峠の飯屋と右耳耳かき
;1/前 (こたつテーブル越しに向き合って座る距離感)
【ラン】「(リラックスした吐息)」
;使用環境音:峠の茶屋_座敷から聞こえる台所の音 F.I
【ラン】「『峠の飯屋(めしや)』……か。
こんなお店があるだなんて、ランは少しも知らなかったよ」
【ラン】「たまにはゆっくり歩いてみるものだね。
列車の速度では見落とすものを、見つけ出すのは素敵なことだ」
【ラン】「……こうしてゆっくり畳の上に座っていると、感じるよ。
今日のランは、かなり気を張っていたんだなぁ、って。
音探し、音に意識を配ること……
慣れないことに集中するのは、やっぱり負荷がかかるものだね」
【ラン】「個室があるお料理屋さんでよかった。
障子一枚だけでもあると――ぐっとくつろげる感じがする。
今は、うん……(ほおっとした息)
――お店の人とのおしゃべりとかより、こんな時間の方がいい」
【ラン】「……疲れたなぁ。けど――(安堵の息)――楽しかった。
いや、過去形じゃなく、現在進行形でランは、とても楽しい」
【ラン】「……おっきりこみっていったっけ。ここのおすすめ。横河の郷土料理。
ランは石炭でのお相伴になってしまうけど――ふふっ、どんな料理か、目にするものとても楽しみだし――」
【ラン】「(相手の顔をにこにこ眺める感じ、ゆったりとした呼吸音。一分ほど)」
【ラン】「……音探しをしていたせいかな。座敷の向こう、お料理をつくってくれている音も、ここちよいものと感じるよ。
マイロード。貴方のために、誰かがこころをこめてくれてる――
その音だもの、ランにも、とても幸せに響く」
【ラン】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)……お料理、か。
お料理をできるレイルロオドは、たぶん、ほとんどいないんだよね。
御一夜の、レイルロオド・サミットのときにそういう話になったんだけど……」
【ラン】「お料理が得意って明言してたのは、常州電鉄(じょうしゅうでんてつ)のかかあさんと、みかん鉄道の紅(べに)くらいなものだった」
【ラン】「まぁ、紅は一時期……列籍を抹消されていた時期に、車体を『ガタンゴトン亭』っていう食堂として運用されて、そこで働いていたそうだから――仕事として覚えたんだろうけど……」
【ラン】「かかあさんは、純粋に趣味……楽しみ、として作ってるていうな話だった。
でね、料理を人から教わってるってレイルロオドの話も聞いた。
ハチロクさん――あの有名な8620形(はちろくにいまるけい)トップナンバーレイルロオド」
【ラン】「それで、ランは思ったんだ。少しね。
ハチロクさん――ランよりもずうっと古いレイルロオドが、練習をして、お料理をもしも覚えられるなら」
【ラン】「ランも――お料理を覚えられるのかもしれないなぁって。
お料理を覚えられたら、マイロード、貴方にふるまうことができたら……
『おいしい』って、もしも言ってもらえるのなら――あっ」
;SE 環境音 F.O
;座敷のふすまがひらく
;SE 料理が届く。トレー+食器+汁ものがテーブルにおかける
;環境音 F.I, 室内環境音(空調のみ)
【ラン】「(感心の息)これが『おっきりこみ』か。
ほうとうと似てるね……かぼちゃが入っているかいないかの違い、かな」
【ラン】「って、これは冷めたらおいしくない料理だよね。絶対。
いただきますしよう、マイロード。
ランも、石炭を用意するから。ん――」
:SE ごそごそ。ポーチから石炭を出す。
【ラン】「……おまたせ、マイロード。
それじゃあ、食べよう。
『いただきます』」
;環境音 F.O.
【ラン】「……(ばりっ、ぼりっ、がりっ)――ごくんっ」
;環境音 F.I.
【ラン】「ふうっ。ごちそうさま。おいしかったー――
(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――ふふっ」
【ラン】「『おいしかった?』って聞くまでもないね。
マイロードのお顔、言葉よりもずうっと雄弁だ」
【ラン】「しかし、ここは本当にいいお店だね――
食事はおいしい、配膳も片付けも早くて綺麗。
おまけに……ふふっ、マスターが眠たそうに見えたのかな」
【ラン】「他にお客もいないから、のんびり休んでくださいね、って――
サービスのドリンクまで出してくれて」
【ラン】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――
美味しいもので満腹できて。その上こんなにゆっくりできて――(満足の吐息)――
――満たされるって、こういう感じのことをいうのかな」
【ラン】「……ね、マイロード。
ラン、少しだけ――ん……」
;SE 畳の上にじり移動;1/前→;2/右前→;3/右
;////***このあたりから安眠導入を意識して、基本的におさえぎみ。声の強弱ではない方向でメリハリいただけますと幸いです。***////
;3/右(寄り添い)
【ラン】「……レイルロオドのランでもだから。
貴方のお耳が疲れてないか、心配なんだ……
(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)」
【ラン】「ひざまくら――とか、どうだろう。
お耳が疲れているのなら、もちろんいやしてあげたいし……
それに、耳かきもしてあげたいんだ。
ここのところバタバタしてて、しばらくできてなかったから」
;三呼吸目くらいでひざまくら状態になって、うれしい
【ラン】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)」
;3/右 (密着)
【ラン】「ふふっ、それじゃあ、まずはお耳のマッサージからだね。
眠くなったら、眠ってしまっていいからね」
【ラン】「軽ぅく引っ張ってパッと離す。
あのマッサージでいくからね?
まずは耳たぶから。
ん……」
;SE 耳引張りマッサージ
【ラン】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)」
【ラン】「……耳、いっつもよりも少し冷たい。
やっぱり疲れているんだね。
マッサージで、血行しっかり戻さないと。ん――」
;SE 耳引張りマッサージ
【ラン】「(呼吸音)(呼吸音)――ん……
(呼吸音)(呼吸音)――フチも、結構冷えてる感じ……
(呼吸音)(呼吸音)――これ……うん――」
;3/右 接近囁き
【ラン】「(ほーーーっって、手をあっためる感じの息で吹きかけ) *3」
;3/右 接近囁き
【ラン】「これで少しはあったまるよね。
で――」
:SE 耳マッサージ(継続)
;3/右
【ラン】「こうして、指で――(呼吸音)(呼吸音)
揉み込む感じで――(呼吸音)(呼吸音)――
マッサージ、して――(呼吸音)(呼吸音)――
血行、を――(呼吸音)(呼吸音)――」
【ラン】「ん……(集中してる呼吸音)*4」
【ラン】「っと――
<;SE stop>
ああ、うん。お耳に赤みが戻ってきた。
指先にもぽかぽかが伝わってくるようになってたし。
これで右耳は大丈夫そうだね」
;3/右 (接近囁き)
【ラン】「じゃあ、耳かきをはじめるからね。
まずは、あさぁいところから……(呼吸音)――」
;SE 耳かき(浅・継続)
【ラン】「下から、じわじわ――(呼吸音)(呼吸音)――
ひっかい、て――(呼吸音)(呼吸音)――
だんだん、中へ――(呼吸音)(呼吸音)――
中の方に、で……(呼吸音)(呼吸音)――」
【ラン】「めくれ、てるとこ――(呼吸音)(呼吸音)――
慎重に、して――(呼吸音)(呼吸音)――
上の、フチまで――(呼吸音)(呼吸音)――
ゆっくり、と――(呼吸音)(呼吸音)――」
【ラン】「ん……(集中してる呼吸音)*4――
っ――」
;SE stop
;3/右 接近囁き
【ラン】「これでどうかな――失礼するよ。
(ふーーーーーーーーーーーーーーーっ)」
;3/右 密着 ”よし”で→;3/右(通常
【ラン】「ん……(耳の中を覗き込んでる慎重な呼吸音)
ん――(同上)――
ん……っと――うん! よし」
;3/右
【ラン】「なかなか素敵な仕上がりにできたと思う。
耳かき綺麗にするから、少しだけ待って。
んっ……(呼吸音)」
;SE ちり紙引き抜き→耳かきふき
【ラン】「よし、っと――
それじゃあ深いところに行こう」
;3/右 接近囁き
【ラン】「ランのこと信じて、全部任せて。
身体もこころも、ゆるめられるだけ、ゆるめてくれたらうれしいな」
;SE 耳を優しく5回撫でる
【ラン】「(呼吸音)*5」
;3/右
【ラン】「じゃ、はじめるよ。
ん……(呼吸音)」
;SE 耳かき(深・継続)
【ラン】「ん……っと――(呼吸音)(呼吸音)――
これ、ちょっと――(呼吸音)(呼吸音)――
拍子抜け、しちゃうほど――(呼吸音)(呼吸音)――
綺麗、だね――(呼吸音)(呼吸音)――」
【ラン】「あ、けど――(呼吸音)(呼吸音)――
ん……(呼吸音)――っと――(呼吸音)――
ああ、うん――(呼吸音)(呼吸音)――
いっこ、ごろって――(呼吸音)――大きい、の――(呼吸音)」
【ラン】「ん……(集中した息)*3――
で……(集中した息)*3――」
【ラン】「すくって――(呼吸音)(呼吸音)――
乗った、うん――(呼吸音)(呼吸音)――
あとは、ひたすら――(呼吸音)(呼吸音)――
こぼさないよう……(呼吸音)――慎重、に――(呼吸音)――」
【ラン】「(息をつめておっきなのを耳の穴から運び出す)
――~~~……っ――うん」
;SE stop
;SE 耳かきをちり紙でふく
;3/右 接近囁き
【ラン】「あとは――
(ふーーーーーーーーーっ)
ん~~……おっきいのはなさそう、かな――けど」
;SE<耳かき(深・継続)
【ラン】「もうちょっとだけ――(呼吸音)(呼吸音)――
ほじりすぎないよう――(呼吸音)――気をつけ、て――(呼吸音)――
こまかい、やつも――(呼吸音)(呼吸音)――
とっちゃいたい、かな――(呼吸音)(呼吸音)――」
【ラン】「(呼吸音)(呼吸音)……っ――
(呼吸音)(呼吸音)――っと――
(呼吸音)(呼吸音)――ふふっ――
(呼吸音)(呼吸音)――ん……」
【ラン】「(呼吸音)――あと――(呼吸音)――もう――
(呼吸音)――ちょっと――(呼吸音)――だ、け――」
【ラン】「んっ――
(集中した呼吸音)*4――
っと……(呼吸音)――ん……」
;SE stop
;耳かきふき
;3/右 (接近囁き)
【ラン】「(ふーーーーーーーーーーーーっ)」
;3/右
【ラン】「ん~~……(呼吸音)――
んっ――(呼吸音)――
どう、かな――(呼吸音)(呼吸音)――
ああ――(呼吸音)――うん――(呼吸音)――うんっ」
【ラン】「お疲れ様、マイロード。ふふっ。
右のお耳はすっかり綺麗で、血色ももどって――
うふふ、まるで新品のお耳みたいだ」
;3/右 (接近囁き) ”ふふ”で→;3/右
【ラン】「そしたら今度は、左のお耳も新品のお耳にしてあげなきゃだね――
ふふっ」
;3/右
【ラン】「ランが『ぐるーん』っていったらさ。
身体ぐるんて入れ替えて、左のお耳、上にむけてね」
【ラン】「それじゃ、いくから。
せーの、
『ぐるーーーーーーーーーん』」
;環境音 F.O.