【プロローグ】
「私の出す幾つかの命令に背くことができたなら、あなたの望みをかなえます」
誰がどう考えても怪し過ぎる謳い文句。
だけど、私はその言葉に乗せられてしまった。
どうしてもかなえたい望みが、あったから。
私の望みは、幼い頃からの夢……「アイドルになりたい」、というものだ。
一言付け加えるなら、「一分一秒でも早く」だ。
アイドルがアイドルでいられる時間というものは、長い人生の中で見れば、ほんの僅かな時
間でしかない。
残酷だけど、だからこそアイドルは何よりも尊く、美しく輝いているのだ。
この夢を抱くようになったきっかけ。
幼い頃に見たあるアイドルの生き様がまさにそうだったように。
短く、儚く。
だけど何より熱く、激しく燃焼する刹那の輝き。
……私も、そんな輝きたい。
目を焼くほどの「憧れ」という輝きに魅せられてしまった私は、そう思わずにはいられな
い。
だから、この夢を最短でかなえる手段があるのなら、何だって利用する。
それゆえに……私は、ここにいる。
「ゆっ……弓波 燈花(ゆみなみ とうか)ですっ!
よろしくお願いしますっ!」