プロローグ
……んー? どしたの?
メール? 誰から?
……〝アプリ〟?
なにそれ。ふふ。
いきなりメールでアプリが送られてくることなんて、ある?
あれかな。アプリの〝テスター募集〟、みたいなやつ?
で、どんなアプリ?
…………。
〝催眠アプリ〟?
え。催眠って……催眠術とかの催眠?
あはは。すごい胡散臭い♪
ね。ね。ちょっと試しにダウンロードしてみてよ。
なんか、面白そう♪
催眠術って、テレビとかでたまに出てくるけどさ。実際かかったら、どんな感じなのかな~って思ってたんだよね。
物は試し、ってことで♪
まあ……どうせ効果なんてないんだろうけどさ。
万が一ホントだったとしても……彼女のあたしだったら、別に問題ないじゃん? ふふ。
あ。ダウンロードできた?
うん。やってみてよ♪
……お~。なんか、結構それっぽい画面だね。
へー。いくつかモードがあるんだ?
じゃあ……試しに、この〝従順催眠〟っての、やってみてよ。あたしに。
うん。どーぞ♪
…………。
ご命令をください。
あなたのご命令は、どんなことでもお聞きします……。
…………。
…………。
……え?
あたし、今……なに、言った?
……え。いや。うそ。
え。ほんと。別にあたし、演技とかしてない。
なんか、キーンって音が聞こえたと思ったら、急に頭がぼーっとなって……口が勝手に動いて……
へ、変なこと、口にしちゃってた……。
え……。
このアプリ……
……ほ、本物?
うそ……。
これ……ま、まずく、ない?
どうする……?
…………。
うん。そうだよね……。
使わないでおこうよ、こんなの……。
あ。アプリ、消す?
うん。そうしよそうしよ。なんか、悪用できちゃいそうだし……。
……ふふ。あたしの彼氏が、悪い人じゃなくて、よかったよ。
でも……
なんだか、不思議な経験だったね……。
* * *
来たよ~。
ん、しょ、っと……。
…………。
……え? あ。いや、別に、なんでも……
……なくはない、んだけど。
…………。
ね、ねえ。
今日さ、学校で見せてくれた……
あの、催眠アプリ、ってやつ。
……残ってたり、する?
やっぱり消しちゃった……よね。
え? あ。まだダウンロード、できるんだ。
うーん……
……あのね? それ……。
あ、あたしに、かけてくれないかな、って……。
今日、授業中にさ、色々と考えたんだけど……。
……ひょっとしたら、その催眠アプリ、すっごくいいんじゃないかなって思ってさ。
っていうのも……。
……あたしたち。何度か、えっちしたじゃん?
でも……あたし、えっちのとき、いまだにすっごく恥ずかしくて……死んじゃいそうで。
一応、キミの一つ上の、お姉さんなのに……
キミのこと、まともに気持ちよくしてあげられなくて……。
……「そんなことない」? ふふ。ありがと。キミのそういうとこ、好き。
でもさ。あたし……そのこと、ずっと気にしてたんだ。
彼女としては、やっぱり……ちゃんと、キミとえっちしたいな、って思ってるの。
それでさ。
その催眠アプリを使って……あたしが、もっと従順で素直になったら……
……積極的に、えっちできるようになるのかな、って。
あたしみたいな子に……実はすっごくいいんじゃないかな、って。思ったんだ。
……どう、かな?
うん。あたしは、全然構わないよ。
キミのこと、信用してるし……
それにさ? さっき、催眠にかかったとき……ちゃんと、そのときの記憶、残ってたんだよね。
されたこと全部覚えてるなら……別に不安じゃないし。
あとさ……。
……あたし、知ってるんだ。
キミが、あたしに、して欲しいことがあって……
……でも、それをずっと、我慢してるってこと。
あたし、それ、分かってたんだけど……
でも、やっぱり恥ずかしくて。全然、できなくて……。
……だけど、キミが好きだから。キミが喜ぶこと、してあげたいんだ。
だから……。
あたしに、催眠、かけて?
……うん♪
えへへ。
じゃあ……早速、しよっか♪