二人の約束
ふふ。
もう朝ですよ…美味しいごはんを作るので、起きてください?
もぉ…貴方は、お寝坊さんですね…ん、ちゅっ…あ、起きちゃいましたか?
ふふ、おはようございます貴方が起きてくれないから、ほっぺにちゅーしちゃいました……もう一回、してほしいんですか?
それは、行ってきますの時ですよ…違います、意地悪ではありません。
本当は、私も、もっといーっぱい、してあげたいんですけど…そうすると、ほっぺのちゅー…止まらなく、なっちゃいそうですから…一緒に、我慢ですよ。
ふふ…さてと。
そろそろ、朝の支度をしないとん…あ、れ。
ん…ぁすみません、ちょっと脚が痺れたみたいで。
手を貸していただけますか?
ん、しょ…。
ふぅ…ありがとうございますもう、大丈夫…ですので。
ん、ぁ…っ今のは、少しふらついただけなので。
まだ、寝惚けてるみたいですねこれじゃ、人のこと言えない…あっはぁ……はぁ……はぁ…ごめん、なさい。
少し、このまま横になれば……はぁ……はぁ……え、熱…ですか?
そんなに、おでこ…あっついでしょうか良く…分かりませんはぁ…あぁ……早く、朝ごはん、作らないと………でも、それだと、貴方が……ん……はい。
すみません。
では、お言葉に甘え…ますね……はぁ……はぁ……え……してほしいこと…。
……では、脚を…さすってもらえますか?
……ん、あ……気持ち、良い……ん、はぁ……あと、は……。
そうですね、少し…お水を……ぁ……ありがとう、ございます……あぁ、飲ませて、下さるのですね……んっ、んく……んく……んく……はぁ…っはぁ……美味しい、です…はぁ……あぁ…そんな…悲しいお顔を、なさらないで…私は、笑っている貴方が、大好きです………ん、はぁ…大丈夫。
少し眠れば、また…元気に……はぁ……あぁ……そう、ですか。
すべて…気づいて、いたんですね…貴方を、お出迎えした時。
抱きついたのは、身体がふらついたからで…お夕食の時、パンを落としてしまったのも…。
お散歩で、すぐ疲れてしまったのも…ぜん、ぶ……はぁ、はぁ…これは…その、病気ではないんです。
……私が犯した罪……代償、です私が、人の身体になろうとしたから……本当は、魔法なんて、ないんです私は、人になるために…ある禁薬を口にしました。
とても、強い効果のあるお薬です。
この薬には、副作用が…あって…疲れ易くなったのは、最近…なんです。
症状が出ないので、大丈夫だと思っていたんですけど…ダメ、でしたね…。
今まで黙っていて、ごめん…なさいはぁ……はぁ…治療する、方法は…、あります。
…ですが、そのためには、別のお薬を、飲まないと、ダメなんです…でも…それを飲んでしまうと、私は…元の身体に戻ってしまいますすべて、昔の頃に…身体も、記憶も…全部、です…そんなこと、貴方を…忘れてしまうくらいなら。
最期まで、このまま…はぁ……貴方と、一緒に…………え?
そん、な……嫌、です。
だって、お薬を飲んでしまったら、貴方との思い出が……はぁ、あぁ……そう、ですよね。
私、言いましたよねたとえ、人に生まれていても。
貴方と出逢ったら、恋に落ちるって……何度だって、たとえ生まれ変わっても…私は、貴方に…恋をします。
絶対に……はい。
分かりましたそれでは、私を…海まで、連れて行ってもらえますか?
…んっ…ふふ。
お姫様だっこ、されちゃいました……はい。
ここで、大丈夫です降ろして、ください――いえ、大丈夫です。
自分で…立ち上がれますから…貴方は、少しだけ…離れていて、くれませんかまだ、海には行きませんので。
お願い…しますはぁ……はぁ。
お別れする前に……ちゃんと、自分のこの脚で……んっ、一人で…立ち上がって…貴方の側へ…行きたいんですだから、貴方はそこで、見守っていて、くれますか…?
…そして、もし…私が側に行けたら…ぎゅって、抱き締めて、ください…っ…ずっと、夢…だったんですあの時、暗い、船の底で…樽の中に、閉じ込められていた時から…貴方だけが、いつも私に会いに来てくれました。
いつも、優しい笑顔で、私のお話を聞いてくれたり。
歌も、褒めてくれましたよね。
私は、貴方と出会ってから思うようになりました。
自分の脚で歩いて、貴方の側に行きたい…と。
あの身体のままでは、叶いませんでしたが。
今は、違います人として、生まれ変わった今なら。
…っく、貴方の手に…肩に…温もりに…自分から触れて…大好きだって、愛してると…伝えられますこれが、最後…です。
私はもう、歩けなく…なります。
自分の、人の…脚で…っん……ふぅ、…っく、あ……私の、名前を…ふふ。
貴方のおかげで、最後まで、頑張れそうです……っ――あっぅ……うぅ、ああぁぁ……っあった、かい…辿り、着けました…っ貴方の…大好きな人の、腕の中に…うぅ好き…大好き……っん……ちゅっ、ちゅぅ、……ん、ちゅっ……ちゅぅ……はぁやっと…キス、できました人の姿で…初めて。
愛してる、キスを……ん、ちゅっ、ちゅ……あぁ……泣いて、いるんですか…?
……ん、ぺろ…懐かしい、味がします。
ふふ…んっ、ちゅっ……ん、ちゅぅ……はぁ貴方からの、キス…。
幸せ……はぁ……あぁ………もう、行かないと……貴方は、私のことを、傷つけないと言ってくれました……ですが私は、傷つけて…しまいました…悪い、女の子ですよね…ごめんなさい。
ごめんな――あぁ…うぅ…っ……必ず、必ずまた、貴方に会いに行きますから…ったとえ、すべて忘れてしまっても…この心は、貴方のことを…憶えています。
…貴方も、私のこと…見つけて、会いに来て下さいね私の声が、歌声が聞こえるその場所に…私は待っています。
…どうか、お元気で…さよならは、言いませんからね……大好きです。
ん、ちゅっ