プロローグ
先輩。お疲れ様です。
今日も絶好調に校則違反してますね。
…はぁ。先輩? うちの学校は、髪のカラーリングやピアスの装着は校則で禁止されています。
あと、ついでにシャツの着崩しもだらしがないのでやめてください。…これを言うの、今月で何回目ですかね。
いい加減そろそろ正してほしいところです。
…まぁ、2、3回注意して直してくれるなら、先生たちや他の風紀委員の皆さんも匙を投げたりしませんよね。
…ん? なんでお前は俺に付き纏うのかって…決まってるじゃないですか。
悪ぶってイキってる先輩を、正しい道に連れ戻してあげるためです。
ふふ、イキってるじゃないですか。先輩、不良ぶってるワリには、中途半端なんですもん。
確かに先輩は、周囲から不良って言われてますよ? けど、その割には大きな問題は起こさないじゃないですか。
言ってしまえば、たかが校則違反ですよ。風紀委員の私たちや先生たちには迷惑をかけているかもしれませんが、
実害を出しているわけではありません。
先輩って口はすこぶる悪いですけど、暴力振るったりとか喧嘩沙汰を起こしたりとかは
過去に一回もないですよね?
つまり先輩は、ワルになりきれてないってことですよ。
…むしろ、私からしてみれば、無理して不良を演じているように見えますねぇ。
まるで、弱い自分を隠そうとしているみたい…
…ふふ。なんて。冗談ですから、そんなに怯えた顔しないでくださいよ、先輩。
…もっといじめたくなっちゃうじゃないですか。
いいえ、何でもありません。
それでは、私は風紀委員の集まりがあるので、これで失礼します。
…あぁ、そうだ、先輩。
ワルぶったりして、自分を強く見せようとするのはご自由ですけど……中途半端に突っ張っていると、
いつか足元をすくわれますよ。それで取り返しのつかない事態になっても、知りませんからね――?
…それじゃあ先輩。明日までに髪の色、直しておいてくださいね? …ふふ。