Track 2

釣子に行くならまずは猫吠/(釣子電鉄列車内)

;環境音 銚電列車内 F.I. ;西瓜とマスターはロングシートに橫ならび ;マイクと同視線と、マイク向きとを任意に使い分けていただけましたら幸いです。 ;3/右 【西瓜】「……とても清潔な車内です。ゴミひとつ落ちていません。 日ノ本の鉄道車両の清潔さは、町無いなく世界でもトップクラスです」 【西瓜】「けれど──(きょろきょろとあたりを見回す呼吸音)」 【西瓜】「陽射しがあまりにつよく射し込むからでしょうか。ほとんどの窓の日除けが下りているのが少し残念です。 西瓜は日除けを少しあげて、せっかくの車窓を楽しみたく思うのですが……(呼吸音)(呼吸音)」 ;$=SE 日除けあげる 【西瓜】「ふふっ、でしたら少しだけ。西瓜と先生が外の景色を眺められるだけ、日除けをあげてしまいましょう。 $ っ……(呼吸音)──っと。このくらいでいいようですね」 【西瓜】「♪ (窓の外をうきうき楽しむ呼吸音 30秒ほど)──中之町の駅は醤油工場が目立ちましたが、そこから先は、住宅街と森ばかりが目立ちますね」 【西瓜】「釣子は海の町のはずなのに、背中側の窓を見ても、正面側の窓を見ても、海が見える気配はなかなか感じられません。 少し不思議で面白いです──あ」 ;SE 減速→停車 【西瓜】「駅につきました。『本釣子(もとちょうし)駅』……完全に森の中の駅ですね。あ──」 【西瓜】「先生! あれを見てください。駅名標に副駅名がつけられています。 『のぼり釣子、本釣子』──ああ、これがアルジェが聞かせてくれた、駅名スポンサー制度ですね……ぁ」 ;SE 列車発車 【西瓜】「次の駅でも、その次の駅でも。釣子電鉄のすべての駅で副駅名を見ることができると、前回の視察のときに、アルジェが誇らしげにきかせてくれました」 【西瓜】「その秘密は、『釣電ネーミングライツ』制度──釣子電鉄を応援し、スポンサードしてもらうかわりに、副駅名の命名権を協賛企業に与える制度なのだそうです」 【西瓜】「大変おもしろいこころみだと西瓜は感心しました。その話を聞いたとき、西瓜がもしもスポンサーになったら、どんな副駅名をつけようかと想像せずにもいられませんでした」 【西瓜】「海驢島(あしかじま)駅なら、やはりアシカの鳴き声にちなみたいとか、君ガ浜駅なら、西瓜にとっての、"君"──先生の名前をあしらいたいとか…………ああ」 【西瓜】「日ノ本語の、"君"にはですね、先生。その……(少し照れてはにかむ呼吸)」 ;3/右(接近囁き) ‘っ!”で、マスターが赤面したのに連れて照れて、慌てて離れる 【西瓜】「‘いとしの君”──と、敬慕・親愛の情を示す意味もあるのです──っ!」 ;3/右 【西瓜】「そ、それから、そのっ──釣子電鉄の代表駅ともいえる、猫吠(ねこぼう)駅についても、西瓜は副駅名を──ああ!」 【西瓜】「そうでした。猫吠駅で下りたあとのことを、西瓜は先生と相談したいと思っていたのです。 先生、この観光地図をご覧ください」 ;SE 西瓜 地図ひろげる 【西瓜】「さっき話した君ガ浜がここです。西瓜はぜひ先生と、君ガ浜海岸を散策したく思います。 それからここ、水平線が丸く見える丘展望館では、猫吠の全景をひと目で見渡せると聞いています。 街全体を眺め渡すのは、とても楽しく大いに学びになることです。西瓜はぜひ体験したく思います」 【西瓜】「(呼吸音)(呼吸音)──一番の名所となると、猫吠崎灯台だと聞いています。 しかし、‘階段がとてもキツい”とアルジェはかつて西瓜に注意してくれました。 前の視察のときにはマリンパーク、水族館もおすすめしてもらったのですが──」 【西瓜】「(さみしげな吐息)残念。いまは閉鎖されてしまったとのことです。 日ノ本の鉄路は間違いなく復活基調にありますが、その恩恵が日ノ本すべてに行き渡るまでに、間に合わないところもきっとまだまだ──(呼吸音)(呼吸音)──ああ!」 【西瓜】「‘蓄音レヱル”を通じて沿線の魅力を紹介することは、なるほど、確かに鉄道復活の機運を広げる、そのお手伝いにもなるのですね。 そうできたならアルジェもきっと、大いに喜んでくでるでしょう」 【西瓜】「先生。気づきをありがとうございます。 おかげで西瓜は、より積極的に音探しへと臨む意欲を掻き立てられました」 【西瓜】「どんな小さな音も聞き逃さないよう、耳を澄ませて、心を鎮めて……(呼吸音)」 【西瓜】「(走行音に耳を傾ける呼吸音とニュアンス、一分ほど)──ふふっ」 【西瓜】「そのように意識してみると、この小さな電車の奏でる音も、大変に魅力的なものと響きます。 ……(呼吸音)(呼吸音)──とてもゆったりとした速度。レールの継ぎ目を車輪が叩いていく音も、ごと、ごとと大変のんびりです」 【西瓜】「線路にも、ゆるやかなカーブがとても多い。仲国の、遠く離れた二点を一直線に結んで駆ける鉄道よりも、穏やかなものに感じます」 【西瓜】「乗客たちも、いかにも観光の装いであるのに、騒がない。周りの邪魔をしないようにとおしゃべりしている。 ゴミも捨てないし、お酒も飲まない。おしゃべりというざわめきが、けれど穏やかでとても優しい」 【西瓜】「あるいはこれが──この穏やかでとてもやさしい喧騒こそが、”日ノ本の鉄道の音”なのではないか、と…… そう多くの路線に乗っているわけではないので、間違っているかもしれませんけれど──(呼吸音)(呼吸音)──ああ」 【西瓜】「先生も同じように感じてくださったのなら、とても嬉しく感じます。 ならばきっと、この音も──確かに日ノ本の鉄道を示す音の一つなのでしょう──ふふっ」 【西瓜】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)──あ!」 【西瓜】「先生! 下車の準備をお願いします。まもなく列車は猫吠駅につくとのことです」 【西瓜】「猫吠は綺麗なところだと、アルジェは実に誇らしそうに西瓜に聞かせてくれました。 アルジェが誇る光景を、先生とふたり眺められることが、西瓜は楽しみでなりません」 :SE 列車停止→ドア開く ;8/左前 マイクの方振り返り(手を引いて列車の外へ向かうイメージ) 【西瓜】「! さぁ、先生。猫吠の音を素敵を、西瓜と探しにいきましょう!」