海月の耳愛撫
えへへ、次はなにして遊ぶ?
おままごと?貝あわせ?
あなたの好きな遊びでいいよ。
お姉ちゃんいつまでも遊んであげるから・・・。
外がどうかしたの?
ああ・・・そういえばもう暗くなって来ちゃったね。
え、ど、どうしたの・・・?
ねえ、お願い・・・泣かないで。
どうして泣いてるの?
遊ぶの飽きちゃった?
もう貝殻拾いしないの・・・ほら、綺麗な珊瑚の欠片あげるから・・・ねえ。
ん?もんげん、っていうのはよく解らないけど・・・
わたしは絶対あなたを怒ったりしないよ。
だから安心して、ここにいよう。
それじゃあだめなの?
えっと・・・おかあさん・・・ああ、あなたの母体だね。
・・・お母さんに会いたいの?
大丈夫。わたしがあなたのお母さんしてあげるの。
わたしね、勉強したんだよ。
まだ知らないことも多いけど・・・母親が子供にしてあげること、見たの。
こんな風に・・・耳を何か細いものでいじくってた。
おひざに頭乗せるんだったよね。
いいから、ほぉら・・・目、つぶっちゃだめだよお。
恥ずかしいの・・・?
わたしは恥ずかしくないのに、どうして?
えへへ、あなたにお姉ちゃんって呼ばれるの嬉しいからどうしてでもいいよ。
なにをしているのかは解らなかったけど、その子供気持ちいいって喜んでた。
だからきっといいことでしょう?
指じゃ入らないなあ・・・あれはもっと細かった・・・例えばあ・・・。
しゅるしゅる・・・入っていくよお。
母親が使っていたのはもっとかたそうなどうぐだったけど・・・やわらかい方がきもちいいよね。
・・・わぁ、お耳の中って意外と汚れてるんだあ。
わかった。
あの母親はこれを取ってあげていたんだね。
先の曲がった細長い棒・・・名前が解らないけど、あれはその為の道具なんだあ。
えへへ、人間のこと・・・あなたのこと、また覚えた。
みみかきっていうの。ふぅん。
・・・え、そんなことも知らずに今なにを入れてるのかって?
それは・・・えへへ、おててだよ。
嘘じゃないよお。
目を開いて確認してみればいいじゃない。
顔赤くなったあ。あったかいね・・・あなたの頭が乗ってるところ、溶けちゃいそう。
だめ・・・そうしたらあなたの頭、沈んじゃうもの・・・。
どう?ちゃんとできてる・・・?
耳の穴の白いの・・・あなたの垢どんどん取れてるよ。
あなたのこと、お掃除してあげてる。
お母さんみたいにおそうじしてあげてる。
あの道具があればもっと取れるのかなあ・・・
でもいいや、これは人間の母親にはできないもの。
わたしだけ・・・なの。
こうかな・・・くりくりって・・・耳の穴って複雑な形してる。
入り組んでて毛が生えてて、洞窟みたい。
撫でてあげる・・・よしよしするの。
くすぐったいの?
足の指、もぞもぞ動いてる。かわいいの。
あっ・・・奥にある白い膜はなんだろう?
わたしの声に反応してふるえてるのかな?
聴覚器官みたいだね・・・ふぅん、こんな形してるんだあ。
じゃあ大事にしなくちゃ・・・わたしの声たくさん聞いてほしい。
あなたの為に覚えた言葉がいっぱいあるの。
うん、あなたの、だよ。
大きい垢取れた・・・栄養・・・はむっ、んぅ・・・。
ふえ?別に変なことなんてしてないよお?
みんなしてることしかしてないの。
えっと・・・耳は二つあるから、もう片方も汚れてるよね。綺麗にしなきゃ。
両方いっぺんにしたら楽しそうだけど・・・
それじゃあおひざに頭乗せられないし・・・迷うなあ。
えへへ、わたしにはできるよ。両方のお耳の穴覗くの。
次にするときにはそうやるの。
じゃあ、おひざの上で反対向いて・・・ね。
えへへ、あなたのおみみ・・・やわらかいね。
あなたって手も足もほっぺたもあったかくてやわらかくって・・・
食べちゃいたいくらい。
本当に食べたりしないよぉ。まだしない。
こっち向いてるとあなたが喋る度にお腹に息があたるね。
溶けちゃったらどうしよう・・・気が抜けたらなっちゃうかも。
おめめ、開けてくれないの?
そんなにぎゅーって閉じたら痛くなったりしない?
・・・そう、あなたがいいならいいの。
えへへ、入れちゃうの・・・ほら、しゅるしゅるって・・・。
うん、いいの。優しくしてあげたいの。
だってわたし、あなたが好きだから。
ぜったいに怒らないし、こんなに可愛いあなたをひとりぼっちにしない。
綺麗な貝殻も珊瑚もいっぱいあげるし、いつまでも遊んであげる・・・
お耳もくすぐってあげるの。
こしょこしょ・・・きもちいい?
やわらかくってわたしもきもちいい・・・ほんと?上手にできてるの?
そっかあ、喜んでくれてうれしい。
わたしじゃなきゃできないの。
あなたにしかしてあげないの。
ほぉらもっと・・・えへへ、こしょこしょするんだあ。
穴の中にいっぱいはえたちっちゃなおけけさん、その垢をこっちにちょうだい。
お耳の穴を触ってるのに、体の他の部分まで反応するんだね。
面白いなあ・・・。
こっちにもあった・・・白い膜。
ああ、震えてる・・・。
あなたがわたしの声を聞いてくれてる。
喋れるようになったから、あなたの膜を震わせることができてる。
わたしも気持ちいいし、幸せなの。
あれ・・・頭、重くなった・・・?
力抜けてきちゃったんだあ。
お顔もおててもとろんって、まるで溶けちゃってるみたい。
あなたの体は溶けたりしないのに・・・不思議だね。
もっと撫でてあげる。
おみみの垢全部取り去って、毛を、膜を優しく撫でてあげるの。
ねえ、きもちいい?ねえ?
えへへ・・・誉められたあ。
おみみ、いつでもしてあげるよ?
あなたがして欲しい時に好きなだけするよ。
だからお願い、泣かないで・・・帰りたいって言わないで。
返さないから。
んう?あくびでわたしの言葉聞こえなかったの・・・?
えへへ、それでもいいの。
泣いて、みみかきされて、眠くなっちゃったんだあ・・・。
いいよ・・・わたしがずーっとそばにいてあげるから眠っちゃっていいの。
おめめ閉じたまま眠りに入ってしまえばいいんだよ。
やわらかでひんやりなもので、包んでいてあげるから。
おやすみなさい。
もう離さないから・・・。