日常「おやすみ前にいつもの雑談」
◆1「身のない会話」
深夜の一時過ぎ
「……今更だけど、二人じゃちょっと狭いよね」
仰向けで二人とも寝ればな。
「わたしが横向きに寝るタイプでよかったねー。
あっ、そういえばこの前テレビでさ、なんだっけ……
……あぁ、寝方には四種類あるって言っててね。
『仰向けタイプ』と『横向きタイプ』と『うつ伏せタ
イプ』と………えぇっと……あと一つ、なんだっけ。
まいっか。それでね、仰向けタイプはね、『自分に
自信があるタイプ』で……くす、ふふっ……
『子供に多く見られるタイプ』なんだって。
ふふふ、子供だ。ここに子供がいるぞ」
うるさいなあ。
「あ、強気だ。これが『自分に自信があるタイプ』の
表れってことですね、わかります」
じゃあ横向きタイプはなんだよ。
「え? あー、『横向きタイプ』はね…………
あーっと、なんだっけ? ありゃ、忘れちゃった。
『仰向けタイプ』が子供向けっていうのを見た瞬間、
『あっ、こいつのことだ!』って思ってすぐ憶えちゃっ
たんだけど、自分のことはなんか関心なかったなー。
っていうか、そのテレビでも仰向けのことしかいじら
なかったしさ。しょうがないんです」
「んん、ふぅ、ん……
いい羽毛布団使ってるよねー……。わたしの、こんな
に軽くないもん。
でも逆になんか不安なんだよね。ふんわり過ぎて、
包み込まれる感じがないっていうか。
やっぱ、わたしは日本式の綿の布団が合ってるのか
も」
「……まあ、嫌いじゃないけど?」
どっちやねん。
「まー、どっちでもいいってことよ。
ん、っ……ふぅぁ~、ちょっと今日は冷えるね……。
んん……」
勝手に腕を抱いてくる
「ん……、あ……。勝手に腕抱いちゃったけど、……嫌
じゃ……。くす、ないか。そっか。
じゃあ遠慮なしだ。んん~~……」
「あ、そうだ。次の土曜……か、日曜にさ、どっかでか
けない? 暇だったらでいいんだけど」
なにか買いたいものでもあるのか?
「うーん、そりゃ欲しいものはあるよ? でもそこは
まぁ、お財布と相談ですよ。
そろそろーっとコートは欲しいなーと思ってはいます
けど? なくても困んないし……まあそうじゃなく
て。ただどっかでかけないかなーってさ」
まあ、予定はないし。
「お、じゃあ予定確保ー。
くす、どこに行くのかはそのとき決めればよくない?
適当にぶらぶらするのでもいいし。
行きたいとこがあるならそこ行ってもいいし」
「わたしはどこでもいいよー。予定が空いてたから、
何かで埋めたいだけだし。
暇人はつれーですよ、ホント。家でぼーっとしてても
ね、することがね……」
「……勉強をするほどわたしは熱心じゃありません。
ナマケモノですから。
……ナマケモノって地上に下りたら高確率で肉食動物
の餌食になるんだってー。
そりゃあんだけノロノロ歩いてちゃ当然だ。
その代わり、繁殖力が強いんだって。
怠け者のくせにやることやってるんだねー……そこは
野性的なんだ……」
「あと、面白いことに泳ぎの名人らしいよ。長い手足を
ふよふよさせて川を横断するんだって……。
すごいよねー……わたしは泳げすらしないのに」
「プールは絶対に浮輪持参ですよ?
……そりゃ足は付くけど、泳げないんだから水の中に
入ってもさ、楽しめないっていうか。
水の上にぷかぷか浮くのは楽しいし」
「海行ったら、わたしは砂場要員だなあ。
入るとしても足首まで、うん。
だって泳げないし……仕方ないじゃんかさ」
泳ぎの練習する?
「えー、やだよー。無理してまで泳げるようになりたい
とか思わないもん。
わたしは別に、カナヅチであることを不幸だなんて思
ってませんよーだ。
浮輪でぷかぷか浮くだけで楽しいじゃん。泳げる人間
にはその良さがわからないんだ、きっと」
「日本が沈没するわけでもあるまいし。
あー、内陸に就職しよー。
水とは無縁な土地に住もー。
そうすれば海に誘われることはなくなるし。
やったぜ」
川は?
「あ、川……。
まあ、川なら別に水着にならないでも許されるし。
バーベキュー要員で勘弁してくだせー旦那ぁ。美味し
く作りますから、なにとぞ、なにとぞ水にだけは」
どんだけ水が苦手なんだよ……。
「ふ……わたしに幸せをくれるのはお風呂だけ。
お湯だけは水属性でも許す。
あいつだけは絶対に裏切らないから」
「お風呂…………あー、温泉浸かりたい。
温泉……どっか近くにないかな……」
銭湯なら近くにあったぞ。
「銭湯……?
うーん…………まあ、この際、銭湯でも許す。
よーし、今度は銭湯にいこー。おー」
「……てことで、おやすみー」