(5).ごちそうさまでした
「改めまして、ご飯たべさせてくれて
ありがとうございました」
「ぼく、いつも腹ペコだったから……
まさかこんなに食べられるだなんて
思ってなくて、本当に嬉しかったです」
「はい……。何度も言いましたけど、
ぼくダメダメサキュバスだから……
いつも最後までできなくて……
ちょっと精気を吸うだけで終わってしまって」
「先輩たちには怒られるし、
同い年のサキュバスたちには
馬鹿にされるしで……
正直、自信無くしてたんです」
「でも、あなたが教えてくれて、
恥ずかしかったけどちゃんとできて……
本当に良かった」
「こんなダメダメサキュバスに
付き合ってくれてありがとうございました。
あなたがいなかったら……
ぼく、きっと今ごろ腹ペコで
倒れちゃってたと思います」
「そんなこと……ないですよ。
現にあなたに教えてもらわないとまともに
セックスもできないサキュバスなんですから……」
「それは……あなたが喜んでくれるのが
嬉しかったから……。
そういえば、どうしてぼく、
そんなふうに思ったのかな?」
「最初は、精液がもらいたい一心だったけど……
途中からはあなたが喜んでくれることの方が
大事になってきて……」
「わわっ!急に抱きしめられると
ビックリしちゃいますよ……どうしたんですか?」
「え?いま、何て言いましたか……?」
「好きって、ぼくのこと……ですか?
そんな……ご冗談を……」
「本気だって……そんな……ぼく、
サキュバスですよ?人間じゃないんですよ?」
「分かってるなら考え直してくださいよ……
あなたはとっても素敵で魅力的だから、
ぼくなんかよりずっといい人がいるはずです」
「こんなダメダメサキュバスに
愛してるなんて……もったいない……」
「でも、なんでかな……すごく、嬉しい……
ヒッくっ、ぼくのことなんかを好きなんて
言ってくれる人がいるだなんて……っ」
「ちょっ……苦しいですよ!
抱きしめ過ぎ……って、あなたの心臓の音、
すごくドキドキいってる……
そんなにもぼくのこと想ってくれてるんですね」
「……サキュバスでも、いいですか?
寿命も食事も違うけど……それでもいいですか?」
「分かりました。それじゃあ、
ぼくも自分の気持ちに正直になります……
ぼくもきっと、うんん、絶対……あなたが好きです」
「人間の感情はよく分からないけど、
きっとこれが誰かを愛してるって
気持ちなんだなって分かります。
ぼくはあなたを愛してる」
「えへへ、両想いですね。嬉しいなぁ……」
「ちょっと横になりませんか?
抱きしめてもらえるのは嬉しいけど、
安心したからかな?
ちょっと眠くなってきちゃって」
「ふふっ、添い寝ってちょっと照れ臭いですね。
でも、あなたの顔が近くで見えるのは
とっても嬉しいです」
「一つ約束をします。
ぼく、これからはあなた以外との食事はしません。
あなただけがいいから」
「あなたも浮気はダメですよ?
ぼく、こう見えて結構ヤキモチ焼きなんです」
「そうですよね、
あなたはそんなことしませんよね。
分かってて言っちゃった♪」
「ふふっ、それにしても不思議ですね、
さっきまであんなに恥ずかしかったのに……
今じゃこんな近くであなたの顔が見えてるなんて」
「好きって気持ちはすごいんですね。
人間は不思議だけど、とっても素敵だと思います」
「あなたが教えてくれたんですよ?
誰かを愛する気持ちがこんなに
素敵なことなんだって。
ぼくのことを好きだって
言ってくれなかったら気づけないままでした」
「気づけて、本当に良かった。
ぼく、とっても幸せです」
「その……一つ、
わがままを言ってもいいですか?」
「ありがとうございます。
では、その……キス、してもいいですか?」
「愛し合ってる状態でのキスは
したことがないから……憧れで」
「ありがとうございます……大好き。
ちゅっ、んんっ……ちゅっ、ちゅるっ、
ふっ……んっ、ちゅっ、ちゅぱっ……」
「……ぷはぁっ!えへへ、
大好きな人とキスしちゃった。幸せだなぁ」
「本当はもっとしたいけど……
流石にもう寝ないとですよね。
いっぱい相手もしてもらいましたし」
「ダメですよ。キスだけでも精気を
吸い取ってしまいますから。
あなたに倒れられたらぼく困っちゃいます」
「精気を吸い取らないでできること……
そうだ!手、繋ぎませんか?」
「こうやって……恋人繋ぎです!
このまま眠りましょう?」
「大丈夫、離しませんから。
ちょっと寝づらいかもしれないですけど……」
「えへへ、なら良かった。
それじゃあ、もう寝ましょう」
「起きたらまた気持ちいいこと
いっぱいしましょうね。おやすみなさい……ちゅっ!」