Track 0

Next Track Back

エルフ耳かき

(ガサっと茂みの音) おい、人間。 貴様、ここで何をしている。 ここはエルフの森、人間は不可侵の場所だ。 さっさと帰れ。 ・・・は? エルフに耳かきされると、どんな病も治る・・・だと? それは迷信だろう。 って、おい、落ち着け。 大体、お前は健康だろう。 はぁ? 童貞の病? そ、それは病じゃないだろう! あ~、もう~。 分かった、分かったから。 耳かきしてやるから、終わったら、さっさと帰るんだぞ。 じゃあ。 ほら。 (膝を叩く音) (恥ずかしそうに) 膝枕・・・。 しないと、できないだろ。 ・・・耳かき。 (膝枕する音、右耳が上、左耳が下) (右耳、通常距離) ん? そう言えば耳かき棒がないから、できないじゃないか。 ・・・って、あ、ああ。 持参してるんだ・・・。 お前、しっかりしてるな。 じゃあ、それを貸せ。 耳かきしてやるからな。 じゃ、行くぞ。 (右耳、耳元、囁き声) ん。 んん。 ふう、んっと。 お前、なかなか耳垢を溜めているな。 汚いから童貞なんじゃないのか? んん。 んっと。 なかなかキレイにならんな。 このっ・・・。 んっく。 ん? キレイなエルフのお姉さんに耳かきされて幸せ、だと? あ、あのな。 ・・・て、テレるじゃないか・・・。 それにしても、よくこの森に入ってこられたな。 この森には強力な結界が張ってあるんだ。 普通の人間には入って来れないはずなんだが。 ・・・は! そ、そうか。 40過ぎても童貞だと魔法使いになれるって言うのは、本当だったんだな! え? 『エルフの森入り口』の看板が出てた? い、いつの間に、そんなことに・・・。 ん。 んん。 (耳かき終了) よし。 こっちはキレイになったぞ、童貞人間。 梵天の出番だな。 ふ~~~~。 (梵天の音) ふ~~~~。 (梵天の音) どうだ? 少しは童貞に効いたか? 何? 反対の耳もしないといけないのか? ったく、仕方ないな・・・。 じゃあ、反対を向け。 って、ば、バカ! 『向け』っていうのは、それを『剥け』ってことじゃなくて、顔の向きを変えろってことだ! 勘違いにも程があるだろ! さっさと、その見苦しいキノコをしまえ! (寝返りする音) (左耳が上になる) (左耳、通常距離) (独り言) はぁ~~。 この人間、面倒くさいタイプだ。 早く終わらせて、さっさと森から追い出さそう。 じゃあ、こっちもやってやるから、おとなしくしてろよ。 (左耳、耳元、囁き声) そ~ら。 んん。 ん。 ったく、何でこんなに汚いんだ。 エルフはキレイ好きだから、こんな汚物を見るのは、本当にイヤなんだ。 おい、お前。 自分でもちゃんとやらないか。 いいトシした大人だろう。 まったく。 ん、んん。 んっく。 あ、お前。 耳の中にホクロがあるじゃないか。 知っているか? 人間界のホクロ占いでは、耳の中にホクロがある人間は、リア充なんだそうだ。 ・・・ホクロ占いって、当たらないものなんだな・・・。 いや、こっちの話しだ。 気にするな。 ん、んん。 ん、ん。 お、奥に大きいのがあるな。 ちょっと奥に入れるから、痛かったら言ってくれ。 そ~れ。 大丈夫か? 平気か? んっしょ。 この、この。 くう。 ん、んん~。 んん~~~~~っと。 ふぅ、取れたぞ~。 おい、見ろ。 大きい耳垢が取れたぞ。 ふふ、私は意外と耳かきの才能があるのかもしれないな。 じゃあ、あとは細かい垢を取るからな。 ん。 ん。 ん。 (耳かき終了) よし、こんなものでいいだろう。 じゃあ、梵天で仕上げだ。 ふ~~~。 (梵天の音) ふ~~~。 (梵天の音) よし、終わったぞ、人間。 起きていいぞ。 (頭を起こす音) どうだ? これで満足しただろう? さっさと森から去れよ。 ・・・は? 童貞のまま? 騙された? なっ・・・!? あ、当たり前だろ! そもそも、その言い伝えが間違ってるんだぞ! バーチャンがやってる民間療法ぐらい、間違ってるんだよ! とにかく、私はもう関係ないからな。 じゃあな、人間。 (立ち去る音)

Next Track Back