ふわふわ家出お嬢様テキストプロローグ
「ふわふわ家出お嬢様」プロローグ台本
【場面・郊外の歩道。家出を決行しようとする靜音が、実家の大邸宅の門の前で、家屋と青空を見上げながら。正午頃】
(※事務的に)
「プロローグ 靜音の旅立ち」
(※うれしそうに)
まあ、いいお天気♪
空の青みも一段と濃(こ)くなって、いよいよ春がそこまで来ておりますわね。
雲もなく、風は穏やかで、日差しも柔らかで……。
絶好の家出日和(びより)ですわね。クスクスッ。
(※あらたまって)
お父様、お母様。黙って家を出る我(わが)侭(まま)を、どうかお許しください。
きょうより分(ぶ)倍(ばい)河(が)原(わら)靜(しず)音(ね)は、分倍河原家の庇(ひ)護(ご)を捨て、ただの靜音として生きてゆくのです。
靜音は、食いはぐれのない籠(かご)の鳥よりも、大空を舞う野(の)の鳥でありたいのです。
ショルダーバッグに詰めた身の回り品と、おととしの誕生日にお母様に買っていただいた愛用の日傘。
これだけが、いまの靜音の全財産です。
自立し、自活し、そして世の理(ことわり)を見(けん)聞(ぶん)し、必ずや大人の女性になって戻ってまいります。
その日まで、遠くより靜音を見守っていてくださいませ。
(※明るく)
では、いざ参りましょう。
行(ゆ)く当てのない旅ですから、日傘に当たるそよ風に押されて、ふわふわと……ゆるりゆるりと参りましょう。
クスクスッ。
(了)