私にも、お手伝いをさせて下さい
体を拭くの、ですか…?
あっ……そうですよね……すみません。
何日も……逃げっぱなしだったから……体中、泥やホコリで汚れてしまって…。
こんな状態じゃ、勇者さまの家の中まで、汚してしまいますよね…。
違うんですか?
…?
まずは、体を綺麗にしないと……病気になる…。
あ…わ、わわ、私のことを、心配してくださっているのですかっ!す、すみません…そんな、心配をしてくれるなんて……思っても、いなかったもので…。
あ、……ありがとうございます…。
そ!そんな、わざわざ私の顔を拭いてくださるなんて!恩返しをしなければいけないのは、私なのに……。
勇者さまの手を煩わせてしまうなんて、とんでもない……です…。
う……体力が尽きて、倒れていたのは…確かに、その通りなのですが。
分かりました。
よ、よろしくお願いします……。
まずは顔から?
ですね……。
ど、どうぞっ。
あっ……うっ……。
んっ……んぅっ……。
…ふぅ……すぅ……あぁ……あたたかい…。
…んぁ、耳も、ですか?
お、お願いします。
んっ…あぅっ…うっ……んっ…。
ふふっ、そこは少し、くすぐったいかも……です……。
…うっ……んっ……ふぅ…。
ふぁ…?
つ、次はしっぽ、ですか?
わ、分かりました。
お願いします…。
んっ…あぁ、しっぽも……こんなに、汚れてたんですね…んっ。
……そんなことにも、気付かないくらい……余裕なくなっちゃってた、みたいです……。
…んっ……ふぅ…。
ありがとう、ございます、勇者さま。
すごく、スッキリしました。
せ、背中も、ですかっ!い、いえ……その、…。
少し恥ずかしいというか、なんというか……。
い、いえっ!全然ダメではないです!そんな、勇者さまが親切で、やろうとしてくれてることを、断るなんて。
ぜ、是非、お願いします。
あっ……背中、ですよね?
拭きやすいように、私後ろ向きますね。
その……前を向いたままだと、さすがに恥ずかしい、ですし…。
…では、服を……ぬ、脱ぎますね…。
【ニィナ】こ、これで、いいでしょうか?
…あの、どうか、されましたか…?
…細くて……心配…ですか…?
…そう、ですか……あっ……大丈夫です。
なんでもありません。
…そんな風に、気遣ってくれるなんて……思わなかった、ので…。
……。
…ん……。
あっ…あとはっ!あとは、自分でできますからっ!あ……タオル、お借りしますっ…。
このタオルも……暖かいん、ですね…。
ど、どうされたんですか?
……あっ!す、すみません。
私のために、部屋を空けて頂けるのですね。
お気遣い、ありがとうございます……。
…拭き終わったら、隣の部屋に、行けばいいの、ですか?
…あっ、はい……この服に、着替えてから、ですね……分かりました。
すぐに……お伺いしますね。
【ニィナ】おまたせ、しましたぁ…。
…あの、勇者さま、こんなきれいなお召し物……私が着てもよかったのでしょうか?
あ……はい、大きさは問題ない感じです。
体もきれいになりましたし、服も…。
ふぇっ……?
もっと可愛くなった……私が、ですか…?
あぅ……そんな…ことは…ない、と…思いますが…。
うぅ…その、あの……すみません…。
さっき、あんなに美味しいパンを、いただいたのに……何で、鳴っちゃうかなぁ…。
…し、シチューですか?
勇者さまが、お作りに、なられる、と…。
わ、私のためにっ!いえっ!それは、そんな…そこまでしていただかなくても…。
そんな…いいからって……うぅ、すみません…。
せ、せめてっ!お手伝いをさせてくださいっ!お願いします!良いのですか?
よかった…。
い、一生懸命、がんばりますねっ!【ニィナ】すごい、包丁さばき……あっという間に、お肉が一口大に…。
…あ、すみません。
見とれちゃってました……。
大丈夫です。
手は動かしてますっ!玉ねぎが焦げ付かないように、混ぜてますっ。
火を強くして、お肉を入れるんですねっ。
分かりましたっ!おぉ…。
すんすんっ。
美味しそうな匂い…。
ごくり…。
…あぁ、よだれが……。
す、すみません…。
焦げ付かないように、ですよねっ。
……が、がんばりますっ!そろそろ、いい感じ、ですか?
分かりました。
…次は~。
あ、お水とお野菜を入れて、煮込むんですね。
…なるほど、ここで火を弱めて……香辛料を入れると……ふむふむ。
…あとは、鍋の底にくっつかないように、私が混ぜていれば、いいのですね?
分かりましたっ。
わぁ…具材がしんなりしてきましたよ?
上手に、できているのでしょうか…?
すごくいい匂いが、ずっとしてます…。
あぁっ!す、すみませんっ…しっぽが勝手に動いてしまっていたみたいです。
本当に…美味しそう…です…。
ごくりっ…。
【ニィナ】ほ、本当に、食べてしまってもよいのでしょうか…?
確かに、二人で作ったものですけど…ええと……そう、ですね…。
勇者さまが……そこまで言うのなら…。
わ、分かりました…。
で、ではっ…いただき、ますっ。
はむっ…。
…もぐっ……ごくんっ…。
…うっ……うぅっ…。
…はぶっ、がぶっ……んっ……んくっ…。
うぅっ…うぇ……んんっ…。
…んっ……おい、しぃ……おいしいよぉ…。
こんな、美味しい、のにっ……ひぐっ…涙ぁ……止まらないよぉ……うぇぇ…。
ばくっ……んぐっ……ごくっ……んぅっ…うぅぅぅぅぅぅぅ。
うぅ……ぐすっ…。
…すごく、美味しかった、です。
勇者さま…。
ぐすっ…あのっ!改めて、お願いが、ありますっ…!ぐしっ……。
お家に、置いていただく代わりに、私に家の仕事をさせてくださいっ!勇者さまのお手伝いを、させてくださいっ!勇者さまのために、必ず、美味しい料理、作れるようになります。
いっぱい練習します!きっと、役に立てるようになってみせますからっ!はいっ!いろいろ教えてください!頑張りますっ!