Track1:すみの自己紹介と、この音源の楽しみ方
;すみの足元は足袋
;タイトルコール
;1/前
【すみ】「あやかし郷愁譚。あかしゃぐま すみ 入園準備」
;環境音 秋の縁側(小鳥の鳴き声)
;3/右
【すみ】「ふぁ……ぁ……ん――(大あくび)」
【すみ】「ううむ、いかんいかん。どうにも気がぬけてしまうの。
なにせここのところといったら――ふぁ――」
【すみ】「……えみがはしゃいではしゃいではしゃいで。
夜中にいきなり起き出したりなども続いてしまっていたからの。
……学園の少等部への入園式が済んでしまえば、落ち着くことであろうと思うが――(苦笑まじりのためいき)」
【すみ】「それまでは……ふぁ――落ち着かせることなど無理であろうの。
少等部の入園式をみかけたときについつい、
『えみも次の春には新一年生じゃぞ』などと申してしもうたわらわがいかにも軽率であった」
【すみ】「『つぎのはるっていつ!?』『つぎのはるもうきた!!?』と……
毎日毎日毎晩毎晩、よくもまぁあのはしゃぎっぷりがつづくものかといっそ感心させられるが……
(愛情たっぷりのため息)――えみじゃから、の」
【すみ】「とは申せ……ふふっ、あれだけせっつかれつづけると、わらわとて、入園式が楽しみで楽しみで仕方なくなってきてしまう」
【すみ】「お主とわらわのかわいいかわいい一人娘の晴れの舞台となるのじゃからの。
楽しみと感じぬ方がおかしかろうが――
(呼吸音)(呼吸音)――うふふっ! しかし、それにしても気が早すぎではあろうの。夫婦揃って」
【すみ】「おもしろいものじゃ。あるいは夫婦は、考え方もだんだんと寄り添うてくるものであるのかもしれぬの」
【すみ】「なれば……うむ。今日一日、えみの入園式の準備を、いまのうちからはじめてしまうのがよろしかろうか」
【すみ】「お隣の有島ありすが、桂浜の水族館に、えみと夏葉を連れて遊びにいってくれておる。
せっかくの、ひさかたぶりに夫婦水入らずで過ごせる一日。
いや、やはりそれではあまりに色気を欠くかとも――(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)」
【すみ】「それでよいなら、入園式の準備としようか。
いささか気が早くはあるが、この先なにがあるとも知れぬ。
できることはできるうちにが、うむ! やはり一番よろしかろうぞ」
;SE すみ立ち上がる。
;3/右→;1/前
【すみ】「そうと決まれば仕度じゃの。
わらわは――そうじゃの、針仕事の準備をはじめておくゆえ、
お主は、もろもろの音を聴き逃さぬよう、
頭かぶり耳はさみ式音増幅器か、
耳穴詰め込み式音増幅器を……(呼吸音)――ああ、うむ」
【すみ】「へどほんか、いやほん。ううむ、横文字はあまり好みはせぬが、そう申したほうが簡潔とのことであれば、いまはそのように扱おう」
【すみ】「へどほんかいやほんを……(呼吸音)――ふふっ、なんじゃ、娘と妹が不在になると、急に甘えたさんになってしまうの」
【すみ】「いやいや、そうしたところも愛おしいゆえ、甘えたいだけ甘えるがよろしかろうぞ。
今日のわらわは、お主の妻であると同時に――ふふっ、えみと夏葉がでかけておる分、すみおかあさんにも、すみおねえちゃんにもなってやれるゆえ、の」
【すみ】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――ふふっ
では、お望み通り、思いっきりに甘やかそうぞ。
まずは、お耳への装着からじゃの。――ん……(呼吸音)」
;SE 両耳ガサゴソ
【すみ】「……(呼吸音)――うむ。これでよろしかろうか。
確認せねばの」
;3/右
【すみ】「(息を吸って) み・ぎ・み・み――うふふっ。そうして」
;7/左
【すみ】「ひだりみみ~。でもって今度は~」
;7/左→;1/前→;3/右
【すみ】「ぐるうううううううううりとゆっくりまわりこんでの~」
;3/右 (ふきかけ/囁き)
【すみ】「(ふーーーーーーーーっ)(ふっ)
んふふっ、ふきかけと、さ さ や き じゃ!
(右ほっぺにリップ音で離れる)」
;3/右→;1/前
【すみ】「うむ! よーく聞こえておったのならなによりじゃ。」
;1/前
【すみ】「なればわらわは、ミシンの仕度を……
(呼吸音)(呼吸音)――ああ、ミシンは横文字ではない。
日本語じゃ。
ゆえ、横文字が苦手なわらわにも、なんの抵抗もなく言葉にできる」
【すみ】「英語の……なんじゃ、そっ、そ・お・い・ん・ぐ――んぐ、ま・し・ん――縫い物をする機械――なる意味に言葉が、日本語として馴染んで、“ミシン”となったものなのだそうじゃからの」
【すみ】「その辺のことは夏葉に教えてもろうたのじゃ。ふふっ、あれも英語を習うようになり、すっかりわらわの先生きどりじゃ」
【すみ】「英語の横文字と、英語由来で日本語になったカタカナ語とは全く別のもの……夏葉先生の授業のおかげで、すんなりと喉からでてくるようになった言葉が増えたゆえ、たしかにまことありがたくはあるが──ああいや」
【すみ】「この手の話をしておるといつまでたっても終わらなくなる。
今はともかくミシンの仕度じゃ。
さささ、一緒にまいろうぞ!」
;SE 畳の足音数歩
:SE ふすま開く→ふすま閉じる
;環境音 F.O.