勇者、さま?
はぁ、はぁ、はぁ…んぅっ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…。
はぁ、はぁ、はぁ…くっ…はぁ、はぁ、はぁっ。
あっ…。
うっ……うぅぅ…。
【ニィナ】うっ…うぁ……あなた……誰…?
…た、す…け……て…。
私…運ばれて……い、やぁ……あそこに、戻るのは……い…や…。
【ニィナ】んっ…むぅ…。
んっ…。
うっ、冷たっ。
…あ…れ…?
ここ…。
……ッ!【ニィナ】あたたた…頭…いたぁ……。
これ、たんこぶ?
さっき、ぶつかったときの…つつつつ…。
はっ……あの、その…すみません…。
お布団まで貸して頂いて、ありがとうございます……。
すぐに、出ていきますので、どうか…あそこに戻るの、だけは……。
あっ……そのっ…ええとっ…連れ戻すために、連絡とか……。
…これは、冒険者の証、でしょう、か……?
勇者、さま?
…おびえる必要は、ない、です、か……?
いえ、その……怯えてるわけでは……ないんですけど…えっと…。
そのパンを……私、に?
い、いえ……いただけませんっ。
それに、わ、私は今、お腹すいて、ませんし……。
うぅぅぅ……。
はい…いただきます……パン、食べます…。
ごくり…。
はむっ!がぶっ、あむっ……んくっ、んっ…ごくんっ、あむっ!あぐっ。
がぶっ、んくっ…んっ!んんんんんっ!お、お水ぅっ…!んっ!んぐっ……ごくっ、ごくっ、ごくんっ!はぁぁ……はぁ、はぁ…。
す、すみません…。
あ、はい…急いで食べなくても…大丈夫、ですか…。
あむっ…んっ……こくっ……ごくんっ…。
ぐす……こんな、柔らかいパン……食べたの、久しぶり、です…。
あ、ありがとうございます。
見ず知らずの私に、こんなに良くしていただいて……少し、落ち着けました。
…何も、聞かないで、いてくれるんですね…。
勇者、さまが…私を“あそこ”に突き出す気がないのは、分かりました…。
すみません、私の話を少し、聞いて、頂いても、いいでしょうか?
ありがとう、ございます…。
私…じ、実は……奴隷、なんです…。
その……奴隷として、売られそうになっていたところを、逃げて……きたんです。
見つかったら、連れ戻されるかも、って思って……隠れて、逃げて、逃げて…いっぱい、走り続けて、きました。
何日も逃げ回って、いままで何も、食べて、なかったから…フラフラになってて、何かにぶつかって…気を失っちゃったみたいで…。
家のドアのところで、すごい音が?
……私、そんなところに、ぶつかっちゃってたんですね…。
あの…お食事、ありがとうございました。
この御恩は、一生忘れません。
……ここを離れる前に、何か恩返しを、したいです。
私に、何か、できることは、ありませんか?
…… へ?
ここで、勇者さまの、話し相手になって欲しい……と?
今日だけじゃなく、これからずっと……ですか?
それは……その、私がここに居ても、いい、ということなのでしょうか?
ずっと……ここに、居ても、いい……?
…本当に、いいのですか?
…私が居ることで、勇者さまに、何か、ご迷惑をかけるかも……しれません。
助けてくださっただけでも……ありがたいのに…申し訳、ない……です…。
い、いえ!不満なんて、あるはずが、ありませんっ!その……い、一生懸命やります!よ、よろしくお願いしますっ!