、はだしのすずしろの足音 ;3/右→;1/前→;7/左→;15/左遠
【すずしろ】「(大きく息を吸う)――それっ!!!!」
;SE 軽快でひときわ高い、櫓の立てる水音
;環境音 F.O.