プロローグ。しろがねの自己紹介
;プロローグタイトルコール
;1/前
【しろがね】「蓄音(ちくおん)レヱル。關門鉄道(かんもんてつどう)
EF10 23(いいえふとお、にじゅうさんごうき)専用レイルロオド しろがね。
しろがねの自己紹介」
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;環境音 松山-小倉フェリー1~3のどれか
;二段ベッドの上段にしろがねが寝転がり、下段にリスナーが寝転がっています。
;9/前遠 (マイクに背中向き)
;出港をまって、わくわくベッドの上で待機してる
【しろがね】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)」
【しろがね】「あれ? ……離岸、もうしちゃった?」
【しろがね】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――窓の外の景色、うごいてる。離岸したんですね。
揺れも音も全然なかった……気が付かなかった」
【しろがね】「しろがね……こんなに大きなフェリーが出港するときって――
ぼーーーーっ、って。汽笛、鳴らすものかと思ってました」
【しろがね】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)……ああ、そうですね。
夜行フェリー……夜中の、それも待山観光港(まつやまかんこうこう)からの出港」
【しろがね】「汽笛を鳴らしたら、港近くで眠ってるひとたちを起こしてしまうかもしれない……
しろがね、少しも気がつきませんでした。
……こういうところで気が利かないの、なおしたいです」
【しろがね】「静かな出港……(少し考え込む呼吸)。
理由は納得しましたけれど――しろがねがレイルロオドだからでしょうか、
汽笛がないと、出発したって実感が湧いてこないです」
【しろがね】「(一分ほど、フェリーの走行音を聞く)」
;EF10 23の"ごうき"はタイトルでだけ呼んで、以降特記ない時は"にじゅうさん"のみでお願いします
【しろがね】「静かな分、ディーゼルエンジンの音はとても良く聞こえますね。
……昔はまわりにたくさんあった――
でも、しろがねの電気機関車――EF10 23(いいえふとお にじゅうさん)が關門海峡トンネル専用機になってからは、ほとんど聞くこともなくなった音」
【しろがね】「(うっとりとした吐息)――どこかなつかしくて安心します。こんなにうるさい音なのに。
少し不思議で――(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――あ」
【しろがね】「マスターも同じなら嬉しいです。
……ね、マスター。まだ寝ないなら、しろがね、お話したいです」
【しろがね】「(呼吸音)(呼吸音)――はい。それじゃあ、おりていきます。
ん――。ぅ……はしご、少し怖い……」
;SE しろがねが二段ベッドのはしごをおりていく音
;9/前遠→;2/右前→;3/右
【しろがね】「(呼吸音)――(呼吸音)――(呼吸音)」
;SE しろがね、ベッドに座る
;3/右
【しろがね】「(安堵の吐息)――マスター、あの。寝る時やっぱり寝台の上と下、変わってもらっていいですか?
しろがね、はじめてで物珍しくて。マスターに聞かれたときによく考えないで、『上の段』ってこたえちゃいましたけど――
はしご、上り下りしてみたら予想してたより怖くって」
【しろがね】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――ああ、よかった。ありがとうございます。
(呼吸音)(呼吸音)――あ、ううん。話したかったのはそのことじゃないんです」
【しろがね】「(呼吸音)(呼吸音)――はい。そうです。『蓄音レヱル』のこと。
いよかん鉄道のいよさん、待山(まつやま)観光に誘ってくれただけじゃなく、
こんな素敵な話も紹介してくれて――優しいですよね。本当に」
【しろがね】「けど、いい話だからこそ、しろがね、不安で……
『音で沿線の魅力を紹介してもらう企画ぞなもし』って――
いよさん、新聞記者さんにしろがねたちのこと推薦してくれたけど」
【しろがね】「新聞記者さんもノリノリで、すぐに『ぜひ』っていってくれたけど――
でも……しろがねとマスターが走ってるのは、關門鉄道關門海峡線(かんもんてつどうかんもんかいきょうせん)……」
【しろがね】「門次港(もじこう)から下關(しものせき)までをつなぐトンネル――
その中をひたすら、關門海峡をわたる客車や貨車を牽引して、くぐらせてあげるだけの専用線だから」
【しろがね】「本当にトンネルしかない路線なのに沿線の音風景だとか――
(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)……あ……そうか。うん」
【しろがね】「門次港の町も下關の町も、沿線であるには違いないから――
そのふたつの町の音風景と……あとは――(呼吸音)(呼吸音)――なるほどです。
それなら確かに、音で関門海峡線の沿線を紹介できますね」
【しろがね】「全国紙で紹介してもらえれば、關門鉄道の存在意義を世の中に広くアピールすることに繋がりますし……
それはきっと、ほんの少しは将来的な鉄道復権のお役にも――(呼吸音)――うん」
【しろがね】「……よかったです。眠かったら悪いなって心配でしたけど、思い切ってマスターに相談して。
しろがねおかげで、『何をしたらいいのかな』って、もやもやぼんやりしてたのが、少し晴れてきたみたいな気がします」
【しろがね】「これなら明日の音探しも――って、思い出しました。
記者さんに言われてた確認、今やっちゃってもいいですか?
ヘッドホンかイヤホンをつけて……っていうヤツ」
【しろがね】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――うん。
それじゃあしろがねがマスターにつけさせてもらいますね。
少しだけ、動かないでいてください」
;SE 両耳に同時に、装着のガサゴソ音
【しろがね】「ん……(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――うん」
【しろがね】「ちゃんとつけられたと思います。
それじゃあテストを――まずは、正面からの聞こえ方から」
;1/前
【しろがね】「なにを話せばいいのかな……。ええと――
『しろがねはレイルロオドです。EF10という形式の電気機関車の23号機が、しろがねの車両です。
EF10 23は、他の姉妹から引き離されて、關門海峡トンネル――本洲と九洲とを結ぶ鉄道トンネルの中を渡ろうとする客車・貨車を牽引するための専用機として、転用・改造されました』
……どうです? ちゃんと聞こえてますか?」
;1/前 “まずは”から→;3/右
【しろがね】「(呼吸音)(呼吸音)――うふふ、それならよかったです。
そうしたら次は、片耳ずつのチェックをしますね。まずは、右耳――」
;3/右
【しろがね】「聞こえてますか、どうですか」
;7/左(耳打ち→囁き)
【しろがね】「じゃあ今度は左耳。
……囁き声でも、聞き取れますか」
;7/左 “ぐるーん”で→;1/前→;3/右
【しろがね】「最後の確認事項は、まわりこみですね。
『ぐるーーーーーーーーーーーーーーん』」
;3/右
【しろがね】「(安堵の息)――ばっちり聞こえているならよかったです。
それなら早速港についたら――明日の朝から、“蓄音レヱル”の音探し――
(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――はい、はじめちゃいましょう」
【しろがね】「うふふ、マスターとふたりでのんびり街歩きって、ちょっとひさしぶりですよね。
楽しみです」
【しろがね】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――はい。そうですね。
明日に備えて、早く寝たほうが――あ」
;SE マスターが上段ベッドにあがっていくはしご音
;5/後
【しろがね】「ありがとう、マスター。寝台を変わってほしいっていったの、ちゃんと覚えていてくれて」
;SE しろがね、ベッドに横たわりふとんをかぶる
【しろがね】「(呼吸音)(呼吸音)――ん、しょ――(呼吸音)」
;5/後(ベッドの下段で独り言ささやくイメージ)
【しろがね】「あ……こっちのベッド。少しマスターの匂いする……安心」
;5/後(マスターにはっきり呼びかける)
【しろがね】「それじゃあマスター、おやすみなさい」
【しろがね】「(静かな呼吸 x4)」
【しろがね】「(穏やかな寝息 x4)」
;環境音 F.O.