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死神少女に褒められながら看取られ

お~やおや~? これはもう助からないですかねー? じゃーん!!こんにちは、私は、オルといいます。 気軽にオルちゃーん、って呼んでくれていいですよー? なーんと!貴方……もう死んじゃうんです! あぁーわかりますよー? いきなり言われても信じられないですよねー。 でもですねー、これは、本当のことなんですよー。 貴方には、まだまだやりたかったこと、とかあるかもしれないですけど、 貴方の人生はね、ここで終わりなんですよー? だから、私が、来たんです! 私は、「断ち切り人<たちきりびと>」。 貴方が死ぬところを見届けて、 一番最後に貴方の魂と肉体を繋いでる「命の糸」を断ち切るために参りました! まぁ「案内人」とかじゃありませんから、 その後あの世へ連れて行ったり、道案内、したりっていうのは、やってないんですけどね? 私が、「命の糸」を切る、ことで貴方は完全に、死に至るのです! それが、私のお役目なんですよー! そうですよねー、死ぬ、って言われても怖いですよねー。 まるで私が死神みたいですしね、はははっ。お気持ち、お察しします。 ですが、死ぬことはほんとは怖いものではないのです。 なので、ご安心ください。 きっと貴方も、最後にはわかるはずですよー! それにですね! ほら、基本的には人って、「死ぬ」、っていうの初めてじゃないですか。 貴方がうまく死ねるようにね、慣れてる私が、ちゃーんと! 付き添いますので! ふっふっふ。これ、杖に見えるかもしれませんが、実は切れ味ばっちり! な鎌でしてー。 あ、別にこれで貴方の体をザクーッと、とかはやらないですから! 切るのはあくまで「命の糸」ですからね? それでですねー、完全に死ぬにためにはいくつか段階がありまして、 この鎌でさっくり、切ってハイ終わり、ってわけじゃあないんです。 ふふ、大丈夫ですよー? 初めて死ぬわけですけど、怖いことは何もありません。 それにね、私の声は魂になった貴方にも届く。 だから私が断ち切るその瞬間まで……私の声だけは聞こえ続けます。 それまで私が傍で応援してサポート、いたしますので! まあまあ、せっかく人生で一度きりの体験じゃないですか? だから、死ぬってこと……隅々まで二人で味わおうじゃないですか! それではそれでは。 まず、お体はどんな感じですかー? ほうほう、息がちょっと苦しそうですね。 これからだんだん呼吸が止まっていくのでー 息がうまくできないのは、きちんと死んでっている、証拠ですよー。 うんうん、いい滑り出し、ですねぇ~。 それに声もうまく出せないみたいですねぇ。 そうそう。死んで行くってそんな風に、少しずつ、普通ならできることができなくなってくんですよ。 だって肉体の機能がとまっていくわけですから。 でもね、それでいいんですよー。 そうして死に近づいて行ってるってことなんですから! 感覚はどうでしょう? おや、少し寒そうですね。 ああ!血がめぐってないんですねぇ。 いい感じですよー。そうなんですよねー死ぬときって寒くなっちゃうんですよー。 大丈夫ですよー。どんなに寒くなっても、私はここにいますからあ。 あれ? まだ苦しい感じが残ってます? ふーむ……うん、どうぞご安心ください。 だんだんぼーっとしてきてるでしょう? そしたら痛みも苦しみもね、どんどん感じなくなって、 周りと自分の境目が、わからなくなって、 何を感じていたのか、わからなくなっていきます。 ほら……もう痛みも苦しみも消えていく。 どうです? 楽になりましたか? よしよし、コツをつかんだみたいですね。 初めて! なのにすごいですよー。 その感覚、大事! なので忘れないでくださいね。 それじゃ、このペースで死んでいきましょうか! 次はいかがでしょう? あー、目が虚ろになってきましたねぇ。 見えなくなってきてますか?真っ暗に感じますか? もう私のこと、見えないです? 体ももう、自由に動けかせないですもんね。 よくあるのがですね、この辺りで、やっぱり暗闇、が怖いんですかねー、わりと「死」を怖がって…… 「死」から遠ざかろうとしちゃう人、多いんですよ。 でもね。 貴方には、私がいます。 だから、大丈夫、大丈夫……。 怖くありませんよ。 どんなに暗くても……たとえ私のことが見えなくても。 声が届く限り、こうして、私はそばにいます。 だから……安心して、死んでいっていいんですよー。 死ぬのは怖くない、怖くない……。 生きてるものなら当たり前、のことなんですから。 だから、死ぬ感覚を……きちんと感じていきましょっ。ねっ? ふふっ……落ちついてきましたか? ばっちり貴方のこと観てますからね、よーくわかります。貴方のこと。 死んだらどこへ行くか、不安ですよねー? でもね、心配する必要なんてありません。 死は全てのリセット…… 肉体が持っていたしがらみも、苦痛も、ぜーんぶなくなる。 むしろ、肉体っていう器から、本当の貴方が解き放たれるんです! 貴方という魂、は死ぬことで自由になるんです。 この世につなぎとめる貴方の肉体……貴方の「世界」、という楔、がなくなって ようやく、貴方は本当の貴方、になる。 それが、死ぬ、ということ。 貴方が残して行く人たちも………。 いつかはそう、なります。 それが生きるものの定めですから。 だからなーんにも、不安に、なる必要はないんです! よしよーし。いい感じになってきましたね?段々落ち着いてきたでしょう? 息もうまくできなかったはずなのに……もう気にならないですよね? ふっふっふー。それはですねー。 貴方の肉体の、生命活動が止まって、魂、がそこから離れようとしているからなんです。 だから肉体による苦しみも感じなくなってるんですねー。 でもまだ……魂と肉体を結ぶ「命の糸」はつながってます。 今、ようやく……それが見えてきたところ。 ああでも、まだ命の糸は切りませんから。 死ぬのは……まだまだこれからっ! ですよ? さあ、ほとんど魂だけの状態になって…… 今、頭の中では……生きてたころの思い出が蘇ってますね? 不思議ですよねぇ……生きてる時は嫌なことばっかり思い出してたのに。 貴方に笑いかけてくれたいろんな人たち……優しくしてくれた人……そんな映像がたくさん浮かぶ……。 あっ! これは私のサービスとか、じゃあないですよ? 貴方が忘れてただけで、貴方の人生で本当にあったこと。 貴方は生きてる時から……一人じゃなかったっていうことです。 それを今、思い出してるんですよ。 死ぬ時にようやく思い出すのは悲しい、ことではないんです。 むしろ……幸せなこと、です! 貴方が生きてたことを喜んでくれた人たちが、いるってことを忘れずに、ちゃんと死ねるんですから。 優しい記憶を思い出して…… 貴方はさっきより随分とリラックスしてきてますね。 穏やかで、安らいだ気持ちがいっぱい。 それはですね、貴方がちゃんと これからの死を受け入れようとしているからです。 ふふ、嬉しいなあ。 貴方はちゃんと死のうとしてますよっ! いやぁーすっごいですね! えらいですよ、初めて死ぬのに……もうここまで準備ができてるなんて。 じょうずじょうず。 私もね、私が選んだ貴方が……ちゃんと死んで行くところを見られて…… 嬉しい気持ちでいっぱいです。ふふん! うんうん、この調子! で続けていきましょー。 あと少しで最後ですから、あともう一踏ん張り、がんばりましょうね! 今ですね、貴方はもうだいぶ肉体から離れまして、 魂だけ、の状態になってるんですよ。 まだ肉体とつながりがありますので、意識はありますが。 私がそのつながりの紐を切ったら、貴方はようやく完全に死ぬんですよー。 どうです?まだ少し怖いですかね。 でもですねー。もう息苦しさもなくて…… むしろ、ゆったりした感じでしょ? ふわふわーって浮かんでるみたいな感じがしませんか? ええ、そうですよー? それでいいんです。 だって、死は決して怖いものじゃないんですから 何も不安がる必要はないんですもん。 それが……生きるものとして、当たり前、のことなんですから。 生きて、生きて、生きた先に死ぬ、ということ。 だから、最初はあんなに怖かった死も…… 今は貴方を、穏やかに……ゆるやかに……包んでるんです。 もう……ほとんどの感覚がなくなってますねー。 私の声しか、わかるものはないですよねー? それでいいですよー! 貴方が死ぬために……貴方を惑わすものをもう感じないってことですから。 さーてと。 それじゃあ……最後の仕上げ、といきましょうか! そう、この鎌で……貴方の魂と肉体……世界を繋いでる命の糸を…… 断ち切るんです。 そして、貴方は完全に死ぬんです。 ああ……すごいです。 今の貴方の魂は……ぴかぴかって光がゆらめいて……。 ずっと見てたいくらいに……うつくしいですよ。 見せてあげられないのが残念ですよー。 そうですね……うん、まるで、線香花火、みたいです。 パチパチ燃えて、静かに揺らめいて……でも絶対に消えない……熱量。 ちゃんと、死を、受け入れて、死んでいってくれたから、 そんなにきれいに光っているんですねぇ。 ね、貴方の魂は……自由、になったらどこへ行くんでしょうか? 私は断ち切り人だから……そのあとの魂がどうなるかは、その魂次第。 あの世を目指してもいいし……地球一周とかしてみるのもありでですよー。 でもあんまり現世に近づきすぎると…… せっかくのその花火みたいな魂が汚れちゃうから、気をつけくださいね? そんなに綺麗なんだから……丁寧に過ごしてほしいですねー。 貴方のような魂を解き放つために、紐を切ることができるなんて…… ああ、私、ほんっとーにうれしいです。 いやー、断ち切り人<たちきりびと>冥利につきますねぇ。 いよいよ、ですが……まだちょっと怖さがありますね? 初めてなことはなんだって不安ですもんねー。 しかもそれが自分の死だなんてなおさら。 でも……貴方は逃げずに死を受け入れた。 ほんとーにえらいです、すごいです。 だから……ご褒美をさしあげましょう。 ナデナデ、です! よしよし。いい子いい子。えらい子ですね。 よくここまで頑張りましたねえ。 ああ、魂に直接触れているから…… あなたの魂の輝きがよーくわかります。 それにですね……こうすると…… 貴方と、私、が同じになったみたい、ですよ。 だって、もうここは……世界から離れてるから。 ここは……なんにもないけど、だからこそ……全部同じなんです。 貴方は私で、私は貴方。 貴方にわかるのは……私の声だけ。 静かなのは……それが本来あるべき姿ですから。 もう怖くないなら……それは魂だけの存在に、戻ったからです。 肉体っていうのは…… 喜びや、楽しみも感じますが…… 同じくらい、いいえ、それ以上にたくさんの苦しみを作ってしまう、世界の器。 でもね、貴方はもう肉体から離れているから、 そんなことを感じる必要はないんです。 それが、解放…… 肉体、っていう、苦しい世界から、解き放たれるんですよー? だから何も怖くないでしょう? ふふっ。 死ぬことは、なぁんにも怖がらなくていいんです。 でもよくここまで……がんばりましたね。 私の応援なんて必要なかったでしょうか? でも…… 私は貴方が死ぬところを…… 最後まで見れて、幸せ、でした。 ああ、貴方が死ぬのが……これっきりだなんて。 今この瞬間しか……私は、貴方に会えないのに。 ……ううん、でも。 それが私、だから……。 貴方がちゃんと死ぬのを見届けるのが役目…… 死んだら、私ももう会えない。 だから、この一回きりの時間が……とってもとっても……大切……に、感じるんです。 それでは!やりましょうか。 これで……貴方は全てのしがらみがなくなって貴方は自由になる。 それじゃあ、どうぞ楽にしてください。 なあに、一瞬ですよ。 ふっふっふー。ご安心ください。 さあ……死にましょう。 ……ありがとう……貴方を断ち切ることが出来て……よかったです! ……貴方の死に様、断ち切り人<たちきりびと>オルが……確かに、見届けました。

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