お別れは唐突に
オオカミさん、ごめんね?
今日はその、急に…こんなところに呼び出したりして…あのねっ……。
お話が…あるの……昨日、村の人が言っていたんだけど……森の中で、獣に…襲われた人がいるの…その獣は、オオカミだって、言ってたわ……でも、でもね?
私には分かるの!オオカミさんは、そんなこと、絶対にしないわそれに、村の人が襲われたのは、オオカミさんが私のお家にいた頃よ。
…私もずっとそばにいたもの。
…だから、安心して。
オオカミさんは、大丈夫今度は、私がオオカミさんのことを守るの…たぶん、明日。
村の人が、この森の中に入ってくるわその間、オオカミさんは絶対に外に出ちゃダメよ私のお家の中で、一緒にいましょ?
そうしたら、大丈夫だから村の人が、悪いオオカミをやっつけて、それで…お終いまた、いつもの毎日に戻るの一緒にお散歩したり、小川で遊んだり、膝枕でお昼寝するような…そんな、楽しい日が、また来るからオオカミさんは、何の心配もしなくて良いのしなくて、良いのに…………ねえ、オオカミさん……オオカミさんは、どうして悲しそうな顔をするの?
…大丈夫。
大丈夫なのよ?
私のお家にいれば、それで…っぁ……。
オオカミさん…私のこと、心配してるの?
私が、オオカミさんをお家に隠してるのが、村の人達にばれちゃったら……それは、でもっ…もし、そうなっても、きっと話合えば何とかなるわ…!オオカミさんの良いところを、村の人達に、私がぜーんぶ、教えてあげるのそうしたら……きっとオオカミ、さん…っ……私、嫌よオオカミさんと、お別れするのなんて…絶対に嫌…そうだわ、一緒に遠いところへ逃げましょう。
誰にも見つからないような、森の奥に…二人で…っぁ……そう、よね。
私には、おばあちゃんが…………うぅ。
オオカミさん、教えて。
私……どうすれば、良いの?
どうすれば、オオカミさんとお別れしなくてすむの?
……私、おバカさんだから。
オオカミさんみたいに、頭…全然良くないからいつもみたいに…教えて。
どうしたら、良いの?
教えてよっ、オオカミさん…!そう、そう…なのねお別れするしか…もう、ないのね…………ごめんなさい。
わがまま事、言っちゃって。
……でも、オオカミさんは、これからどうするの?
自分のお家も、まだ思い出せてないのに。
こんなに広い森の中で、一人きりなんて……また、普通に戻るだけ?
……どうして、そんな寂しいこと言うのオオカミさんにとっての普通は、私と一緒にいることじゃないの?
そうじゃなかったの?
…オオカミ、さんっ【ソフィア】…嫌っ、お別れするのなんて、やだよぉ…っ……私、オオカミさんと、ずっとお友達でいれるって、そう思ってたのに……どうして、こうなっちゃうのかな…?
オオカミさん、何も悪いこと、してないのに…っ……うぅ、ぐすっ……オオカミ、さん……うぅ、ううぅぅぅぅ…!うあぁぁぁ…っ、ぐすっ、はぁ…っ、あぁぁ…っ…ぐすっ、はぁ…。
……オオカミ、さん。
…その言葉、本当?
私たち、離れ離れになっても…ずっと、お友達、なの?
また、会いに来てくれるの?
…うぅぅ、あぁぁ…っ、オオカミさんの手…ぐすっ、大きくて……あったかい……うぅ、あぁ…っ、約束…よっ絶対に、これっきりじゃないって。
いつか、会いに来てくれるって…っ……うぅ、ぐす…っ、はぁ…………オオカミさん。
ありがとう私、もう…泣かないわ…だって、お別れじゃないから離れちゃっても、お友達なのは…変わらない。
なら、また会えるもの。
そうよね、オオカミさん私…さよならなんて、言わないからこれは……そう、ちょっと長い追いかけっこよたとえ、どんなに遠くに離れちゃっても、足の速いオオカミさんなら、すぐ追いついてくれるもの。
…あの時と、同じように……だから、またね――【ソフィア】オオカミさーんっ、ほら、こっちこっち~!ふふ、あははっ私のこと、捕まえてねーっ!…ふふっ(END )