Track 6

お不動大滝

;1/前(マイクに背中向き) 【かかあ】「ふわ……うわ――わああああああああああ!!!!!」 ;SE 環境音 不動大滝 ;1/前 【かかあ】「これ、滝!!! ね、絵に描いたみたいな滝!!! ってか滝壺のすぐ近くまでいけちゃうでしょ! この大岩さえ乗り越えちゃったら!」 【かかあ】「いや……けど……ふわ――(一分ほど、圧倒されて見惚れる呼吸)――ふああ~~~」 【かかあ】「期待のハードル上げ過ぎたかって思ってたけど、余裕でその上飛び越えられちゃたわ、これ。 滝って――こんなに綺麗で、おっきくて……」 【かかあ】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――あたしが持ってるライブラリじゃ、言い表す言葉を生成できないわ。……来て、見て、それではじめて――きっと伝わるものよね、『コレ』」 【かかあ】「ああ、けど――ほんと、水しぶきだけでも想像以上ね。滝壺まで100メートル以上離れてるのにウエアがどんどんしっとりしてくの感じるんだもの。 これ、着替えたの足元だけでよかったわ。全部制服に着替えちゃってたら、完全にブラウス透けてるレベルよ」 【かかあ】「(呼吸音)*4――ああ、安らぐ。気持ちいい。落ち着く――(呼吸音)*8。ね、だんな。この岩ちょうどいい感じだし、座ろうよ、少しの間」 ;SE 岩に座る ;3/右 【かかあ】「ふうっ――(呼吸音)(呼吸音)――っていうか、座るとちょっと、疲れたなーって感じもしちゃう。 不動尊からここに来るまで、結構たいへんだったもんねー」 【かかあ】「普通に『川を渡れ』ってルート案内の目印出てるし、実際川を渡る他には道がなくなって行き止まりだし――あれ、普通の人間はみんな出来るの? あたしはもう、旦那に先に渡ってもらわなかったら……どの岩がグラグラしないか確かめてもらわなかったら、足滑らせて川に落ちちゃってた、確実に」 【かかあ】「この体――整備体のセンサ性能だと、流れる水の下の岩が、どんな状態になってるかまで確認するの無理だもん。(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――勘と経験。それがみんなに備わってるなら――やっぱり人間って優秀なのね。乗務以外のとこだとほんと、つくづく感じる」 【かかあ】「ああ! あと長いの! にょろにょろ! ヘではじまってビで終わる、二文字の名前の爬虫類! あれにニ回もでっくわしたし!! ワイドショーで遭難のニュースとかあると、『山の怖さ』とかいわれてるけど――あたし全然ピンと来てなかったんだけど、『ああこれかー!』って、はじめて実感しちゃったわよ」 【かかあ】「早いのね、あのにょろにょろ、足なんてないくせに、スルスルスルーって! 向こうから逃げてってくれたからよかったけどさ、向かってこられてたら、もうあたしブレーカー落としてやりすごすしかないなって、内心覚悟決めてたから」 【かかあ】「けど……えへへ~。旦那落ち着いててかっこよかった。刺激しなければ平気って――旦那が教えてくれたから、あたし悲鳴あげて逃げ出さないですんだ」 【かかあ】「ああ、あと道間違えちゃったとき! あのときも凄く助かっちゃった! 矢印どおりにおっかけてたのに、『首定忠次の岩屋』に行き着いちゃったとき」 【かかあ】「まぁ首定忠次っていったら群真・赤木を語るには絶対外せない大立者だし。 その忠次が赤木を去る前に隠れていた洞窟がこんなところにあるんだ! っていうの実際見れたのは、超ラッキーで大興奮だったけど!」 【かかあ】「っていうかこないだ乗車してくださった観光客さん、逢阪から来て下さったって方。あたし、観光の見所のこと聞かれたから赤木南面千本桜の紹介したのよ。 『"赤木の山も今宵限りか”って首定忠次が見得を切ったことでも有名な赤木山の麓の~みたいな感じに」 【かかあ】「そしたらね? 『首定忠次て誰?』って聞かれちゃって! 子供とかじゃないのよ? 旦那より年上の感じの人だったのに! あたしもうびっくりしちゃって、けど、その人全然非常識な感じとかじゃなかったのよ。 赤木観光のこともちゃんと下調べした上で、『地元ならではのおすすめは?』って感じだったし」 【かかあ】「だから一周まわって、自分の常識の方がおかしいの? みたいな感じになっちゃって。 そういえば、地元以外で首定忠次の名前聞くことほとんどないわよね、みたいに思っちゃって」 【かかあ】「でもさ、調べるのもそれはそれで怖いわけよ。赤木のスター、首定忠次が関東ローカル――どころか、最悪群真ローカルとかだったら……そんなの、あんまり寂しいじゃない」 【かかあ】「けどまぁ、一人で抱え込んでおくには大きすぎる問題だから。旦那にだけはどうしても話しておきたくて――(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――あ、あ! そうよね! 『蓄音レヱル』、あれ、全国紙の新聞に掲載されるんだもんね」 【かかあ】「なら、逆転の発想よね。 『蓄音レヱル』で、“首定忠次の岩屋”を紹介してもらえたら、忠次を全国にあらためて紹介できちゃう。うん」 【かかあ】「そうなったら、常州電鉄の定期外客も増加して、一石二鳥すぎるわね。 いいね、旦那、その方向にもっていけるようがんばろう! 問題は、忠次の岩屋……あの石造りの洞窟の中でいい音が聞こえるかどうか――だけれど……」 【かかあ】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――ああ、そうね。今日気にしてみてあたしはじめて知ったけど、どっちの方向を向いてるか、立っているか、しゃがんでいるのか――そんなことでも、音の聞こえ方ってものすごく大きくかわってくるものね」 【かかあ】「だからきっと頑張って音探ししたら、忠次の岩屋での素敵な音の楽しみ方、見つけられるし紹介できるわね。 うふふっ、楽しみ! もどり道で絶対、もう一回よっていきましょうね!」 【かかあ】「っと、その前に……」 ;SE 立ち上がり、岩の上の足音数歩 ;9/前遠(マイクに背中) 【かかあ】「あたしやっぱり、滝壺のすぐ近くまでいってみたい。 きっとものすごい大迫力で、絶対服とか、ビショビショに濡れちゃうと思うけど。 それでもやっぱり――ここまで来て、滝壺の音を確かめないで帰るんじゃ、ちゃんとした取材できてない、ってことになっちゃう気もするし――(呼吸音)(呼吸音)」 ;9/前遠 (マイクの方振り返り) 【かかあ】「あ! うふふっ! じゃ、旦那も一緒に行こう! もしもあんまりしぶきが酷いようだったら、あたしのこと、ね? 旦那の背中にかくれさせてね!」 【かかあ】「じゃ、行こ! 岩場、多分濡れててめちゃくちゃ滑りやすいだろうから、そこだけお互い、気をつけて!」 ;SE 岩場、足音一歩 ;環境音 Vol UP→環境音、滝壺直下にクロスフェード ;環境音のボリュームに負けて聞き取れない感じに編集いただけましたら ;3/右 ;(わぁすごい、あたしこんなのはじめて) 【かかあ】「――ぁ――ごいっ! れ――たし――なの――めて!!」 【かかあ】「(ずぶ濡れになるのも気にせず、滝からの飛沫を全身で浴び、楽しみつつも少し息しづらい呼吸音、一分ほど)――ぷあっ!」 【かかあ】「! んぁ! ~~~~って、けい――る? ――し――ぁ、――えてな――か」 ;3/右 (耳元接近、囁きではない) 【かかあ】「ここじゃ会話もできないから、少し、滝壺から離れましょ」 ;環境音 滝壺 Vol↓ →クロスフェード 不動大滝 ;足音 F.I 数歩でストップ ;1/前 【かかあ】「あはは! 冷たかったしうるさかったけど楽しかったー! 手を思い切り伸ばしたら触れそうくらい近くまで寄れたわね。 あたし、こんなの始めてすぎて感動しちゃった!!!」 【かかあ】「(うっとりしたため息)すごいのね、滝って。 水が落ちてくるんじゃなくってこれ、川がまるごと落ちてくるのね。 切り立った岩のてっぺんから、ドドドドド――って。 写真や動画でみるのと実際近くまでいくのだと大違いだわ。すごい、ここも絶体来てほしい!!!」 【かかあ】「けど、滝壺近くはほんと、音を紹介どころの話じゃなくなっちゃっうわね。 滝が降ってるのは正面だけの筈なのに、まわりの岩壁のせいかしら。 360度全部が轟音につつまれてるみたいな感じで。すぐとなりにいる旦那の声さえ聞こえなくって――て――ぁ――(くしゃみ!)」 【かかあ】「あらやだ、自覚よりも体ひえちゃってるのね。体温調整アラート……くしゃみでちゃった。 ってか――ウウッ――そう思ったら急に寒くなってきちゃった。濡れっちゃったのもあるけれど、気温もこれ、下がってきてるわよね」 【かかあ】「(考え込む呼吸音)*3――うん、あたしともかく、旦那が風邪ひいちゃったら困るし。赤木山、これ以上登ってくのは中止にしましょう。お不動大滝までの道中だけで、蓄音レヱルで紹介するには十分なだけ、いい音するとこ集められたかなーって思うし」 【かかあ】「それにあとニ箇所は、いい音するとこ、帰りの道中にも訪ねられるんだし。 (呼吸音)(呼吸音)――ふふっ、一箇所はもちろん、首定忠次の岩屋。で」 ;3/右→;3/右(接近囁き) 【かかあ】「もう一箇所はぁ――お、ん、せ、ん」 ;3/右 【かかあ】「滝澤温泉、赤木温泉。どっちにしても名所だし、帰り道にすぐよれるし、冷えた体もあっためられるし。 そりゃあもちろん、よっていくしかないわよね!」 ;環境音 F.O