1.ニーナとの出会い
SE :ぱああ…… ︑召喚音
きゃ~~~~~~ッ!︵4︑5秒︶
SE :どたん︑がらがらがら……
うっ︑ううう…… ここ︑は…… ︒…… ︒︵あたりを見回し︑主人公を見つける︶
ひっ!? にっ︑人間…… ?! …… でも︑ふく︑違う…… ︒
神官さまは…… ? 儀式は︑どうなって……
あ…… もしかして︑あなたが神様…… !?
︵怯え︑半泣きで︶…… ぅっ︑ぅうっ…… !!
神様…… お願いです︑村の日照りをお救いください……
ながき豊穣を祈り︑村の民を代表しわが身を捧げます……
獣の耳と尾を持つわが姿︑人ならざる浅ましき身ではありますが︑どうか︑どうか…… ︒
……
︒
…… うううっ︑やっぱりいやあ…… 死にたくないぃ……
ママ︑パパ…… !! いやあ…… っ!!
SE :ざり︑主人公が近づく足音
ひっ! いや︑来ないでください!
お願い…… いやぁっ︑近づかないで! 食べないで!
いやっ︑いやあっ…… !!
SE :衣擦れ︑シャツをかけられる音
え…… あの︑これ…… ︒シャツ…… ?
あ︑ありがとうございます…… ︒
…… あ︑あの…… ︒
…… ごめんなさい︒わたし︑生贄なのに…… 取り乱しました︒
ごめんなさい…… ︒あ︑あの︑わたし︑覚悟︑できてます︒
ほんとです︒これで︑ママとパパが救われるなら……
村のために死ぬなら︑いいんです︒だから…… ごめんなさい︒
大丈夫です︒
SE :ざり︑主人公が近づく足音
ひっ! …… だ︑大丈夫です…… っ︒
わたし︑ちゃんとお役目を…… 果たせますから……
…… っ!
平気です……
だから神様︑どうぞわたしをお食べください…… ︒
…… っ!
SE :ぐ~~~~~…… ︑おなかが鳴る
っ︑ご︑ごめんなさい!
ずっと何も食べてなかったんで―― すみません!
あの︑大丈夫です! あの︑その―― !
……
︒
SE :かちゃかちゃ︑食器が取り出される
SE :かぱ︑炊飯器が開く
…… ?
あの……
SE :とん︑ご飯をよそって差し出される
…… これは…… ?
食べ物? どうして︑わたしに…… ?
わたし︑生贄なのです…… 食べ物なんて︒
SE :ぐ~~~~~…… ︑おなかが鳴る
ごくり︒︵唾を飲み込む︶
……
︒だめです︒生贄は…… 奴隷は︑残飯以外食べてはいけないんです︒
わたしは神様に食べられるための奴隷なんです︒
だから︑ご飯なんて…… ︒…… ︒
…… ほんとに︑いいんですか? 神様…… ︒
……
︒
…… はむ…… ︵食べる︶︑もぐ︑もぐ︑もぐ…… ︵咀嚼:息芝居︶
…… !
はむ︑もぐもぐもぐ︑はむ︑はむ︑もぐもぐもぐもぐ――
︻AD: 勢いよく食べる ※長めにください︼
ごくん︑んん︑ふぅ…… ︒
︵ぽつりと︶…… おいしい…… ︒
…… あの…… ︒ありがとう︑ございます…… ︒
…… わたし︑奴隷として生きてきて…… こんなにあったかいご飯︑初めて食べました︒
……
︒え…… ︒名前︑ですか…… ? …… 名前は︑ないです︒
奴隷は︑名前なんて持ちませんから…… 番号で︑呼ばれるんです︒
わたしはいつも︑217
ニイイチナナ
号って︑呼ばれてました︒
︵ニーナと呼ばれ︶…… え? ニーナ?
わたしの︑あたらしい名前? でも︑奴隷に名前なんて…… ︒
……
︒ありがとうございます︒
…… あの︒なんでそんなに︑優しくしてくれるんですか?
神様だから?
﹁いや︑ただの人間だよ﹂
ううん︑人間じゃないです︑神様です!
だって︑わたしのご主人様もほかの人たちにも︑
こんなに優しい人︑いなかった…… ︒
﹁これくらい︑普通じゃないかな﹂
普通? これが? …… そっか︒わたし︑神様の世界に来たんですね︒
だって︑そうじゃないとこんなの︑変ですもん︒
すごいなあ…… 神様の世界︒わたし︑神様の世界に来たんだ︒
…… わたしの世界では︑亜人には︑人としての価値が認められてないんです︒
だから︑毎日檻の中で過ごして︑お仕事の時だけ︑外に出るんです︒
﹁仕事って?﹂
…… お仕事は︑重たいものを運んだり︑
みんなで危ないところにある宝石を拾いに行ったり…… とか︑でしょうか︒
わたしは身体が小さいので︑狭いところで働けるお仕事が多かったです︒
﹁そうなんだ︒でもここにいる間は︑働かなくていいよ﹂
え?
ここでは︑お仕事︑しなくていいんですか?
…… え?
ずっと︑いてもいいんですか? ここに?
でも︑それじゃ︑わたし…… ︒
…… ありがとうございます︒
あの…… ︒に︑ニーナ︑その…… これから︑神様のお役に立ちます︒
だから…… ︒…… いえ︑なんでもありません︒ごめんなさい…… ︒