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船上での出逢い癒しの人魚

…ん、ぁ……。 ここ、は…? 海…では無さそうですね。 これは、樽の中…に。 私(わたくし)、どうしてこんな所に。 あそこで倒れているの、人…。 暗くて、よく見えませんが。 あの、大丈夫ですか。 どこかお悪いところでも…あ、良かった…。 その、すみません。 少々お尋ねしたいのですが…ここは、一体…。 もしかして、海で怪我をした私を…貴方様が、助けてくれたのでしょうか? そうであれば、何かお礼をしないと………その、私は怪我をした覚えはないのですがただ…何か網のようなものが空から降って来て、そこから記憶が……目が覚めると、目の前に貴方様がいたもので。 どうして謝っていらっしゃるですか? その…逆、というのは……そうですか私は…捕らえられて、しまったのですね…そして、ここは…船の中。 貴方様は…海賊さん? そうなのですね。 海の上には、そのような人たちがいると、良く聞かされていました。 船に乗って、色々と悪いことをする…怖い人たちがいると…でも、貴方様は、そのようには見えませんはい、確かに海賊さんのお仲間、というのは分かりました。 けれど…でも…あの、宜しければもう少しだけ、お顔を良く見させていただけませんか? 『…そうです、こちらに歩み寄って下さい… 』大丈夫です。 何も心配はいりません……ふふ。 やっぱり貴方様は、悪いことをするような人には見えませんはい、海賊さんというのは本当なのでしょう。 けれど、私を捕まえて、樽の中に閉じ込めたのは、違う人がやったこと…ここに来たのも、私をいじめるためでは、ないんですよね? 貴方様が…私のお世話を…? ふふっ、ではよろしくお願いしますね、優しい海賊さん…せっかくなので、握手をしましょうか。 …私は、…人の間では、セイレーンと呼ばれています。 私達も人の怖い噂を知っているように、貴方様も私達の怖い噂を色々とお聞きになっているのでしょう。 でも、私は、貴方様が思っているような存在ではありません。 お互いに、言葉だけではすぐに分かり合えない事もあるのかもしれませんが…まずは、信頼関係を築く所から始めませんか? 手と手を繋げば、少しでも通じ合うものがあると思います。 …さぁ、手を出してください………ん。 あったかい………私の手も、ですかふふ、こうして樽の中に入っていると、ただの女の子にしか見えませんよね…す、すみません。 そろそろ、離しますねその…人と触れ合ったのは、初めてで…でも、あったかくて、優しい感触で…。 私達と、変わりませんね。 ふふっ人は怖い存在だと聞いていたのに、貴方様の腕は、とても乱暴なことをするようには見えなくて…その傷…ほら、痣になっているところがありますよこのお怪我は…どうしたんですか? 嵐で船が揺れた時に、転んでしまわれたのですか……貴方様の腕、とても痛々しくて…。 宜しければ、私に手当させてください人の間ではあまり知られてはいませんが、私達の種族には、傷を治す癒しの効果をもたらす事ができるんです。 ですから、もう一度だけ…腕を見せてくださいませんか? …そして、私の顔に、耳を…近づけてくれませんか? どちらの耳でも、構いませんよ………はい、ありがとうございます…では、痣になっているところに、触れますね…大丈夫です…何も心配はいりません。 だんだん、触れているところが、ポカポカと伝わってくる感覚が、分かりますか? …セイレーンの、特に私の声には…癒しの効果があるみたいなんです…人に試したのは、これが初めてでしたけど……ん、はぁ……どう、でしょうか? 痛みが引いて…穏やかな心地に、なってきませんか? ふふ、それは良かったですあの…もし宜しければ。 他の傷も、私に見せていただけませんか? …転んで怪我をしたなんて…嘘、ですよね――あっ待って、くださいその腕の怪我…もしかして、他の海賊さんに…されたのですか…嵐、と言われていましたが、最近の海は…とても穏やかでしたから。 それに、貴方様の嘘は、すぐお顔に出てしまっています…出会ったばかりで…私の事は、まだ信用できないかもしれませんけど。 何があったのか、私に話していただけませんか…? …お願いします。 傷ついている人のこと、放っておけません…それに…私達はお互いに、信頼する所から始めるべきでしょう? …そう、だったの、ですね…お友達に、されて…。 いえ、そのような方々は、お友達でも、何でもありません…酷い、です貴方様は、とても…優しい方なのに。 …私にはわかります。 目を見れば…触れ合えば…貴方様の本当の良さが。 それなのに、酷い事をされて…貴方様が海賊をされているのも、何か理由があるのですね……うぅ、とっても、ひぐ…っ、可哀想…です。 …うぅ、ぐす…っ…お願い、します他の傷も、見せてください…私の我が儘を、聞いてほしいのです…っこのような、酷いことをされた…貴方様のことを、僅かでも癒してあげられたら…どうか…っ…そう、です…。 私の顔…唇に、耳を近づけて……これで、貴方様の傷を、癒してあげられます…傷ついているのは、どこ…でしょうか…まずは、お腹…ですねでは、失礼します…んっ…これは、酷いですね…でも、大丈夫。 大丈夫ですよ私の手が触れて、この声が届けば…お身体の腫れも、痛みも……すぅーっと引いて…溶けていきますからね…傷ついたお腹に…少しずつ触れていきますね。 お顔が、和らいできましたね……気持ち良い、ですか…? お役に立てたようで…良かったです…でも、まだ…ありますよね? 癒してほしいところ、私に…教えてください…次は、お背中、ですね。 では、後ろの方も…少しくすぐったいですか? ふふっ我慢して下さい。 硬くなっているお身体から、力を抜いてくださいね…そうして、目を閉じたまま…私の声を、感じてください…この声は、貴方様を傷つけず、優しく抱きしめるように…全身を満たしてあげられます…安心、してくださいねゆっくりと息を吸って……吐いて…そうしていると、全身が温かく…海の上を…漂っているような心地良さに、包まれていきますよ………ん、はぁ…。 …ん、ふぅ…どうでしょう。 少しは癒され…ましたか? お身体だけでなく、心の傷も…では、離れますね……お役に立てたようで、良かったですまた、何かあれば気軽に話してくださいね。 私で良ければ…いえ、そんな…。 私が、望んでしたことです……それに、貴方様は、私の世話を任されているんですよねでしたら、お互い様…ということです。 ふふっ、そんなこと…言葉に出していただかなくても、分かりますよ貴方様は、私を傷つけるようなことは、絶対にしないと…そういえば、まだ私の名前をお伝えしていませんでした。 私は、セフィリアと申します。 これからも、よろしくお願いしますね。 優しい海賊さん

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