一緒に食事
はい、お待たせキノコと魚のシチューに、アップルパイよ初めてのお料理だったけど、おばあちゃんにも味見してもらったから、安心してね…特にこのアップルパイは、甘い物が苦手なおばあちゃんも、喜んでくれたわ。
…ふふ、その時にね、こんなお料理どこで教わったの?
って訊かれちゃったの。
それでね、村の人に聞いたって、…嘘ついちゃった。
…初めてかも。
おばあちゃんに嘘をついたのって。
だって、冗談でも、オオカミさんに教わった…なんて言ったら、おばあちゃん、きっと倒れちゃうわ…あっ、お話していたら、せっかくのお料理が冷めちゃうわね…さ、オオカミさんも一緒に。
食事の前には神様にお祈りをしないとダメよ。
せっかく頂いた命のお恵みなんだから。
ん…もぐ、んむ……んオオカミさん…どう?
美味しい?
そう?
ふふ、良かったぁシチューはまろやかで、アップルパイはサクサクしているわねうん…初めてにしては、大成功よん、はむ……んぐ、んむ……あぁ、美味しいこれも、オオカミさんのおかげね。
ありがとう、オオカミさん…あらっ、もう全部食べちゃったの?
こんなに美味しそうに食べてくれるなら、もっとたくさん作っておけば良かったわね…ふふ。
…ねえ、オオカミさん私、最近ね、とっても楽しいのそれはね…オオカミさんが、私の側にいてくれるからよオオカミさんは、私の一番のお友達…出会ってから、そんなに日は経っていないけど、そうなれたんだって、心から思っているわ…だから、ねいつか、私以外の人とも、分かり合える日が来ると思うのもしかしたら、村の人が考えてることは、全部勘違いかもしれないわ…その、他のオオカミさんも、本当は乱暴者なんかじゃなくて…全然、怖くなくてこうして触れ合って、話し合えば、分かり合えるんじゃないかって……そうしたら、皆で仲良く…………オオカミ、さん?
…どうして?
なんで、そんなことを言うの?
オオカミさんは、他の仲間のこと…忘れているんでしょ?
なのに、村の人の言うことを、信じるの?
…そう、なんだ。
…良く憶えてないけど…それでも、分かっちゃうのね………同じ、オオカミさんだから?
それとも……もう、オオカミさん?
そんなにつらい顔しないで………きっと、大丈夫よもし、分かり合えなくても…今のままで、良いじゃないこうして、一緒にごはんを食べたり…森をお散歩したりふかふかの毛に顔を埋めて、お昼寝したり…そういう毎日を、私だけが一人占めしてる…オオカミさんとの時間は、私と、オオカミさんだけのものそれでも、こんなに楽しいんだから。
それで、良いの……それに、ねオオカミさんは、まだ思い出してないんだから。
全部、何かの間違いかもしれないわ他のオオカミさんも、本当は優しくて村の人や、私たちと仲良くなりたいって、そう思っているのかも…だから、もっと笑いましょ?
いつもみたいに、一緒に遊んだりして……そうだ、この後は、追いかけっこをするのも良いわねオオカミさん、身体がなまってきてるんじゃない?
そんなこと、ない?
ふふ、じゃあ、私のこと、捕まえられるか勝負しましょう。
えっと…私があの小川まで逃げ切ったら、勝ちね。
面白いでしょ?
……じゃあ、さっそく勝負よ私のこと、捕まえてみてね?
オオカミさん