Track5 ;横になるっス。となりについてて欲しいッス(ドラマパート)
;ここから完全に安眠導入なので、メリハリ抑えて、基本、ささやきを意識してでお願いできると幸いです。
:SE 布団をかぶる
;11/右遠
「(リラックスの息)……うふふっ、安らぐっすね~」
;環境音 室内。(ストーブなし) F.I
「どうしたッスか? なんでそんなに離れてるッスか?」
「それじゃあ体、冷やしちゃうッスよ。
こっちに来て、いっしょに布団に潜るっす」
「なに遠慮してるんスか。
大事丈夫。これ、必要なことッスから。
さっき言ったっしょ? キミは今、憑き物がおちたところが、ぽっかり空白になってるッスよ」
「佳きかやりに満たされる前に、変なものが入り込んだら、せっかくの祓えが無駄――どころか、かえって有害にもなりかねないスし……それに――」
;SE 布団をぽんぽんと叩く
「自分がぴったり近くにいれば、
悪いものを遠ざけるだけじゃなく、
うふふっ、文字通りのご利益で、隙間、少しは埋められるスから」
「だから、さ?
こないのは、キミ自身にも、キミを大切に想うものたちにも、リスクを負わせちゃうのとおんなじっスよ?
;SE ずりずり動く
;3/右 (やや遠い)
;二度目の大丈夫は自分に言い聞かせる
「もっと近くにこなきゃダメっす。そんな離れてちゃ効果ないッス。
なぁにをもじもじしてるんスか。大丈夫っすよ――大丈夫」
「自分とキミは、恋人同士でもなんでもないッスし。
おまけにカミさまと人間スからね。
……一緒に寝ても、なぁんにもあるわけないッス」
「まぁ、カミ様にもいろいろいるすし?
自分も……えへへ、ときと場合とタイミング次第では――
キミを相手に恋しちゃう。そういう可能性も無くはなかったりしたわけッスけど」
「だけど、“無くはなかった”から、逆に大丈夫なんスよ。
そのタイミングはずっと前――ずうっと前に、もう過ぎ去っていったッスから」
「え? ああ……そうッスね。
確かに自分とキミとが“このものべの”で出会ってからはまだ、ほんの一年はそこらだけ。
”ずうっと前”なんて、存在するわけない話しスよね」
「けど――<SE ずりずり少し近づく音>
お、興味でてきたッスか? なら……」
;超小声
「自分の知ってることならなぁんでも、いまなら特別に教えちゃうッスよ?」
;普通に戻って
「ふふっ、聞こえないスか?
聞こえないなら、聞こえるようにすればいいんス。
例えば――そう。もっと近くによってくるとか」
「……(呼吸音)」
;SE 身じろぎ→ずりずり
;3/右(近い)
「ふふっ、ようやく近くに来てくれたッスね。
これなら安心。どんなものからもキミを守ってあげられるッス」
「(息を吸う)」
「……ん……ふふっ。
キミの匂いがするッス。
自分の鼻にははじめての――なのに、懐かしいキミの匂いが」
;無言で、何をどうつたえるかを整理
「……(呼吸音)」
「……このものべのは、自分――星辰ひめみやを、本来ならば必要としない。
人とあやかしとが手をとりあって、
本当にうまくことを運んだ、ものべのなんス」
「どうしてって……自分は、いわば――
この土地の……ものべの中心とする広い地域の、安全装置ともいうべき、古いカミっすからね」
「ネノカタスクニ――
永遠に明けることも沈むこともない黄昏の国で、
生きるでも死ぬでもなく、ただ、在り続ける
――普段……っていうか本来の自分は、そんないてもいなくてもなんの影響もない存在ッス」
「けど、ものべのに――自分が守るべき土地に重大な危機が訪れたときには、自分の父――星辰大王の娘のひとり――自分の妹の子孫につらなる存在に――」
「そうッス。単にひめみや――当代ひめみやと呼ばれる存在を依り代にして、その肉体を仮初めの己が体と扱って、そうしてものべのの危機を解いて――」
「ものべのの危機をほどいたらまた、すぐ根の国に呼び戻されて。
生きるでも死ぬでもなく、たそがれの中にただあり続ける……それが、自分のさだめ、性(しょう)――
カミとして自分に与えられた、役割なんスよ」
「このものべのでは、だから自分は、何の役割ももたないで。
ただただ根の国でまどろみつづけて――
まどろむうちに、素敵な夢を――
そう、ただの夢を、見たのッス」
「その夢の中のキミは、あかしゃぐまのすみちゃんじゃなくて、別の女の子と結ばれて――!」
;嬉しい
「そうッス。
ご想像のとおり、有島ありすちゃんッスよ」
「どうしてわかった……いや、わかるッスよね。
キミは、そういう男の子ッスから」
「だからこそ、有島ありすちゃんは――
って、いや、これこそ余計な一言ッスね。
聞かなかったことにしてほしいッス」
「ともかく、自分が見た夢の中では、
キミは有島ありすちゃんと結ばれて。
ふたり、お互いを支え合って成長しあっていたのッス」
「けど、ふたりを結びつけてくれた危機――
キミの妹が抱えててしまった大きな大きな問題が、
とどまることなく膨れ上がって――ものべの、瓦解寸前にまでおいこまれたんス」
「そうッスそうッス! そういうときこそ、自分、星辰ひめみやの出番ッス!
このものべのでは、現実の中では出番全然ないままッスけど――夢の中では、あったんス」
「なのに、自分の依代となるべき当代ひめみやが、いやもう、ありえないレベルの失敗を重ねまくってッスね?
その上さらに、リカバリーしようと力を無駄に使ってしまって……自分の依代としての役割を、とても果たせない状態に陥ってしまっていたんスよ」
「それで、自分はたくさんから広く力を借りて――
それぞれの時間を前借りするカタチで、
当代ひめみやに依存しない、そのときだけの依代を、なんとかかんとか作り上げたッス」
「……いまの自分のこの体は、夢でみたその依代と、そっくり同じ姿ッス。
役割に入る前の自分――星辰大王の娘として、生身の体をもっていたころと、まるきりおんなじ。なつかしい、幼い日の姿」
「けど、それはそのまま、弱さの証しでもあるんスよ。
体の大きさは、人でもカミでもあやかしでも、
そのまま器の――ためておける力の大きさっすからね」
「”こんな頼りない体では、ものべのを救えないかもしれない”……夢の中でね? 自分、正直そうも思って、不安だったっす」
「だけど、結果としては救えた。
夢の中の自分に、有島ありすちゃんとキミが、本当にたくさんの素敵な力をくれたから。
その上でふたり手をとりあって、まわりのひとたちの力も借りて、問題を、とても小さな姿にするまで、追い込みまくってくれたから――」
「だから、こんなに頼りない姿で器の、自分にも――
役目を果たす――ものべのを救う力になることが、できたわけッス」
「ものべのを救ったってことはもちろん、夏葉ちゃんも回復してしあわせにすごしてるってことすし、それに――」
;超小声の独り言(聞き取れなくてもOKで)
「それに……夢の中の自分が、さらに眠ってみた夢の中では……自分も――えへへっ、自分の恋を。はじめての恋を、叶えちゃったッスし」
;戻って
「え? うふふっ。なぁんにもいってないッスよ。
まぁともかくも、そんな頼りない自分がだけど、
ものべの史上でも最大の危機をまぬがれるための力に、なんとかなれた、っていう夢の中で――」
「有島ありすちゃんとキミはね? 自分に名前を――
“ご開祖ちゃん”っていう名前を、自分に。くれたんスよ」
「……星辰ひめみや、っていうのは、名前じゃないっス。
符号、役割――
人間でいったら、そっすね――清少納言とか、菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ)とかとまぁ、似たような感じっす」
「清原の家――清の少納言職についた娘だから、清少納言。
菅原孝標の娘だから、そのまま菅原孝標女」
「それは、個人の名前じゃないっす。
家との、役割との関係性を示しただけの、単なるつまらない記号ッス」
「その役割・立場の中で傑出した才能を示したから――
清少納言も、菅原孝標女も、逆に記号に、個人の名前とおんなじ意味を付与させたッスけど――自分は、そうした活躍の機会には、一度もめぐまれていなかったッス」
「星辰大王にたくさんいる娘の中の、ごくごく平凡な一人。
名もあたえられず、婿もとらされず、期待もされず――
星辰大王にとってはさほど重要でもない地域の安全装置としての役割だけを与えられた、星辰大王の家の姫君――姫宮」
「誰知らぬうちに危機を救い、
その手柄を依り代となってくれたそのときどきのひめみやに譲り――
だから誰にも感謝されずに、再び根の国にもどってまどろむ」
「……それが自分。星辰ひめみや――だったッス」
「そう。過去形ッス。過去形に、キミと有島ありすちゃんがしてくれたんスよ。
夢の中で”ご開祖ちゃん”って名前をくれた、そのことで」
「名を与えられて、名を持って。名前という器を貰って。
自分は、自分になれたッス。
”星辰ひめみや”という役割ではすくいきれなかった人の、あやかしの、土地の思いを。
“ご開祖ちゃんのために”という器で、すくいあつめることができるようになったッス」
「それがどれほどあたたかく強い力だったか――
の世界の星辰ひめみやにすぎなかった自分にも、
はっきりわかるほどだったッス。
その力をもて、”ご開祖ちゃん”は、ものべのを危機から救い――同時にこっそり、自分の願いもうまいこと叶えてみせたっす」
「……憧れたッスね。自分自身でみている夢に。
有島ありすちゃんとキミに名前を与えてもらった”ご開祖ちゃん”に――自分は、すごく」
「憧れっていうか、ほとんど嫉妬したッスよ。
生きてもおらず死んでもいない、そんな干からびた状態にあってなお、いきいきと」
「だけど夢の外の自分は、やっぱり干からびきったままの――必要とされない自分のままで……
それはだけれど――ありえないほど幸せで、恵まれたことともわかってたっす」
「安全装置の出番だなんて、ずっと無いのが一番ス。
そして自分たちがくらす茂伸は――
安全装置の出番を必要とすることないし、
キミたちが、キミたち自身の手と力とで安定させた――
最高に素敵なものべのッスから」
「人とあやかしと半妖が手をとりあってくらしていけるものべのに――安全装置、星辰ひめみやが機能する機会だなんて……決して、発生しちゃいけないんスよ」
「だから、自分には何の役割もなく。
当然に、思い馳せられることさえもなく。
“ご開祖ちゃん”になれるはずなんて永遠にない……
自分はそう、幸せにあきらめていたんスよ」
「けど――七面頬が――キミを最初の氏子とみとめて、キミと夏葉ちゃんとものべのを救い、大きな大きな功徳を積んで修行の年限を100年単位でドカンと縮めて土地神となったなな公が――自分のさだめを、大きく変えてくれたんス」
「ものべのの土地神となったから――なんすかね?
なな公も、おんなじ夢をみたみたいなんす。
自分がみたのとおんなじ夢を――お人形みたいなあの蛭妖(ひるよう)も」
「夢を見て――一体何をおもったのッスかね?
”ご開祖ちゃん”ってなな公――七面頬(ななつらお)は、
自分のことを、呼び始めたんス」」
「なな公が”ご開祖ちゃん”っていう名を一番最初につたえる相手は――もちろん、キミっした。
大切な宝石を見せるみたいに、そうっとその名をなな公がキミにつたえた――
その瞬間に、自分は、まどろみから覚まされたッス」
「そうしてキミが、有島ありすちゃんに、夏葉ちゃんに、すみちゃんに、えみちゃんに。当代ひめみややあやかしたちにまでもに伝えて、そこからどんどん広がって――
あっという間に名は意味を持ち、大きな力をもったッス」
「そうして自分は単なる役割であることから解き放たれたッス。
だから自分は、解き放たれたその意味をひたすら、考えたッス」
「考えて考えて考えて――なにせ自分は天才ッスから、ある日ぽぉんと理解したッス。
『この国のあやかしたちを滅ぼさぬよう、自分は力を授けられた』と」
「ずっと話しているとおり、役割・記号は、想いのうつわになれないんスよ。“すみちゃん”をキミが想えば、その想いをすみちゃんは受け止めて、自分の力に換えられるスけど――”あかしゃぐま”への思いなら、それは誰にも受け止められず、散って消えゆくだけになるッス」
「だから――そう。ふふふっ、キミはやっぱり賢いっすねぇ」
「……滅びかかっているあやかしたち。
名を持たぬ、あるいはせっかくもっている名を、もう誰も想いも呼びもしなくなってしまったあやかしたち――」
「そのあやかしたちを、ひととあやかしと半妖とがともにくらしているこのものべのに集め。名を呼び想ってくれる人との縁が結ばれるなら――滅びの淵から、きっとあやかしたちは自らの力で抜け出せる」
「……そうすることが、その手助けをすることが。
名を与えてもらい、力をもらったこの自分――”ご開祖ちゃん”が為すべき務めと……恩返しだと、そういう風に、自分は理解したのッス」
「キミのおかげでて……ふふっ、
まだ”なんとか”っていう段階スけど――
計画はいい方向に、転がりはじめてきているッス」
「洗濯狐のお紺。
送り雀のひよ。
コロポックルのパロポロ。
雪御嬢のゆき。
三吉鬼のサキ――」
「どのあやかしも、契りとも呼べる縁を得。
その縁ごと、広く、人々に物語られ、思われ、呼ばわれるよう――少しずつなってきているッス」
「ものべのにもとより住まうあやかしたちもまた、同様に。
ぜぇんぶキミのおかげっす。
キミが、がんばってくれたおかげッス」
「だから自分は、キミにご褒美をあげたいッス。
つきものを落としたキミの隙間に――
自分のちからを、自分の恵みを――
流して、満たしたいと思うッス」
「それは幸いを呼べもせず。
それは災いを祓えもせす。
病を癒すこともなく。
縁を結ぶこともない」
「自分のちからは、自分のめぐみは、
ただ純粋な――純粋な生命のちからッス。
キミが本来のびゆく方に、キミが一番なりたい自分に、
まっすぐ育つことを助ける……ただ、それだけの力ッス」
「ただそれだけの力ッスけど――
自分はキミに、どうか、受け取って欲しいっす。
どう……ッスか?」
「……あ。うふふっ。うれしいッス。
なら、流し込みを――あ……ぁ……」
;照れて独り言
「唇から、はありえないすよね。
背負いすぎかもですっけど――自分、人間目線だとたぶん、なかなかのレベルの美少女ッスし?
キミのご家庭を一発でぶっこわしかねないッス」
「かといって、鼻からは――あまりに美しく無いっすし、
眼玉の淵から……は、ちょとマニアックに過ぎるす――
から……うん」
;戻って
「ちから。耳から流し込むッス。
右と左と、両方から」
「その……自分、ちょっと、ちょっとだけキミの体の上に失礼するッスね? ん……」
;SE 布団から出て、体の上にまたがる
;1/前 密着
「うわ。これ、照れくさいッスね。
それになんだか、誤解招きそうな気もするッス。
丁寧に、だけど手早く済ませたほうが良さそうっすね、うん」
;1/前→;3/右
「じゃ、いくッスよ? まずは右耳――」
;3/右 接近囁き
「くすぐったくても、ちょこっと我慢、してほしいッス」
;ふー、息が続くかぎりながくでお願いします。
「(ちゅっ)――(ふーーーーーーーーーーーーーー)」
;3/右→;1/前
「うふふふっ、右のお耳はこれでよしッス」
;1/前→;7/左
「それじゃあ今度は、ひだりのお耳~」
;7/左 接近囁き
「これでぜぇんぶおしまいッスから、もうちょっとだけ我慢ッス」
「(ちゅっ)――(ふーーーーーーーーーーーーーー)」
;SE 体もとの位置に戻して布団にもぐる
;7/左→;1/前→;3/右
「はぁい。これでぜぇんぶおしまいっす……
(疲労と安堵の長い息)」
;以降、完全にウィスパー
;3/右
「……どうすか? 隙間、つきものの落ちたところが、
自分のちからでみたされてるの、感じるッスか?」
「――(微笑の息)――無理することないっすよ。
自分のちからは、ただただ生きていく力。
生き物だったら誰もがもってる、そんなありふれたものにすぎないっすから」
「けど……ね? <SE 頭撫でる>
これだけは、どうか覚えていて欲しいっす。
ううん、忘れちゃっても全然いいから、必要なとき、そのときだけは、きっと思い出してほしいっす」
「キミの中には、カミである自分があたえた”生きるちから”が。
さいごの最後の最後の保険になるために、しっかり息づいていることを」
「本当に苦しくてつらいとき。どうしようもないと思ったときにも。
自分が必ず。キミの体の、こころのうちから、キミを支えいるってことを」
「それがキミへの恩返しっすから……
ふふふっ、矛盾ッスけどね?
自分は、願わずにはいられないっす」
「自分の与えたちからが決して、キミを支えることがないよう――
そんなピンチに陥ることなく、ずっとずうっと、キミと家族と、キミの大事な存在たちが、残らずしあわせであるように、って」
「(満ち足りた呼吸。何度か)
――ぁ――ふぁ――あ――(大あくび)」
「ああ、ごめん。力をキミにながしたせいかな。
なんだか……眠くてしかたないスよ」
「あ……うふふっ、キミもおんなじならうれしいッス。
それじゃあ、静かに、お口を閉じて、一緒にこのままねむっちゃおうッス」
「おやすみなさい。がんばりやさん。
しばらくしたら――ごめんね? きっと、またがんばってもらうけど――」
「いまこのときは、ここから先のしばらくは、どうぞ、ゆったいりとやすめるように――」
;3/右 (ほっぺにキス)
「(ちゅっ)」
;3/右 接近囁き
「最後のおまけに――いまのは、安眠の祝福ッスから。ふふっ」
「それじゃあ、ほんとにおやすみなさい」
「どうかしずかで、やさしいねむりを――」
;環境音 F.O.
;3/右 一分間ほど。声とかニュアンスも歓迎です
「(眠ろうとしてる息)」
;一分ほど
「(入眠の息)」