プロローグ
こんにちは♪
はい♪ お入りください。
ええ。お話は聞いていますよ。
そちらのソファにどうぞ♪
あなたの上司からここに来るように言われて、いらっしゃったんですよね?
この部署については、ご存知でしたか?
なるほど。
いえいえ♪ 世間的に設置されている会社が多くなったとはいえ……うちの会社では、今年できたばかりですから。
知らないのも当然です。
では、最初から説明させていただきますね。
改めまして……
私は、〝ママ係〟の望月ゆうりです♪ よろしくお願いします。
正確には、〝総務課〟の中の〝ママ係〟、という所属になっています♪
ソファのお隣、失礼しますね。
……あ。急にびっくりしましたか?
すみません。お話を聞くときは、こうやって隣り合って話すようにしてるんです。
いいえ。規則というわけではなく、私が勝手にやってることですけど♪
よく、向かい合うのは敵対するときの位置関係、と言ったりするでしょう?
こうやって、並んで話し合ったほうが、お互い落ち着いて話せますよ。
話がそれましたね。続きをお話しします。
ママ係というのは、社員さんのメンタルケアを行うための部署です。
こう説明すると、堅苦しくて身構えてしまいそうですが……
名前の通り、何でも悩みを相談できる、会社内でのあなたの〝ママ〟だと考えてください♪
子どもの頃に戻ったように、自分のママに甘える……みたいな、軽い感じで大丈夫です♪
あなたは……、言い方が少し難しいですが……
職場の環境が、あまりよくない状況になってしまっている、とお聞きしています。
これからしばらくは、定期的にこの部屋に来てもらって、私と面談していただくことになります。
もちろん、私がお呼びするとき以外にも、自分から来てくださって、もちろん大丈夫です。
あなたのお悩みを、全て包み込めるママになれるように。私も精一杯努めさせていただきます。
気軽に利用してくださいね♪
また……このママ係では、来てくださった社員さん一人一人に、担当が付くことになります。
来るたびに別のママ係に説明し直す……というのも嫌ですよね。
あなたは、このまま私が担当させていただくことになりますが……合わないと感じたら他の者に変えることもできますから、お気軽に申し出てください。
それから……ここでは、ハラスメント対策と防止にも力を入れています。
私から、あなたの所属部署の上司に、要望を伝えることもできます。どんなことでも遠慮なく私にお伝えください。
もちろん、ここで話していただいたことの秘密は、絶対に守られます。
誰かにお伝えしなければいけない場合でも、あなたの許可を取ってから行います。
この部屋自体の防音もしっかりしていますし、ドアには鍵をかけて、誰も入ってこられないようにしています♪
リラックスして、お話ししてくださいね。
……説明は以上です。
何か質問はありますか?
はい、分かりました♪
長々と説明を聞いていただいてありがとうございます。
では、早速……面談を始めさせていただきますね。
あなたの今の状況を、話してみていただけますか?
はい。もちろん、ある程度お話は伺っています。
けれど、文章から受ける印象と、直接お聞きする印象は、絶対に違っているものですから。
あなたの言葉で聞かせてもらえると、嬉しいです。
はい♪ ありがとうございます。
ゆっくりで構いません。
ママに……どんなことでも、話してみてください♪