<Tr1: ぺろと雨降りと飴玉と:ドラマパート>
;飴舐めてない状態でスタート
;SE 雨降り。春雨。
:SE リスナー自身の足音。水たまり踏んだり
;14/後左遠(遠く
【ぺろ】「んんん~?」
;SE 追いつかけてくる足音 ;14/後左遠→;6/後左→;7/左
;7/左 "あ"は喜び
【ぺろ】「あんじょうすんまへん。
ちょこーっとだけ傘、失礼しますな――あ!」
;SE 足音止まる(足をとめておしゃべり)
【ぺろ】「わぁい! やっぱりおにーさんやったー。
遠目の雨霞(あめがすみ)の後ろ姿でもな?
きっとそやろなって、えへへ、ぺろ、なんとのー思ぉとったんよ」
【ぺろ】「おにーさんも、おでかけしてらったん?
これからお宿にでも帰るとこ? ぺろはな? お買い物しとったんよ」
【ぺろ】「お買い物袋の中身、見る? んふふ~
<SE ビニール袋がさごそ> じゃじゃーん!
かき氷のシロップ」
【ぺろ】「あはは、さすがにぺろでもこの季節にかき氷はよー舐めんかな。
これは、かき氷に使うんとちごて、あ、そおそお!」
;SE 袋がさごそ
【ぺろ】「新製品の棒飴もおためしで買ーたんよ。
大袋によーさん入っとるから――ん――<SE 菓子袋あけ>
はい、傘にいれてくれたお礼に、おにーさんにも一本」
;7/左 "こっちむいて"のあとで ;1/前
【ぺろ】「ね? こっちむいて? で、ちょこっとかがんで?
個包装もあけたげるさかいにな~
<;SE 個包装開ける>
はい、『あーーーん』」
【ぺろ】「((呼吸音)――えへへ~。
おにーさん、棒飴の棒口からひょこっと出しとると、
なーんや かいらしいなぁ」
【ぺろ】「ほんなら、ぺろも――<;SE 個包装開け>
(棒飴くわえる。以降指示あるかでくわえっぱ)――んふふ~」
【ぺろ】「(飴なめ)――ん~。バナナ味もおいしなぁ。
まだぺろ、つくったことあられへんから、今度つくってみよかなぁ」
【ぺろ】「ん? って――おにーさん。
ぺろが足止めさせといてアレやけど、
こないないとこで立ち話しとっても足元やら裾やら濡れてまうし、な?」
;SE ふたりのゆっくり歩く足音(継続。移動と足を止めてるのの区分け表現のため)
;7/左 (相合い傘で歩いてる)
【ぺろ】「あー、で? (呼吸音)――ああ、うん。
あれれ? おにーさんにはまだゆーとらんかったっけ」
【ぺろ】「ぺろのお仕事はな? 飴屋さんなんよ。
昔ながらの天然素材の飴からな?
新しい素材をがんがんつこーた実験作まで、
いろーんな飴を作り売りしとるん」
【ぺろ】「(棒飴口から飴出して) せやさかい、ぺろはいっつも飴玉しゃぶっとるんよ?
研究のため。
ふふっ! ま、もちろん口さみしいとか美味しいとかゆーんもあるけどなー」
【ぺろ】「で。(飴咥え)さっき買ーたかき氷シロップも、飴づくりの材料なんよ。
飴に色付けするのに、いろーんな色の食紅の類(たぐい)つことるんやけど、かき氷シロップも、色付けに使えるさかいに」
;”あ” いたずらっぽく
【ぺろ】「かき氷シロップには、最初から香料も入っとるし、砂糖と塩とブドウ糖も入っとるさかいに、ただ食紅だけをまぜこむんとは、色合いだけやのーて、味も風味も変わってくるんよ――あ」
【ぺろ】「うふふっ、おにーさんは知っとる? かき氷シロップの秘密。
――知りたかったら、な? 耳かして」
;SE 足音とまる
;7/左 接近囁き
【ぺろ】「(飴を口から出す) あんな? かき氷シロップってな?
イチゴもレモンもメロンもみぃんな、おんなじ味をしとるんよ?」
;SE 傘が大きく動く
;7/左
【ぺろ】「あはは! そないにびっくりしよったん?
あんまりビクって動くから、傘がおちょこになりかかったやんかー!
そかそか、知らなかったんやなー(飴咥え)」
;SE ふたり歩く再開
【ぺろ】「今度かき氷食べるときな? お鼻つまんで、目ぇつむって食べてみるとよぉーおわかるよ?
みぃんなおんなじ味しよるって」
【ぺろ】「……(呼吸音)――せやねぇ。ほんまや。
色やら匂いやら、味がしぃひんものから味を感じとるんやから不思議よねぇ。
その辺は、人間も、ぺろみたいなあやかしも変わらんのも不思議――ああ、でも」
【ぺろ】「な、おにーさんはなな様ゆ-土地神様知っとる?
もともと蛭妖(ひるよう――肌にぺっとり張り付いて血ぃ吸ってくる、あの蛭のあやかしやった、あやかしあがりの土地神様なんやけど」
【ぺろ】「そのなな様な? うちにときどき買い物にきて、飴を選んで買ーてくんやけど、いや、あの神様すごいんよ」
【ぺろ】「うちの飴もな? ちゃあんとゆず果汁やらみかん果汁しょうが汁やら大根汁やら混ぜ込んでつくる昔ながらの飴の他にも、見た目重視で、香料と着色料だけでそれっぽくしあげたヤツと、大きくわけで二種類があるんやけれども――」
【ぺろ】「なな様。ぜーったいに本物の果汁やら野菜汁やらだけを混ぜ込んであるのんしか買わんのよ。食紅や香料、ちょこーっとでも混ぜこんであるのんには手も触れんの」
【ぺろ】「原材料表記とかまるで見もせんで。
出したばっかの新作でもなんでも、絶対にそないにして選ぶさかいに――
あれ、鼻なんかなぁ? 感覚、きっとめーっちゃ鋭敏なんやろなー」
【ぺろ】「でな? なのにな? くふふふふっ!」
【ぺろ】「同じ神様でもな、ものべのにものすごー古くからいよる、星辰ひめみや、ご開祖ちゃんやらいう土地神はんは、もう完全見た目重視なんよ」
【ぺろ】「『これかわいいッス! こっちもいいッス!』って感じで、色やら柄やらで気に入ったのをぽんぽん買ーてくれはって」
【ぺろ】「逆に、昔ながらの生姜飴だのユズ飴だのは色合いが地味~やけんね。ご開祖ちゃんに買ーてもろたこと、あれへん気がする」
【ぺろ】「ゆーたら親子連れの、おかあはんとこどもみたいな違いうな感じなんよ、なな様とご開祖ちゃん。
ふたり、仲悪いいう噂も聞くけど……飴選びひとつとっても、まーあ正反対やゆ-気はするな。
逆に、えらい仲良しそーな気もするけどなぁ」
【ぺろ】「あ! 親子ゆーたらうちの店にもな? あかしゃぐまの全妖と半妖――人間とあやかしのハーフの――のおやこづれが月イチくらいで買い物に来てくれるんやけど」
【ぺろ】「すみはん――おかあはんの方は、昔ながらの飴買わせたがって。
けど、えみちゃん――娘ちゃんの方は、きらっきらしたかわいらしいの買いたがってな?
なかなかなかなか――うふふっ、毎度大騒ぎになるよるねんなー」
【ぺろ】「あ……(呼吸音)――うん。きらっきらした飴いうんわな? (ばりばりと飴噛み砕き――ごくん)、えっとな?」
;SE 足音止まる
;1/前
【ぺろ】「あ、おにーさん。ちょこっと買い物袋もっとってくれはる? うちのかばんの中にな? 確か――」
;SE ビニール袋手渡す
;SE かばんあける
;1/前(うつむいて →"あったあった"で顔あげる)
【ぺろ】「んっと~……えっとぉ――
あーあったあった! これこれ、こないなんが、えみちゃん好みの飴やねん」
【ぺろ】「きらっきらで綺麗で、宝石みたいやろ?
糸寒天とグラニュー糖と食紅で作る、琥珀糖(こはくとう)いう飴やんなぁ」
【ぺろ】「ぺろとしてはまぁ、水飴ベースの飴の方が好みやけどな。まぁ――はむっ(飴舐め。以下、舐めっぱなし)――ん――これはこれでちゃあんとした飴やし」
;SE 歩き再開
;7/左
【ぺろ】「着色料――食紅も香料も、安全無害な代物なんやし、
今日日(きょうび)入っとらんヤツ探す方がむつかしいくらいなもんや思うけど、すみはんはなるたけえみちゃんには無添加無着色のもんだけ食べさせはりたいみたいでなぁ。
えみちゃんといっつもわーわーやりおうとるんよ」
【ぺろ】「ちびっこは、ふふっ、やかましけどかいらしもんやなぁ。
あんなん見とったら――ん~~。ぺろもなんや、
おかあさんとかになってみるのも悪くなかったかもなー、なぁんて思わされたりもしてまぅなぁ」
【ぺろ】「……((呼吸音))――あははっ! 『過去形じゃなくて未来形では?』なぁんて、おにーさんもなかなか口がお上手やなぁ」
【ぺろ】「けどな? ぺろがこないな、わらしみたいなナリしとるんは、単に、ぺろいう名前にあわせとるだけのことやねんな」
【ぺろ】「ほんまはぺろ、1500年以上は生きとるからなぁ。
外観それにあわせるんなら、しわっくちゃのおばあちゃんやし」
【ぺろ】「うふふっ、話しとると全然そんな感じしぃひんのん?
ほーんま、おにーさんお口お上手や」
【ぺろ】「けどまぁ、そやね。
ぺろは他のあやかしたちと違ごて、
ちょこちょこ新しいこと試すさかいに、
それで気ぃが若い感じでおられるのかもしれんねー」
【ぺろ】「飴作りもなぁ……ほんの三十年か四十年か、
そのくらいまえからはじめたばかりのことやしなぁ」
【ぺろ】「せやさかいに、まだまだ満足には作れへんけど……
組み飴だけはな? 最初からずーっと作り続けてるさかいに。
へへっ、最近はちょこっとな? かわええのん作れるようになってきてるかなって、自分では思うてん」
【ぺろ】「え!? おにーさん、組み飴しらんの?
(飴噛み。ばりぼり→ごくん)
いや、いくらなんでも知らんことないよ。
見たら、きっとわかるし」
;SE 足音止まる
;1/前
【ぺろ】「あれ?――ぺろの買い物袋、って!
おにーさんにもたせっぱなしになっとった!
申し訳ない――ことないの? そのくらい軽いもの?
えへへっ。ほーんまにーさん、かっこつけやなぁ!
でもま、実際んとこかっこええわ」
【ぺろ】「やのーて、組み飴。組み飴やんなぁ。
んとな? ぺろのかばんに、さっき確か――
<かばんあけ。がさごそ>
これこれ、こんなん。な? おにーさん手ぇ出して?」
;SE 手のひらに飴、ぽとっ
【ぺろ】「ピンクと白でかわいいやろぉ。
中もよーみて、ウサギさん。
切っても切っても切っても切っても、
このかいらしウサギさんが出てきよるのが、組み飴や」
【ぺろ】「あ! うんうん。キンタロ飴とも言うなぁ、たしかに。
ぺろたち飴屋の界隈では、組み飴いうけど、そかそか、
おにーさんたち、飴屋でない人間にはキンタロ飴いう方がわかりやすいんやなぁ……って」
【ぺろ】「どないしたん、おにーさん。
そないにしげしげ飴見回して……
え? そやよ? ゆーたやん。
ぺろは、組み飴作るのだけはまぁまぁ最近できてきたって」
【ぺろ】「(嬉しい呼吸音)――へっ……えへへっ。
なんや、そないいわれたら照れてまうやん。
ま、ぺろも自信作やさかいにおにーさんに見せたんやけど、そないな……芸術品やら言われるほどの出来栄えやないて。
こそばゆいやん! そないに褒められたら~」
【ぺろ】「なんならにーさんにだって、組めんことないもんやし、
組み飴――おっ!?」
【ぺろ】「おにーさんの目玉、急にきらきらしてきよったなぁ。
美味しそ――いやいや、ええと――
興味あるのん? 組み飴組むの」
【ぺろ】「そかそか。ほんなら――な?
このあとおにーさん時間あるなら、雨宿りがてら、
ぺろの飴屋に、寄ってみぃひん?」
【ぺろ】「この雨やさかいに、飴屋によらはる酔狂な人もあやかしも、そんなよーけにはおらんやろうし――ふふっ」
;7/左 接近囁き
【ぺろ】「ぺろ、なんやおにーさんのこと気に入ったさかいに、
普段はやらん体験教室、特別にひらいたげてもええかなぁ、って」
;1/前
【ぺろ】「あはは! そんなら決まりやぁ~! それっ!」
;SE 足音ふたり、少し早足
【ぺろ】「決まった以上は、善は急げや!」